セルフライナーノーツ

私（藤井）とイワマチカがユニットのような形で活動を始めた頃、厚海義朗（Bass,Cho)が名古屋から東京に引っ越してきて、近所に住み始めた。
義朗が所属するGUIROと共演したり、私がGUIROで何度か演奏した事もあって、いつかは一緒に音楽を作ってみたかったので、そのユニットに参加してもらうことになった。
また近所に住むオータコージを誘い一緒に近所のスタジオで音を出したのが、OishiiOishiiの始まりだったが、まだバンド名はなかったと思う。
私がメインで活動するMUSIC FROM THE MARSでは大長編映画を作るような気持ち（実際に映画を作ったことはない）で楽曲制作をするのに対して、OishiiOishiiでは幼少期に聴いた（というより両親が聴いていた）”アメリカンポップスやフォークを基調としたエッセイのような極私的な楽曲を作り”義朗もイワマチカも各自楽曲を持ち込んで4人でアレンジしライブ活動を不定期に始めたのが2010年。
2011年になり東日本大震災が起き、イワマチカの岩手県宮古市にある実家も被災した。
家族が被災したり、当たり前の生活が当たり前ではなくなり、原発問題等、将来に対する大きな不安が社会を覆っていく日々の中でOishiiOishiiのシンプルな歌と楽曲が私にとってとても意義深く感じ始め、作品として残したいと思うようになった。折角ならばその思いが新鮮なうちに。
丁度イワマチカの妊娠も分かり、できれば出産前に録音を終わらせようと、エンジニアにAxSxE氏（当時はご近所さん）を迎え伊豆スタジオで録音した。ほぼ初回テイクOKで録音に半日かからなかったと思う。
その後下北沢アンディーズスタジオで歌を録音したのはイワマチカ出産一か月前。
ギリギリセーフで間に合った。

そして3年後2014年。イワマチカ産休を経て、この音源は「Dawn in a Spoon」と名づけられCDリリースされた。

そんなアルバムです。

今年の10月に「あせない空」がとあるテレビ番組（※）のテーマ曲に採用されるという連絡がありました。番組のプロデューサーさんが「いつかこの楽曲を自分の番組で流したかった」と。録音してから10年後にこんな知らせがあるとは。テレビで流れるということよりも、ずっとこの曲を大切に思っていてくれた人がいたことがとても嬉しかったです。
YouTube再生回数、登録者数、SNSのいいねの数で音楽の価値は決められたくないと常々思う私ですが、改めて1イイネの重みを大切にしたいと思います。

そしてCDのみの発売だった「Dawn in a Spoon」をサブスクリプションサービスで配信することにしました。
多くの人に聴いて貰えることを願ってます。

藤井友信


 
※BSフジ「私たちの天然生活」
2021年11月月27日（土）15:00〜15:55 放送