言いたいことは言えちゃうこんな世の中 第11冊 | reading note 連載コラム
台湾とボクと、時々、音楽2
期待や不安、悲しみ、色んな感情が行き交う場所空港。まるで人生のジオラマみたいにそれぞれの物語がある。
あそこのカップルは遠距離なんだろうか、離れ離れになるのなんてこの世の終わりと言わんばかりに、いつまでも手を繋いでいる。彼女はずっと彼の横顔を見上げて、彼氏はずっと前を向いている。彼氏の見てる未来。そこに私はいるのかなってちょっと余計な事考えたりして。
そこのサラリーマンと思しき男性は、出張だろうか、これから行われるコンペに向けて朝まで念入りに組み立てた自身のプランを誇らしく眺めている。
メガネに映る液晶画面がまるで水晶に向かって呪いをかける魔術師みたいで笑えた。
そんな自分はと言えば、大きなキャリーバッグとボストンバッグに服やら機材やら夢やら物販用のCDなんかをパンパンに詰め込んで手荷物の重量制限と闘っていた。
昨年は出発の時刻ギリギリに手荷物検査に行き、持ち込んだ買ったばかりの高級ボディークリームが検査に引っかかるという事件が発生。捨てるか今全て使うかの究極の二択を迫られ、貧乏魂丸出しで、遠ちゃんを道連れに真夏の気温真っ只中、ベタベタにクリームを塗りたくったあの忌々しいゲートが出現する。
きっとこれから先何年も、このゲートを見る度にこのボディークリーム事件を思い出すんだろうな、なんて呑気な事を考えていた。この後に迎えるあの最悪な悲劇が起こるなんて、この時は思いもしていなかった。
飛行機はワクワクする。それは子供だろうと大人になっても同じ事。
旅に出る前日の夜になかなか眠れないのと同じ。いつまで経ってもこのワクワクは消えて欲しくないな。
そんな言い訳を盾にしながらこれから起こる出来事について語ろうと思う。
飛行機なんて普段あまり乗る機会がないので(売れてないバンドマンは機材車移動)そりゃもう否が応でもワクワクする。iphone片手にどうせ後になったら見向きもしないゴミのデータと化するであろう空からの風景を撮る。台湾に到着して忘れ物はないかって何度も確認もした。
良い歳こいて忘れ物なんてあるわけねーだろって思ったあの時の自分にドロップキック。
空港に降り立って、台湾の空気ってそうそうこんな感じって思い出にふけっていたら
「ない」
脳内では井上陽水先生が
「探し物はなんですか?」
「見つけにくいものですか?」
うるせー携帯がないんだよ。ないない。カバンの中も探したけれど見つからない。頭の中が真っ白に。
でも反射神経の鬼の私は猛ダッシュ。さっき潜ったゲートへ戻る。
まだ間に合う。そう自分に言い聞かせていたけど、実際にはゲートは全て閉じられていた。扉の奥にいる警備員に声をかけるが言葉が全く通じない。ボディーランゲージで激しく伝えるも伝わらず。もどかしい。別の入り口へ行けとジェスチャーされそこへ向かう。係の人へ声をかけようとしたその時、
あれ?携帯を失くしたって英語でなんだ?
とっさに出てきた英語が
「I forget iphone」
空間を埋めるように、係員たちから一斉にクエッションマークが浮かぶ。
「だから、I forget iphone」
コイツはクレイジーか?と言わんばかりのリアクション。よくよく考えてみれば「忘れた」の種類が違った。飛行機の中に忘れたので、あってiphoneという存在を忘れたという意味になる。
この場合はLOSTを使うべきなのか?英語って難しいな。ってそんな悠長な事言ってる場合じゃない。
俺のiphoneには沢山の思い出とボイスメモにはメロディーが一杯入ってんだよぉぉぉぉ
続く
フロアワンマンライブ「お好きなところからご賞味あれ」ダイジェスト映像
最新作品
reading note『人間味』
発売:2017年6月28日(水)
価格:1,800円(税込)
品番:FFCR-0003
レーベル:for future company records
収録曲:
1. ケダモノ
2. 人間味
3. 性癖
4. 五月の雨
5. 夢想病
6. 食べ頃
ライブ情報 |
2017年6月に最新ミニアルバム『人間味』を全国発売。7月には台湾「覺醒音樂祭」に出演し、初の海外進出も果たした。10月には渋谷TSUTAYA O-nestにて初のフロアワンマン「お好きなところからご賞味あれ」を開催。チケットソールドアウトで、大盛況のうちに終了している。 https://www.readingnote.net/
reading noteのボーカルギター |
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