Smany インタビュー | 最新アルバム『to lie latent』で引きだした”個の内側に潜む宇宙”
Smanyが、4thアルバム『to lie latent』を今年2019年6月12日にPROGRESSIVE FOrMからリリースした。
Smanyは東京在住の作曲家/ヴォーカリスト/パフォーマーで、2013年にオンラインレーベルの雄・分解系レコーズより発表した1stアルバム『komoriuta』以降リリースを重ねながら、国内外問わず数多くのアーティストともコラボレーションしてきたことでも高い評価を獲得している。
今回はニューアルバムと、魅力ある作曲家としての彼女をもっと知りたくお話を伺った。
インタビュー&編集:きたはらふひと
Q 自己紹介をお願いします。
Smany えすめにーと読みます。生まれも育ちも東京です。趣味は他人の畑を観賞する事です。猫が好きです。
Q アーティスト名「Smany」の意味と名付けた理由を教えてください。
Smany Smanyの由来は、10代の頃大好きだったsoulwaxの2manydjsから来ています。旧姓が斉藤だったので”2″をイニシャルの”S”に変えただけなんですけど……当時活動していたバンドのリーダーが名付け親です。
Q ニューアルバム『to lie latent』の簡単なご紹介をお願いします。また、Smanyさんにとってどのような作品ですか?
Smany 今作は過去に分解系レコーズからリリースした3作『komoriuta』『polyphenic』『kotoba』の中からセレクトして1枚のアルバムとして再構築したものです。
楽曲自体に関しては当時の思い出が沢山詰まった大切な作品としか言いようがないのですが……
過去のリリースでやりきれなかった事、例えば大きな所で言うと流通盤という意味でもそうですし、ジャケットに関しても分解系時代のアートワークは全て主宰の矢向さんにお任せしきりだったので、今作は自分自身で構想を練ってフォトグラファーのISAMYUさんとヘアディレクターの内田聡一郎さんにご協力をお願いしました。
その他にもMVを撮影したり、自分の中に眠っている”個の内側に潜む宇宙”を引き出していく事が課題でした。
Q アルバムタイトル『to lie latent』は日本語で「潜伏する」というような訳だと思うのですが、どのような意味を込められているのでしょうか?
Smany これまでの活動の節目となる作品にしようと思い、タイトルはSmanyという存在を抽象的な言葉で表しました。あまり詳しく説明してしまうと、”そういう作品”という一つの視点からしか楽しめなくなってしまうと思うので、各々の感じるまま多面的に解釈して頂けると嬉しいです。
Smany「2113」Music Video
Q MVも公開された収録曲「2113」は個人的に大好きな曲で、藤子不二雄の短編漫画のようなSF(少し不思議)を感じました。この曲を含め、どんな着想で楽曲を制作しているのかお聞きしたいです。
Smany ありがとうございます。
楽曲の着想はいつも思いがけないところから降りてきます。
例えば”2113″は分解系レコーズ主宰の矢向さんが、「たった一泊の旅行に大きなトランクでドライヤーまで持ってくる女の子はちょっと」みたいな話をしていて、一気に音とストーリーが浮かんで曲になりました。
私にとって作曲は白昼夢のようなもので、作ろうと思って作れるものでもなく、ふと感じたものが自然に曲となってアウトプットされていきます。
Q 歌詞はアルバム全体的に少し突き放すというか、抱えきれない諦めのようなものも感じました。その理由をお聞かせください。
Smany 歌詞も殆ど思いつくままに即興で作って、文章として矛盾している部分があれば直します。極力抽象的であるようには意識しています。
それ以外に特に意図はないので、突き放しているように感じるとしたら、それは恐らく私の人間性だと思います。
人や物事に対して一度寄り添ってしまうと失う事が怖くなるので、何事にも深入りしないように生きています。
Q サウンド面では、エレクトロミュージックの枠に納まりきらない異文化性だったり、クラシックの要素も感じました。それは意識されて制作されたのでしょうか?
Smany サウンドメイクに関しては未だ無知に近く、特に初期の作品は自分でも何をやって何故そうなってしまったのかわからないまま完成するパターンが多々ありました。
幼少期から様々な音楽を聴いてきたので、そういったものが感覚的に反映されているのかなとは思います。
Q ご自身の音楽性を作り上げた要素を教えてください。
Smany スタンスとして強く影響を受けた人物として、10代の頃に見たBECKの存在はかなり大きかったと思います。
人と同じ様に出来ず、どこにも居場所を見出せない自分にコンプレックスがあったのですが、既存の形に囚われない自由な発想で演奏している彼の姿を見て、このまま私は自由に表現していて良いんだという事を学びました。
Q 今作は、タブラ奏者のU-zhaanさんフィーチャーされたり、himeshiさんとyuichi NAGAOさんとのコラボ曲も収録されています。コラボはいかがでしたか?
Smany himeshiさんとyuichi NAGAOさんとのコラボ曲は、元々himeshiさんのアルバムに収録されたものをお二人に無理を言って再収録させて頂きました。
多くの方とコラボさせて頂いている中で最も相乗効果を発揮出来た楽曲だと思っています。
U-zhaanさんとのコラボ曲は、Smanyとして表立った活動を始めるきっかけになった曲でもあるのですが、数年前に100%ユザーンというイベントを観に行った時に、いつかユザーンさんと音楽をやりたいと思い、ボワっとしたタブラの音をイメージして作った・A・という曲を分解系にデモとして送った事で1stアルバムのリリースに至りました。
ユザーンさんがいなければ今頃私は一人細々と誰に聴かせる気もなく宅録をして、寂しく楽しい時間を過ごしていたと思います。
その後奇跡的なご縁があってご本人に演奏して頂ける事になったのですが、欲を言うならばもう少し長く夢を見ていたかったです。
予想以上に早い段階でソロ活動としての目標を達成してしまって生きる気力を失いかけました。
Q アルバム全体で見て一つの通底したサウンドのトーンを感じました。それは意識して作り出したものでしょうか?
Smany 楽曲自体は殆ど既出曲なので、1枚のアルバムとして再構築するに当たって構成として全体の流れに違和感が出ないよう入念に考慮しました。
あとはマスタリングのお力かと……
Smany “Maboroshi” from “to lie latent” PFCD89
Q MV「maboroshi」はご自身で制作されたとのことですが、音楽性にも通じる美しさと儚さを感じました。制作にあたり意識したことがあれば教えてください。
Smany 作曲と同じように感じたままに。自由に表現しようと思って制作しました。
Q 今後の活動予定を教えてください。
Smany 今はSmanyソロとは別に、えすめにーと愉快なにゃんにゃんオーケストラというバンドの作曲家兼演奏家としても活動しています。
バンドはソロのように感性だけでは片付けられない事がとても多く、尊敬するメンバーの元日々勉強させて頂いています。
次回作はバンド名義で出すかソロ名義で出すか未定ですが、個人的に挑戦してみたいコンセプトが新たに見えて来たので、じっくり時間をかけて作品と向き合っていきたいです。
そして有難い事にまだまだコラボのお誘いも頂いておりますので、これからも様々なアーティストの方々との関わりの中で未知なる自分を追求して行きたいと思っています。
Q ファンへ、そしてUROROS読者へメッセージをお願いします。
Smany ここまでお付き合い頂きましてありがとうございました。アルバムはDLやサブスクでもお聴き頂けますが、機会がありましたら是非実物をお手に取って頂けると嬉しいです!
Smany『to lie latent』試聴音源
Smany『to lie latent』
発売:2019年6月12日(水)
価格:2,200円+税
品番:PROGRESSIVE FOrM
販売元;ULTRA-VYBE, INC.
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TOWER RECORDS ONLINEでみる
収録曲:
01. The Cycles Of Life
02. Music (Hypo77 Arrange Ver)
03. 2113 (2019 Ver)
04. Maboroshi
05. 砂の城
06. 静かな嵐は過ぎ去って
07. Utakata
08. Himeshi-Lucy feat. Smany (yuichi NAGAO remix)
09. ・A・ feat. U-zhaan
10. 夜間飛行
11. あれから
アートワークもSmanyさんの宇宙が引きだされた魅力あふれる作品になっています。CD盤でぜひ確認してみてください。
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