アオノマリ + 宮田涼介 コラボシングル『雨のあとに』発売記念インタビュー
アオノマリ + 宮田涼介が、2017年12月24日にコラボシングル『雨のあとに』をリリースしました。今回のインタビューでは、楽曲の魅力を紐解く鍵になる貴重なお話をたくさん伺うことができました。
インタビューの後には、今作のミュージックビデオや関連映像も掲載しています。合わせてご覧ください。
自己紹介をお願いします。
宮田涼介(以下、宮田) 宮田涼介です。普段はソロでアンビエントやピアノの楽曲を作っています。
あと、「fumin.」というレーベルでスタッフをやったり、「かろうじて人間」というバンドでギターを弾いたり、「Shelling」のサポートで、ライブでベースを弾いてたりします。
アオノマリ(以下、アオノ) アオノマリと申します。「chietoyts」という男女ツインVo.のバンドでギターボーカルをしています。解散してしまったのですが、「rain rain rain」というバンドでも活動していました。よろしくお願いいたします。
かろうじて人間、chietoyts、rain rain rainの簡単なご紹介もお願いします。
宮田 かろうじて人間は、2015年に結成したバンドです。変拍子を連発しつつ、あくまでも歌もの…そんな感じのバンドですね。ソロでやってるアンビエントとかピアノ系とは全然違った事をやっているんです(笑)。
1st Mini Album(ゾウさんが殺す)と、配信限定ですが1st EP(キーウィがなんかたのしそう)をリリースしています。
アオノ rain rain rainは4人編成、いつかの記憶を辿るような、懐かしい雨音が聴こえるような柔らかな空気のバンドでした。その名の通りライブの日にはよく雨に見舞われてました(笑)。
実はバンド名の由来は今回収録している「rain rain」から来ています。記憶に残る、ささやかで、あたたかくて時に冷たくて、心地よい雨の様なバンドであったらいいなと思っています。
chietoytsは現在メインで活動しているバンドで、男女ツインボーカルのオルタナティブロックバンドです。懐かしい様で新しい匂いの音と、浮遊感がありつつ一言が刺さる歌詞がとても良いバンドです。時には尖ったサウンドにも成れるところも魅力だと思っています。
「youth is yesterday」という曲のMVがYouTubeにありますので、ぜひ聴いてくださいね。
| この人何でもできるんじゃないか!
お二人が出会ったキッカケを教えてください。
宮田 「かろうじて人間」のレコ発ライブで共演した時ですね。2015年の年末に「かろうじて人間」の1st Mini Albumの発売が決まって、レコ発ライブを企画したんです。そこで、共演でどのバンドを呼ぶかって話になった時に、うちのボーカルのharogiが紹介してくれたのが、「rain rain rain」だったんですね。
実際にお会いしたのはライブ当日でしたけど、翌年になって僕がソロアルバムを出して、その時のレコ発でも、お互いにソロで共演したりしました。
アオノ 宮田さんも回答されていますが、かろうじて人間のリリースイベントが最初ですね。その頃は「ギターの人」だと認識していたのですが、のちにソロ音源のリリースの際にも呼んでいただいて。「この人何でもできるんじゃないか!」という感じでした(笑)。
共作をすることになった理由を教えてください。
宮田 rain rain rainの楽曲を、自分の感性に落とし込んでみたくなったからですね。かろうじて人間のレコ発の時に、rain rain rainの1st Demoを1枚貰ったんです。
それ以来、折に触れてデモを聞いていたんですが、ある時「rain rain」のピアノバージョンが不意に降って来て、思いつきとノリで「アレンジさせて頂けませんか」って話を持ちかけたんです(笑)。
その時はリミックスのつもりだったんですが、マリさんから「もし良ければ歌いましょうか」と言って頂けて。その時は「rain rain」だけの予定だったんですが、後になって「アカルイシス」と「孤独の海」のアレンジが降って来てしまって(笑)、今回は3曲入りにして配信リリースにしよう、ということになりました。
アオノ 宮田さんソロのイベントの後、rain rain rainも解散してしばらくは連絡も取っていなかったのですが、ある日「アレンジしたいんだけども」という旨の連絡をいただいて。鍵盤の音はとても好きだし、宮田さんのアンビエントな世界観で曲がどう化けるのか興味があったので、なんとまあ有難い、どうぞどうぞ!という感じで快諾しました。
それでアレンジについてお話を進めていくうちに「ボーカル入れちゃいます?」という風になって、今に至ります。
| 今作は良い意味でアンニュイになっている感じがします
シングルのタイトル『雨のあとに』には、どのような意味が込められていますか?
宮田 rain rain rainが残念ながら解散してしまって、今作は解散後にリリースするという運びになってしまったんですが、バンド活動が終わって雨が降り止んで、晴れ間が見えてくるのをイメージして名付けました。rain rain rainのエピローグみたいな感じですね。
ジャケットも、ちょうど雨が降り止んだあたりの頃合いになっています。雲の切れ間から青空が見えてますよね。
アオノ 今回の楽曲を制作した元のバンド名がそもそも「雨」にまつわるものというところが大きいです。
私個人の話なのですが昔から雨が大嫌いで、そういう嫌いなものとも折り合いを付けたくて生まれたのが「rain rain」という曲なんですよね。この曲、出来たのは実はrain rain rainを始めるずっと前で。私の音楽活動の全ての起点みたいな節があるんです。
今回はその起点となった「雨」にターニングポイントというか、節目をつけるという意味でもこのタイトルにさせていただきました。
あと、雨の後のあの匂いは不思議な気持ちになりますよね。晴れ間の歓喜とかしんとした力強さとか、去っていく寂しさの背中を見送るような気持ち。それを作品から感じてもらえたらいいなという気持ちでもあります。
今作はオーケストラアレンジなども行われていますが、楽曲はどのように制作しているのか教えてください。楽曲制作やレコーディングでのエピソードなどもあれば教えてください。
宮田 最初にオケを3曲分、全て作ってから歌録りをしました。ピアノは3曲とも全部弾いて、「アカルイシス」だけはオーケストラ音源を更に加えています。
オーケストラ音源は前から持っていて、ちょくちょく使ってた事もありましたが、大々的に使うのはこれが初めてで、何かと苦戦しましたね…。知人のKyocmpさんがオーケストラの打ち込みが得意で、編集などを教えてもらいつつ…ひぃひぃ言いながらやってました(笑)。
歌録りは、今回はエンジニアさんの立会いは無く、機材なども殆ど全部自分たちで用意して敢行しました。
アオノ 楽曲アレンジについては、全面的に宮田さんにお任せしました。元々あった楽曲に独自性を持たせたい気持ちもあったので、敢えて全て宮田さんにお任せしました。
ボーカルに関しては鍵盤の空気に上手く乗っかるように意識している部分もあります。「rain rain」「孤独の海」なんかは特にそうです。原曲のバンドサウンドのアップな感じを抑えて、凪いだ空気感を出したくて。
ボーカルRECの時には我儘いって細々とした調整をお願いしましたし、終始宮田さんにはお世話になりっぱなしでした(笑)。
宮田 歌い方に関しては、バンドでのマリさんの歌声と聴き比べると、変化がはっきり分かりますね。今作は良い意味でアンニュイになっている感じがします。rain rain rainやchietoytsとはまた違った一面ですよね。
| その景色が自分の中に刻まれているのを実感したくて
これまで公開されたMVのうち2作品は海で撮影されていますが、これはどうしてですか?また、撮影に関するエピソードなどもあれば教えてください。
宮田 rain rain rainというバンドを最初にライブで聞いた時、理由は無いんですが感覚的に「海みたいな音楽」っていう印象を受けて。なので、「孤独の海」と「アカルイシス」は、歌録り前のオケを聞いて、歌詞ももう一度読み直してみて、それぞれに合いそうな海の風景を撮影しました。
「rain rain」は、マリさんが上京して初めて新宿に来た時の歌だと言うのをあらかじめ聞いていたので、新宿で撮影しました。ハンディのビデオカメラを置いて、ぼーっとしながら録ってましたね(笑)。
僕、自分的にビビっと来た景色を見た時、そこにビデオを定点カメラみたいに置いて、風景をよく撮影したりしてるんです。それは別にMVにしなくても、後になって見返さなくても良くて、ただその景色が自分の中に刻まれているのを実感したくて。今回のMVは、その自分の趣味の延長みたいな感じですね。
アオノ もともと私が海がとても好きで。それでテーマとして多用していたというのも大きい理由です。孤独の海なんかは特に、もろに海!って言っていますしね(笑)。
海に行って眺めていると大体の気持ちが静かになるところがとても好きです。穏やかなのと同時に、夜の海のよく分からない恐ろしさとか、朝方の海の涙が出そうな寂しさのある安心感とか、好きです。
そういう空気感を作るプラス要素として、映像の方でも海を題材にしているところがあります。
宮田 「孤独の海」は小田原の御幸の浜という所で撮ったんです。僕の祖父母が小田原に居て、子供の頃は毎年夏に行っていて、自分にとっては思い出深い場所です。
ここに来るといつもノスタルジックな気分になって(笑)、撮影してMV用に編集してる時なんかは本当に、幼い日にどんどん還っていっているような感覚でした。
「アカルイシス」は逗子海岸ですね。8月の終わりくらいに、逗子に行きたい気分になって、ビデオを持って出掛けてたんです。8月の終わりって、「夏が終わるんだな」みたいな感じで、ちょっと寂しくなるんですよね。ちょうど日没の時間でしたが、夏の終わり特有のセンチメンタルなあの感じを、映像から感じてもらえたらと思います。
ちなみに、オリジナルのrain rain rainの楽曲はどこで聴くことができますか?CD発売などされていますでしょうか?
アオノ CDにつきましては「沈黙の海から」というデモがありましたが、解散後、販売は終了しております。今回宮田さんとコラボさせていただいた「孤独の海」については、MVがYouTubeにありますので、そちらをぜひ!私自身大好きな映像作品です。
最後に読者へメッセージをお願いします。
宮田 rain rain rainの楽曲を、自分なりに解釈して、自分なりの感性で再構築してみました。rain rain rainの音楽を聞いた事ある方は、バンドのエピローグを聴くような感覚で、聞いた事ない方も「こうして一つのバンドが終わっていったんだな・・・」みたいに想いを馳せつつ聴いてもらえたらと思います。
アオノ rain rain rainはすでに解散したバンドですが、こうして別のかたちで聴き継がれる事もあるんだなと感じています。
そういう、「死なない音楽」の可能性を何となく感じてもらったりだとか、聴いた方が出会ったことのない気持ちに出会ったり、昔感じていた気持ちと再会したりなどしていただけたらなと思っています。雨上がりの海辺で、遠くの波が光るのを見たり、シーグラスを拾ったりするみたいに。
あとは、これをきっかけに宮田さんや私が今それぞれ紡いでいる音楽にも興味を持っていただけたら万々歳だなと思っています。どうぞよろしくお願いします!
rain rain – アオノマリ + 宮田涼介 / rain rain – Mari Aono + Ryosuke Miyata
アカルイシス – アオノマリ + 宮田涼介
孤独の海 – アオノマリ + 宮田涼介
かろうじて人間 『巡る色、走る』MV
chietoyts – youth is yesterday
「孤独の海」 / rain rain rain
chietoytsのギターボーカルであり、元rain rain rainのアオノマリと、かろうじて人間ギターの宮田涼介によるコラボプロジェクト。 |
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