2020-12-11 19:00

Vegpher『Minutus』インタビュー | 特別寄稿

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FilFla、FourColor、minamoなどでも活動するサウンドアーティスト/コンポーザー・杉本佳一によるハイブリッドなビートミュージックプロジェクト《Vegpher》、今年7月にはDAOKOの4thアルバム『anima』に収録の「VOICE」をVegpher名義で作/編曲、そして11月11日に満を持して待望の3rdアルバム『Minutus』をリリースしたVegpherこと杉本佳一氏にアルバムを中心に話を伺った。

 
 

   まずはリリースおめでとうございます!今回の『Minutus』は杉本さんの音楽に対しての深い造詣と高度なプロデュースワークが感じられ、全編凝縮された素敵な曲が詰まっています。まずは杉本さんの作曲を含む創作への発想の源的なところを教えて下さい。

 
Vegpher ありがとうございます!昔から創作物や建築物などからインスピレーションを受けると自分でも作ったり手を加えたい衝動がありました。ゆえに中途半端に手を出して長続きしない事がしばしありましたが、その衝動が今は全て音・音楽に向いています。特に建築物からは大きなイマジネーションをいつも受けます。

 
 

 
 

   本作『Minutus』で聴いて頂きたいポイントを教えて下さい。また全体でも個別でも何かコンセプト的なポイントはありますか?

 
Vegpher ”ポイント”というか気持ちを委ねていただいて個々のトラックが持つグルーヴをフワッと感じていただければ嬉しいです。コンセプトという程ではないのですが、リズムを主軸に音色やメロディをどう配置したらベストなのかを常に注意を払いながらトラックメイキングしました。

 
 


Minutus Trailer

 
 

   「Minutus」というは興味深いなタイトルです。このタイトルにした意図といったところを教えて下さい。

 
Vegpher 一瞬一瞬の密度を大事に作ってきたアルバムなのでその事をを映し出せるような言葉を探していました。そこで小さな時間の単位という意味の解釈から”Minute”を選びましたが、少し直接的すぎる気がしたのと響がより良いという理由で”Minute”のラテン語”Minutus”にしました。

 

   では各曲についてお聞かせ下さい。アルバムのオープニングを飾る「Secret」はPianaさんの歌声が本当に美しく響いています。Pianaさんをフィーチャーした経緯や聴き所など簡単にご紹介をお願い致します。

 
Vegpher Pianaさんは10代の頃から一緒に活動してきた数少ない音楽仲間の1人です。なので常に何か一緒に作りたい気持ちはずっとあり機会を探していました。「Secret」のトラックを作り始めた頃、ふと彼女に歌・声を入れてもらえたら何か面白い事が起こるのではないかと思い、共作をお願いしました。
綺麗に伸びる歌声とハーモニーにどっしりとしたビートと電子音が絡まってきて心地よいです。

 

 

   HACOさんをフィーチャーしたM2「A Mind Resort」は独特な雰囲気を表現されているチル感が気持ち良いです。HACOをフィーチャーした経緯、またどのようなイメージで制作されたのでしょうか?

 
Vegpher 2018年にリリースされたHACOさんのリミックスアルバム”SUIQOO”に僕の別名義FourColorで参加させていただいた際に「次は僕の作品に参加してください」とお願いしたのがきっかけでコラボレーションさせていただきました。
当初このトラックはミニマルなインストを想定して作り進めていたのですが、形ができた時に客観的に聴いてみると少し物足りなさを感じました。それでボーカルを入れてみてはどうだろうかと思ったのですが、リズムが少しづつズレたり転調などもあるこの曲に自然に歌を乗せられる方は誰だろうと悩んでいた所、HACOさんを思い浮かべました。少し難解な曲もポップでキュートな雰囲気にしてしまう所が本当に凄いです。

 

 

   M4、6、8ではFilFlaでも活動を共にされている盟友とも言えるMoskitooさんをフィーチャーされています。各曲の聴き所など簡単にご紹介をお願い致します。

 
Vegpher M4、今回のアルバムの中で最も難航しました。曲調や声を含めた音色を何度も変更し、最終的にMoskitooさんに相談した所、彼女らしい言葉とメロディでこの曲をまとめてくれました。ボーカル(言葉)、リズム、ウワモノのユニゾン部分が特に気持ちいいです。
M6、トラック自体は今作で一番最初に出来上がったと記憶しています。当初からボーカル想定で作っていましたがイメージのすり合わせが自分の中で上手くいかず長い間放置しておりました。アルバムを仕上げるにあたって再びM4同様Moskitooさんに相談した所、彼女の持ち味が良く生かされたエアリーでグルーヴがクセになる楽曲に仕上がりました。
M8、ここ1~2年ライブでもよくプレイしている曲です。フロアでも使えるようにグルーヴにボイスがちゃんと馴染むように心がけました。フロア向けに作りましたが、展開もしっかりあるのでリスニングとしても十分聞き応えがあると思います。

 

 

   M7「VHF」ではJessicaさんをフィーチャーされています。Jessicaさんをフィーチャーされた経緯、またどのようなイメージで制作されたのでしょうか?

 
Vegpher アルバム制作を進めていた時にレーベルオーナーのnikさんにボーカリストの相談をした所、何人か候補をいただいた中にJessicaさんが入っておりました。直感的に自分のトラックに合わせたらスゴくチャレンジングな事になるのではないかと思いボイスを使用させていただきました。どんな音の中にあってもスッと抜け出てくる声の力が本当に素晴らしいです。
そしてM8同様フロアでも使える曲をイメージして制作しました。リズムと掛け合いのようになっているボイスが何度も聴き返したくなると思います。

 

 

   アートワークは写真家のMai Komuraさんの作品とお聞きしました。Mai Komuraさんを起用された経緯などご紹介頂きたいのと、実際にご自身で製品を手に取られた際の感想を聞かせて下さい。

 
Vegpher コムラさんの作品の細密さに魅了されて以前から僕が一方的に好きで写真集を持っておりました。今年コムラさんも参加されていたグループ展で作品を購入する機会があり、その事もきっかけとなりアートワークへの起用を依頼させていただきました。
はじめに話したアルバムタイトルにもかかってくる「一瞬の密度」を視覚で感じられる作品です。細部をついついいつまでも見てしまいます。

 
 

 
 

   12月5日(土)にはリリースイベントを神楽音で開催されました。当日のイベントはどのような雰囲気でしたでしょうか?また、まだまだコロナ禍前のようにはイベントを開催しずらい状況が続く可能性もありますが、イベント全般について何かご自身で思われることはありますか?

 
Vegpher 来場してくださった皆さんが音楽を楽しもうという気持ちが自ずと伝わって来てイベントは終始非常に良い雰囲気でした。またこの雰囲気が作れたのも出演者の方々のパフォーマンスはもちろんの事、今回イベント全般を組み立ててくれた神楽音さんの手腕であると思います。やはりこのような状況になったからこそ、今どのようにイベントを制作したら良いかを一番理解しておられるのが現場の方々であるという事です。また映像班の皆さんのお陰でその現場の雰囲気をライブ配信という形で少しでも多くの方々に伝えられたのではないかと感じました。
この困難、またそれ以降も起こりうる事象の対策なども含め現場の方とよく話し合いながらイベントを制作していくことが最善であり、ひいてはこのシーンを育んでいくのだと再確認しました。

 

   楽曲制作に対するアプローチや、楽曲制作で常に意識していることは何ですか?

 
Vegpher 作品を作る度にまず、今自分がどんな音を出せるのか/作れるのかを思い浮かべ、さらに進歩させた場合にどんな事が可能かを考えています。

 

   これまでに影響を受けたアーティストを教えて下さい。

 
Vegpher ソニック・ユース。

 

   最近のお気に入りのアーティストや作品を教えて下さい。

 
Vegpher Rob Mazurek & Exploding Star Orchestra “Dimensional Stardust”が素晴らしかったです。

 

   フィーチャーや共演など、今後一緒にやってみたいアーティストはいますか?また、今後どのような創作を続けていきたいですか?

 
Vegpher 今の所特にございません。今後も自分自身が聴きたい音を作り続けていくと思います。

 

   これからの音楽シーンについて、特にフィジカル、配信、ライブなど、アーティストの視点でみる今後や将来像的なところを教えて下さい。

 
Vegpher サブスク、レコード、カセットテープ、CDなど媒体が増えていますが音楽を聴く側の人がそれぞれ好きな媒体を選択出来る状況が良い事だと思っています。そしてそれに対してアーティストが全ての媒体に対応した作品をその都度無理なくリリースできる環境になったら最高です。
ライブについてもこの困難の中、ライブ配信が一般的になり、さらにはバーチャル空間でのライブやコンサートが今後増えていき、それぞれの媒体が共存する中、お客さんが楽しむ方法を選択できる環境が整ったら素敵です。

 
 

 
Vegpher『Minutus』

発売:2020年11月11日(水)
価格:2,200円+税
品番:PFCD101
発売元:PROGRESSIVE FOrM
販売元:ULTRA-VYBE, INC.

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収録曲:
01. Secret feat. Piana
02. A Mind Resort feat. HACO
03. Waiting
04. I am feat. Moskitoo
05. Classical Music
06. Frozen Maze feat. Moskitoo
07. VHF feat. Jessica
08. Velvet Voyager feat. Moskitoo
09. Night Owl
10. Jiff

 
All Tracks Produced & Composed by Keiichi Sugimoto

M1: Lyric, Co-Composed and Vocal by Piana
M2: Lyric, Co-Composed and Vocal by HACO
M4, M6: Lyric, Co-Composed and Vocal by Moskitoo
M7: Voice Materials by Jessica
M8: Voice Materials by Moskitoo

Mastered by KASHIWA Daisuke at Studio FLAT

Photography by Mai Komura
Design by Takaramahaya

 



 
Vegpher(ベグファー)

FilFla、FourColorなどでも活動するサウンドアーティスト/コンポーザー杉本 佳一によるハイブリッドなビートミュージックプロジェクト《Vegpher》。リズムのインパクトと快楽的な低音のシークエンスに主眼を置いた空間的でバウンシーなダンスミュージックを志向する。
杉本の作品はそれぞれのサウンドプロジェクトにおいて、ニューヨークの12kやapestaartje、ドイツのTOM LAB、日本のHEADZなど国内外の音楽レーベルから多数リリースされており、1999年のFourColorとしてのアルバムリリース以降、ドイツのtomlab、ニューヨークの12k、日本のHEADZなど国内外のレーベルから28枚のアルバム・EP作品をリリース、関連作品は80タイトル以上に及ぶ。作品は英『THE WIRE』誌ベスト・エレクトロニカ・アルバムに選出されるなど海外でも高い評価を得ており、これまでにヨーロッパ各国をはじめアジア、オーストラリア、北米・カナダでライブパフォーマンスを行うなどグローバルな活動を続けている。
また、広告音楽の作曲家として、CM、舞台、映画、エキシビジョンなどの楽曲制作や劇伴を手がけ、音楽で参加した作品がカンヌ映画祭「若い視点賞」、フランス・エクスアンプロヴァンス映画祭「オリジナル映画音楽部門賞」、Design for Asia Award 2010 Gold Awardなどの受賞歴を持つ。映画音楽の受賞をきっかけに2007年フランス映画音楽作曲家協会(U.C.M.F)会員へ登録される。
2019年はFilFlaのアルバム『micro carnival』をHEADZからリリース。2020年、5月に12Kよりminamo & moskitoo『Superstition』を、7月にminamo『Superscience』をリリース、またDAOKOの4thアルバム『anima』1曲目に収録の「VOICE」をVegpherが作曲/編曲する。そして11月11日、前作『PLUS』に続くVegpher名義での3rdアルバム『minutus』をリリースする。

 

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