2月来日の台湾バンド、落日飛車(Sunset Rollercoaster)と森林(FORESTS)の國國(guoguo)にインタビュー。中国大陸ツアーの貴重な回想録も
國國(guoguo)による中国大陸ツアー回想録
そしてここからはよりディープに彼らを掘り下げて行きたいと思う。
2015年秋のFORESTS&落日飛車の中国ツアー。
香港から始まり北は北京、南は最終地点の杭州まで、14日で12回のライブを行ったという。広大な中国大陸での移動は想像を絶する大変さであったと思われるが、そのツアー直後に國國(guoguo)がツアーの考察をSNSにアップしていたので、本人了解のもとこちらに転載する。
収支も赤裸々に公表し、台湾インディー界においても注目を大いに集めたこの文章、じっくりご覧ください
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今回のツアーの収支表をつけた。チケットの売れ行きは正直良かったとは言えないが、物販の売り上げで赤字にはならなかった、むしろちょっと上がりがでたと言えるだろう。
今回のツアーは3つのグループにより実現された。一つ、出演者としては、落日飛車とFORESTSの2バンドの6人、ちなみに自分と尊龍は2バンド両方のメンバーでもある。あとは香港の島米制作、そして中国の榕樹唱片。
経費の負担に関しては、飛行機とビザ代はバンドが手配するという事になっていて、チケットを取るのが遅れてしまって、中国の建国記念日の連休に当たったり、取り直したりしたことが影響して、チケットのコストとしては、一人1万元前後(約4万円)から、1万5千元近く(約6万円)まで値上がりしてしまった。さらにjonはアメリカ人なのでビザの申請手数料を入れると1万7千元(約6万8千円)になる(しかしこの数年内は何度も出入りすることができる)なので我々の負担は合計10万台湾元(約40万円)に達した。榕樹唱片の紹華は大陸での交通費や、宿、ご飯を含めた大部分の出費を負担してくれて、島米制作は香港での交通費宿泊費食費、ビザの手配や出演料の準備まで手伝ってくれた。島米制作がいなかったら今回のツアーはズボンまで売らねばならないくらいの赤字だっただろう。実際はズボンのベルトをちょっと緩めかかったくらいで済んでいる。
個人的な見方をすると、ツアーというのは一つのバンドの生涯の中で多くの割合を占めている。バンドからすると、音楽の情熱に対する自分というものをかなりの強度、密度を持ってじっくり見つめ直すことができる、またとない機会なのである。
さらに、ツアーを通してライブパフォーマンスを自分で操る能力を磨くこともできる。その効果は録音室でアルバムをレコーディングするより大きく、つまりツアーを経ることでバンドはどんどんプロフェッショナルになることができる。(しかしなんのプロフェッショナルになるのかは議論に値する。今自分が言ったプロというのは、自分の音楽や舞台上での効果、バンドの特色などをスムーズに表現できるということで、プロフェッショナル=良い音楽、coolな音楽という意味ではない)、しかしながら台湾はライブ会場が多くなく、もし比較的大規模なツアーをしようとするなら、やはり国外で、となる。
コストと文化環境の評価を元にするならば、感覚としては中国大陸へのツアーは、アリなのだが、実際は政治的問題と法律的問題があり、バンドを足踏みさせる。政治的要素は台湾インディーシーンの中では絶対的に敏感な問題で、人のお金は稼ぎたい(中国で稼ぎたい)けど、進んで揶揄されたいとは誰も思わず(中国に媚びを売っていると思われたくない)、知恵を絞って方法を考える必要があるようだ。法務部の規則からみても、大部分の小規模ツアーにおける会社関連法務やマネージメントに関する法律がまだ整っておらず、参考にできる契約のケースが少ない、もしくはすごく参考になる契約のケースがあったとしても、アーティストに対する保障は含まれてないものが多いようだ。
個人的に上記の問題を解決する方法は以下で、政治問題は実際毎日議論されてるわけでもなく、中国のミュージシャンは意識の上では大多数が自由解放されており、歴史について詳しく、お互いを尊重しているか、もしくは元々この手の議題は気にかけないかである。もし本当に人に問われたら、自分の個人的な経験から誠心誠意お伝えすると、私は台湾台湾で生まれ育って、私の父方のおばあちゃんは原住民でお父さんは台湾人、おじいちゃんは湖南人、お母さんは戸籍上は恐らく湖南人。だけど台湾で生まれている。
経験上、台湾こそが自分の家で、だから私は台湾人である。歴史に対しては無力で未来もわからないけど、民族主義はすでに用無しで、我々は手を取り合ってより良い地球人になるために進まなければならない。ツアーのマネージャーに関しては最も信用できる人間を選ばなければならない。そして完全に彼を信頼した。紹介したいその彼とは、今杭州で大学に通っている榕樹唱片の主宰「俞紹華」で彼は建中(台湾の高校)を卒業してすぐに中国に留学した。台湾のインディバンドが猛烈に好きで、同様に中国のインディーシーンも好きである。若くてエネルギッシュでパッションがある。彼もツアーマネージャーをやりたいという気持ちがあって、ツアー前に彼と何度も打ち合わせをして、何度もたくさんの細かい部分を決めて、信頼できる友人であり仕事仲間となったのである。
落日飛車は今回初の中国ツアー、FORESTSは2回目、この2つのバンドは中国では知名度はそんなに高くない。もし大規模なツアーを組んだら赤字が大きいので、理想としては、フェスを拠点にツアーを組むのがいいだろう。元々2つから3つのフェスを期待していた、上海のEcho ParkとMIDIとsimplelifeである。Echo Parkは6月の時点でFORESTSの出演は決まっていた、上海のmidiは今年は開催がなく、simplelifeは自分から我々2バンドを推薦し、主催団体に今回のツアーの大まかな計画と日程を説明し、中国でこの2バンドに歌わせる気があるかどうかを伺った。しかし、連絡が遅すぎたせいで、出演枠は既に埋まっていた。これについては、最初の見込みが甘かった。そしてフェスからの返事を待つ間、航空券を予約しておらず、最終的にコストが高くなるに至った。ツアーを回りたいバンドへのアドバイスとしては、航空券をとるのはは早ければ早いほど良い。先に予約して変更しても、遅くとるよりはマシだ。
中国の音楽のプロモーションのプラットフォームは台湾とは大きく異なり、微博、微信、看見音樂、蝦米のようなこれらのサイトを運営して宣伝をするのは早めが良いだろう。ツアーの宣伝においては、2ヶ月前でも早すぎることはない。FORESTSは今回三枚目のアルバムを出していて、三枚目のアルバムは前の2枚とは全く違っているのだが、中国のファンはFORESTSを(未だに)ガレージパンクバンドだと思っていて、宣伝文やインタビューは全部前の2枚に関することだった、これは非常に惜しかった。自分の宣伝や企画のやり方から見ると、台湾の宣伝方法は比較的見たまま、例えば、ライブを見に来てくださいとか、私はライブを見に行くとか、SNSで大体お互い知り合いで、大体友達で、「私の作った新しい音楽聞いてよ」、「面白い」、「笑える」とか多くのinside joke(内輪ネタ)などもあって、宣伝の上でどんな言葉が伝わりやすいかがわかる。ただ、中国の宣伝はこのやり方では全く通じず、原因は簡単で、そもそも我々は彼らを知らず、彼らはあなたを知らない。もし彼らとinside jokeを話したくても、お前は誰だ?と思われるだけだろう。例えば今、落日飛車がbossa novaを弾いたら自分はとても面白いと思うが、北京のお客さんは、ジャズやフュージョンをやる間違った場所に来てしまった、と思うだろう。ここは硬派な漢の世界なので、彼らは客席で氷の様になっていて、南アメリカの柔らかい風など吹いては来ないのだ。自分も考えなければいけない。もしこれらの曲風のコラージュが落日飛車の持ち味だとすれば、硬派な表現では友達を笑わせることができない。そしたら、全体のライブの流れを考えて、どういった流れでこのギャップを極限まで広げられるのかと考えなければならない。FORESTSの中国北方ツアーでは、比較的多くの注目と好評を得たのは明らかだった。佇まいは比較的クールで、純粋な音楽である感じが鮮明だったから受けが良かったか。落日飛車は中国南方で受けが良かったのだが、おそらく自分が観客と(心理的に)近づけたからだ。
ハードの技術の面で言うと、ツアーに行こうとするバンドには、音響PA1人分を連れて行ける分の予算を割くことを強烈にお勧めしたい。香港では凱元が来てくれて手伝ってくれたのだが、ライブが安心してできるし、外の出音に関して頭を悩ますことはない。実際ツアーの多くの会場で我々のriderをちゃんと見ていたのはほとんどなく、全て現地確認、である。紹華は機材が大丈夫かどうかを確認しに行かなければならなかった。まず北京では全ての会場で110Vの電源が用意されていないという事が起きて(中国は220V、台湾は110V)、FORESTSの機材はデジタル変圧器で使えなかった。後になって紹華がダウントランスを借りてきてくれたので良かった。しかし北京は本当に面倒で、垢抜けていなかった。もし凱元がいたら、現場でどんな扇風機のモーターを使うとしても変圧器を出してきただろう。寧波のときに惨劇はまた発生した。会場のPAは実際は照明担当で、モニタースピーカーとメインスピーカーさえわからない状況で、モニターのチェックもなく、さらにアンプが全て壊れていて、ついにはエレキギターを直接DIに差してライブをするはめになった。あやうくライブの時に怒りでギターを叩きつけるところだったが、最後は自分の怒りを鎮める事ができた。もし凱元がいたらその場で壊れたLaneyを直してTwin Reverbにすることができただろう。
最後に自分のバンドメンバーたちに感謝をささげる。みんなお互いを助け合って、みんなで変圧器を貸しあい、コーヒーを飲み、月餅を食べ、コーラを飲み、テンカ(テンガの中国模倣品)を使い、一番大事なのはみんな健康に生きて戻ってこれたことだ。ここまで簡単にまとめたが、実際はもっと色々あったんだ。例えば、台湾のバンドが中国インディーシーンの中でまだ一歩進んだ立ち位置にあるというなら、そんな事は已に完全になくなっている。中国の発展の速度は本当に恐ろしい。今回私は並んでいる列に横入りする人に一度だけ遭遇した、彼はとても礼儀正しく私に「すいません、入らせてもらっていいですか?」と聞いた。なぜか?と聞いたら、「この方が便利でしょう」。私が言いたいのは、文化の素養レベルはとても良く、向こうはすぐにでも占いを始めるだろう。何か質問があったらいつでもどうぞ。ギターの生徒、ベースの生徒も募集中〜。
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以上、 國國(guoguo)の中国ツアー回想録である。
この文章から台湾インディーと中国インディーの関係性を少しでも感じていただけたらと思う。
国外で勝負したいと思うのは台湾に限らずどの国のバンドも少なからず望んでいる事だと思うが、台湾と中国、そして日本を含むアジアのインディーズはもしかしたらすでに繋がり、刺激し合っている最中なのかもしれない。できるならば、その現場を目撃し、体験し、さらに登場してくるであろう新しい才能の音楽に出会える日を心待ちにしたいと思う。
そして台湾インディーを代表して国外で奮闘する彼らにこれからも注目願いたい。
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