個展『無彩色の痛点』とは一体?フラワーアーティスト相壁琢人さんにインタビュー
| ゲリラ展示「デラペッピン落ちてたよ」とは!?
相壁さんは個展とは別に、繁華街で『デラべっぴん落ちてたよ』というゲリラ展示もされていますよね。
相壁 ギャラリーとか美術館で展示すると花やアートに興味のある人が主に見てくれ るのですが、そうじゃない人にも半ば無理やり提示するためにゲリラ展示をやりました。道に2メートルの押し花があったら異様な風景じゃないですか。タイトルは、「道にあったら何が一番異様だろうなって」悩んだ末、「やっぱりエロ本かな?」って思ってつけました。それで、コンビニに行ってエロ本のタイトルを見てたんで すけど、いまいちしっくり来るのがなくて、そういえば「デラべっぴん」があったなっと思って。バカにしたようなタイトルなんですけど真面目につけました(笑)
30代男子にとっては響くものがあるタイトルですよね。
相壁 河原とかに落ちててカピカピになっててね(笑)。
肝心なページがめくれねえぞって。これもカルマですね(笑)。
相壁 なんでこんなエロ本の話をしているのかわからないですけど、すごく面白いなと思ったのが、デラべっぴんが発行を開始したのがちょうど僕の生まれた年で、「今までのエロ本の常識を変える」みたいなコンセプトだったらしくて。そういうのもなんかあってるなと思って(笑)。
そりゃもうタイトルにつけるしかないですよ(笑)。肝心の展示内容はどんな風だったんですか?
相壁 2016年12月にやったのは、クリスマスに渋谷や人が多い表参道の通りで作品をボンと置いて1時間放置みたいなカタチでやりました。今年2月は都内各所を回って、時間を決めずに作品を置いて、撮影して、ちょっと経ったらいなくなるみたいなカタチで。場所や時間の告知とかもあまりせず。
じゃあ、本当に通りすがった人だけが目撃したと。
相壁 そうですね。これを目的に見に来た人は誰もいないだろうなと思います。
相壁さんは作品の横に立たれてたんですか?
相壁 作品を置いたら、僕はハイエースの中で反応を見てました。
「なんだろ、なんだろ?」ってパネルを見てる人を、ハイエースの中に隠れて見ている相壁さんはちょっとエッチだなと(笑)
相壁 なんか、性格悪い感じですよね(爆笑)
みなさん、不思議がったりしてませんでしたか?
相壁 意外と誰も、大して気にしてなかったですね。
街に溶け込んだんですかね?
相壁 興味を持ってくれる人はほんと見てくれるんですけど、作品があっても気にせず歩いて行っちゃう人が多くて、それ自体も僕は見ていて面白かったです。注意して見ないとわからないものっていっぱいあるんだなとわかりましたね。
ーー都内でも色々な街でやられたじゃないですか?反応の違いとかありました?
相壁 すごくありました。一番反応が良かったのが歌舞伎町です。東京駅だと観光客は東京駅を見に来てるし、アメ横だったらみんな買い物に忙しくて、池袋はほとんど誰も見なくて(笑)、渋谷は人が多くて作品の前を通る人しか見れないみたいな、違いがすごく面白かったですね。
でも、ゲリラ展示してて怒られたりしなかったですか?
相壁 全くなかったです。僕も警察に止められるかなとか、近くのお店の人に注意されるかなとか思ったんですけど、全くそういうこともなく。
東京は意外と寛容な街ってことですかね?
相壁 そうですね。警察の方が目の前を通っても普通に通り過ぎて行くだけだったので、表現はやろうと思えば自由にできる街なんだなと思いました。ギャラリーとかではなくても発表はできるんだなと気づきましたね。
このゲリラ展示は今後も続けられますか?
相壁 また機会があったらやりたいなと思っていますが、今回のゲリラ展示は4月の個展に向けての試みだったので、次やるとしたらカタチを変えてやりたいですね。大阪でやったらどうだろう?とか、福岡だったら、海外だったら、反応が全部違うんじゃないかと思っていて。それはやってみたいと思っています。
例えば、どこかの県や市町村から「うちの街でやってよ」みたいな仕事としての依頼があるかもしれません。オファーは受け付けてますか?
相壁 もちろんです。公式サイトのコンタクトページからご連絡いただければと思います。お待ちしてます!
ライブ会場でやっても面白いと思いますし。フェスの会場とかでやってもお客さんに喜んでもらえそうですよね。
相壁 音楽のお話は積極的に受けたいなと思っています。ジャンルが明らかに違わない限り、どんなに忙しくても、オファーの予算が少なくても受けたいですね。
world’s end girlfriendの最新作『LAST WALTZ』のトレイラー映像。この押し花も相壁さんの作品
| 花にシューゲイザーを聴かせたらどうなるのか?
押し花と音楽に共通点はあると思いますか?
相壁 僕の表現活動と音楽の共通点はあまりないかなと思っています。ですが、花や植物と音の存在はわりと近いなと思っています。人の感情で淘汰されたり残っていったりしますから。花は言葉で主張をしなくて受け取り側の自由度が高いので、そういう点でも音と近いんじゃないかと。
花に音楽を聴かせたらよく育つっていうじゃないですか?僕も個人的な実験としてあれをやっているんですけど、本当に花の咲き方が変わるんですね(写真をだす)。なんとなく感覚ではわかっていて、ベートーヴェンをを聞かせたらそれはよく育つだろうなと思うんですけど。そういうのって学者さんとかが発表しているので、しっくりこないというか、腑に落ちないというか。だから僕みたいな人が音楽を聞かせたらどうなるのかなと。
シューゲイザーを聴かせたり?
相壁 そうです。(写真を見せてくれながら)こっちがシューゲイザーを聴かせた方。
やっぱ傾いてますよね。シューゲイザーだから(失礼)。
相壁 まあ、本当は音楽を聞かせると振動で葉脈が広がって栄養が行きやすいというのが結論なんですけど、例えば「花に声をかけると育つよ」みたいな、そういう感覚的にしかわかってないことを、せっかく発表できる場は沢山あるんだから、今後見せていけたら面白いと思っていますね。
これは展示やインスタレーションの一環としてやられたんですか?
相壁 まだ実験段階で自宅でやっているんですけど、これもいつかでっかい装置を作ってインスタレーション展示をやりたいなと思っています。
スポンサーを募集しちゃいましょう!でも、音楽を聴かせてない方は花すら咲いてないじゃないですか?
相壁 音楽を聴かせる以外は全く贔屓なしに、同条件でやってるんですけど……。偶然なのか、それとも本当にそうなのかはこれからも経過を見ていきたいと思います。(動画を見せてもらう)今はこんな感じでエレクトロを聞かせてます。
エレクトロを聴かせて植物を育てる実験
シューゲイザーを聴かすと傾くので、エレクトロを聴かすとどうなるのか楽しみですね。
相壁 音による違いもあるんだろうなと思います。これが音楽と花のつながりかはわからないんですけど、そういう風なアプローチや共通点をいろいろ今後提示していけたらなと思いますね。
音楽活動と押し花の表現活動自体は共通点がないけど、音楽自体と植物には共通点があるっていうのは面白いですね。
相壁 活動に共通点を見出してしまうと、結局それに縛られてしまい消費されるのが僕は怖かったりするので、アートだからアートっぽいことをしなきゃとか。今後も極力考えないようにしようと思っています。
僕は誘導尋問のつもりでこの質問をしたんですけど、逆方向のお話が聞けてすごく面白かったです。ありがとうございました!
押し花作品の制作を実際に見せていただきました。
今回は2mの巨大パネルではなく、小型のアクリル板で制作してもらいました
師匠からは「花は殺して生かす」と教わったとのこと。だから相壁さんは、家には一切花を飾らないそうです。「可愛いと思ったら切れなくなるから」
押し花教室をやったりしないのですか?という質問に「よく依頼はいただくんですが、作品ではないのでお断りしています」とのことです
押すとイメージがガラッと変わるなと思いました。最初から押すことを考えて並べているのですか?
相壁 そうです。メインに見せたいものを考えて並べていますね。押すときは、見せたい花びらの向きに沿って押すようにしています。
これは、完全に意図して並べているのでしょうか?それとも偶然性は混ざるものなのですか?
相壁 一番見せたい部分以外、シワの寄り具合だとかは偶然に頼るところが大きいですね。全部コントロールできないのも、植物を使っている意味があるのかなと思っています。自分ひとりでは出来なくて、植物を相手にしないと出来ない作品なので。
裏も良いですよね。
相壁 そうなんですよ!表を作って表をみなさんに見せるんですけど、よく「裏もいいですよね」って言われるんです。僕も裏も良いなって思うことがすごく多くて。
裏は完全に偶然ですよね?
相壁 はい、完全に偶然です。両面で見れる部分が違うというのが、アクリル板を使ってる大きな要素です。
ちなみに、売るとしたらお幾らくらいですか?
相壁 1,500円くらいです。
えっ?そんなこと言っていいんですか!?だってそれって素材費じゃないですか?花だって高いんですよね?
相壁 高いんですけども、これを例えば1万円って言っちゃうと、お金持ちにしか手に入れられないじゃないですか。そういうのがすごく嫌なので。もちろんサイズが大きくなれば、その分値段も高くなりますけど。広まるというのがまず大事だと思っています。
Pressed Flower Exhibition「無彩色の痛点」 ※会期中無休
オープニングパーティー 日程:2017年4月21日(金) 出演: |
2015年より植物が未来へ繋がる可能性を提示するため、フラワーアーティスト・フラワーディレクションを開始。 |
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