笹倉慎介、フォークアンビエントな4th 4thアルバム『Little Bug』デジタルリリース。12/21にはLP盤も
笹倉慎介が、4thアルバム『Little Bug』を本日11月16日(水)にデジタルリリースした。
今作は、アンビエントやヒップホップ、エレクトロニカなどを解釈し日本語フォークとの融合を図った音像は明らかに笹倉慎介のキャリアが新たなフェーズに入ったことを感じさせる作品。
内省的なシンガーソングライター的描写に留まらず、COVID-19の世界観から生まれた「Evolution Is the Reason(進化は理由)」や、ウクライナ侵攻を俯瞰した「go to Ukraine」など現代社会へ向けたメッセージなども綴っている。
なお、12月21日(水)にはLP盤のリリースも決まっている。新しい音楽のフレーミングまでをも示唆する意欲作が完成した。
そして、12月26日(月)には座・高円寺2にてアルバムリリース記念ライブを開催。
今作のレコーディングを行なった伊賀航(bass)、千葉広樹(bass,syn)、senoo ricky(drums)、増村和彦(per,drums)、山崎哲也(drums)、宮下広輔(pedal steel)、中村大史(pf)が参加し、こちらもLPリリースした前作『Embankment』(タワレコ)も含めたアルバム2枚分の演奏を楽曲によってメンバーを変える構成での行うとのことだ。
柴崎祐二氏によるライナーノーツも発表された(下に掲載)。
笹倉慎介「Little Bug」Trailer
笹倉慎介「Scene to Scene」Music Video
笹倉慎介「Our House」Music Video
笹倉慎介『Little Bug』
発売:2022年12月21日(水)
価格:4,400円(税込)
品番:TOYOLP1047
レーベル:TOYOKASEI
仕様:LP
*デジタル版は2022年11月16日リリース
収録曲:
1. STAR
2. Little Bug
3. Summer Coming
4. Scene to Scene
5. Stay Morning
6. Evolution Is the Reason
7. Ikisatsu
8. go to Ukraine
9. Our House
ライナーノーツ
「フォーク」とは、一般的な理解に沿っていえば、主にアコースティック・ギターを伴って歌われるアメリカの伝承歌、あるいはそれを元にした比較的シンプルな構造を持つ自作曲を指すことが多い。被抑圧者としての民衆の声を反映したものや、時事的な事柄を扱うものなど、社会的な問題意識と一体となった表現もある一方、内面的な世界を歌う「シンガー・ソングライター」のように、「個」をモチーフとして扱う場合もある。 しかし、本作『Little Bug』では、この2つの世界が非常に巧み、かつ自然な形で同居し、融合している。まず指摘できるのが、その楽曲の構造、更には音響面における「アンビエント性」と、そこへ豊かに流れ込んでいる様々なルーツ音楽的な要素だ。実は、こうした表現を実践してきたアーティストは、稀有な存在とはいえ全くいなかったというわけではない。その上で、本作の第一の魅力は、そうした音楽を直接的に参照しているというよりも、笹倉自身の音楽とそれらが持つ空気を触れ合わすように、緩やかに合流させているという点にある。 『Little Bug』における音楽性/音響上の「フォーク」と「アンビエント」の巧みな習合ぶりは、より根源的なレベルでの両者の類似性を教えてくれる。そもそもフォークとは、その成り立ちからしてすぐれて公共性の高い音楽だ。様々な人々、コミュニティの中で受け継がれ、歌い継がれてきたフォークは、はじめから特定の記名的存在に結びつく表現ではなく、ある環境の中で様々な主体の間を取り持つ空間的なメディアとして機能してきた面がある。というか、それこそがフォークという音楽のもっとも深い地層に刻まれている性質だと考えることも出来る。片やアンビエントは、先に述べた通り当然ながらそれ自体だけで自立し、排他的な形態として存在するものではない。あくまで環境の中にあり、「音楽そのもの」ではなく、環境と音楽の相互的なありよう/関係性を立ち上がらせることに特徴を持つ。そう考えると、この2つの音楽は決して距離の遠いものでないどころか、その本質を大きく共有する存在であるともいえるのだ。 本作の歌詞に触れてまず感じるのは、いわゆる「シンガー・ソングライター」の音楽によく聴かれる内面/内省的な叙述法からの離脱だ。もちろん、自ら/自らの周囲に起こる様々な出来事を巧みにすくい上げてみせる笹倉の手腕が引き続き一級品であるのは間違いない。しかし、本作で試みられている詞作は、その実これまでの作品とは異なる地平を見据えたものに感じられる。仮に「個」やその内面が描き出されようとも、まずもって賭けられているのは、その「個」があるところの環境や風景、あるいは空気をいかに瑞々しくキャプチャーし得るか、という可能性なのだ。自らの内面的心情をただ詳述するのではなく、むしろ逆の方向から、環境の中にある自らの心の動きを観察しようとする。言葉をなにかの目的をもって弄ぶのではなく、環境の中で言葉が生起し、過去へ遡行したり未来にむかってそれが変幻していく様を捉えようとするのだ。つまり、本作に漂う言葉もまた、ごく根源的なレベルにおいて「アンビエント的」だと評することができるのではないだろうか。 笹倉は、本作のリリースに臨んでしたためた文章で、アルバム・タイトルの由来を語っている。『Little Bug』の「Bug」とは、小さな虫のことでもあり、コンピューターやソフトウェアの用語であるところの「バグ」を同時に示唆しているのだという。整然と、理路通りに展開するわけではない、人間にとっては未知というほかない小さな虫の世界。あるいは、正確無比であるはずのデジタル・テクノロジーが支配する無機世界にすら忍び込む予期し得ない事態。これらの不可知性/不可能性にここ数年の世界を突如覆ったカタストロフィを重ね合わせることで、より深く世界の不可思議に触れ、その驚きを手放さず、正気を保ちながら生きようとする。あるいは、環境へと目と耳と肌を開き、その中で驚くことを諦めず、歌いつづけていく。より敷衍して言えば、「個」への内閉や自足を退け、世界へと再び目と耳を開いていく……。 フォーク、フォーク・ロック、アンビエント。様々な次元において、かつてこのような深度でそれらを巧みに溶け合わせた音楽があっただろうか。『Little Bug』が見せてくれる風景の鮮やかさ、奥行き、広大さは、旧来のポピュラー音楽観をダイナミックに溶解させる可能性も秘めていると感じる。 |
インフォメーション
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WEBサイト | : | 笹倉慎介 Instagram |
: | https://twitter.com/PUFFIN_RECORDS | |
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