特別対談『青葉市子 × Mangasick』(日本語)
| 各国の音について
M:この「0」というアルバムの中の2曲はトンネルの入り口からトンネルの中で録音したとのことですが、こないだ台湾に来た時もフィールドレコーディングをしていたと聞きました。台湾で録りたい音はありますか?青葉さんにとって台湾を代表する音と言えば何ですか?
青:台湾の音か……街の中で代表的な音といえば、「ブーン」(バイクのアクセルグリップをひねる動き)。
M:確かに(笑)。
青:もっと録音してサウンドエフェクトを作りたいの。例えば、郊外で夕立の音を録りたい。前に寶藏巖を散歩してた時に突然雨が降って来て、雨粒が樹に当たる音がすごく良かったの。すぐにレコーダーでしばらく録音した。
M:そしたら他の国にライブで行った時は何を録音しますか?例えばタイに行った時とかは?
青:タイ……あ、鳥の鳴き声、どこでも鳥の鳴き声は録音したいな。
M:鳥の鳴き声、いいですね!
青:昨日道を歩いてたら日本には居ない動物の鳴き声が聴こえて、もしかしたら誰か口笛を吹いているのかと思った。
M:やっぱり鳥だ(笑)。小さい時に漫画を見るたびに、漫画家がカラスの鳴き声を「アホー」って描いてて、台湾にはカラスはいないから鳴き声を聞く事は難しかったんだけど、大人になって日本に行ってから、やっと本当に似てるってわかりました。
青:確かに、カラスの中には「カー、カー」と鳴かないのもいるけど、カラスは人の声を真似する事ができるよ。私のおばあちゃんの家の近くに何年も住み着いているカラスは、「ハクション」て鳴いたり、おじいさんのマネをして「オカーサン」って鳴いてるのもいたの。
M:うわー賢い!台湾はカラスは居なくてスズメが多いです。朝早くからチュチュチュって鳴いて、本当にうるさい(笑)。
青:台湾の人はスズメも食べるの?
M:はい。
青:中国は?
月見ル君想フ(以下、月):たぶん。日本でも食べますね。
青:うん、京都の伏見稲荷の中とかスズメ焼きあるね。
M:へー、だけど台湾はスズメより鳩を食べる人の方が多いかな。
月:アグネス・チャンも鳩が好きで、日本で鳩を見たびに食べたくなるらしいです。
(一同笑)
| 漫画について
M:私たちは漫画のお店なので、やっぱり少し漫画の話をしたいと思います。青葉さんは何年か前のインタビューで言っていた当時唯一もっていた漫画の本は……
青:市川春子①の<虫と歌>。あ、ここにある(本棚から出して来る)。
M:でも今はもっと沢山持ってますよね?オススメの作品はありますか?
青:(立ち上がって)あ、私これ持ってる、これも、これも(鈴木翁二②、冬野Saho③、高野文子④等作者の本を指す)、あとこれも。
M:あ、近藤聡乃⑤さんの作品ですね
青:彼女大好き。
M:私たちも!
青:あともう一冊、ここには多分ない、スケッチ集なんだけど。
M:私たちが持ってるのはこの本だけです(《近藤聡乃作品集》を持ってくる)。
青:私も持ってる。私も好きです。だけど私が言ってたのは別の分厚いやつです。(註:《近藤聡乃スケッチ原画集KiyaKiya》)。
M:近藤聰乃さんがNUUAMMのジャケットを描いたと知った時はすごく嬉しかったです!
青:NUUAMMを一緒にやってるMahitoは私は彼女が描く人にそっくりだと言って、彼女を知ってるかと聞くので。私は彼女の作品を持っていて、さっき言ってたスケッチ集を彼に見せたの。その後、私たちはニューヨークにいた近藤さんに手紙を書く事に決めて、彼女から返信をもらえたの。
M:本当にすごい。
青:私は彼女も好きだよ(今日マチ子⑥の作品を取り出して来る)。
M:彼女の漫画を見ると青葉さんの歌を思い出します。
青:感覚が似てる所があるんだと思う。今になって沢山持ってきたいものを思いついた。すぐ日本に行って取って来たい。
M:(大笑)
青:マームとジプシー劇団⑦のパンフレットとか、毎回デザインがすごく凝っていて、表紙にドライフラワーが挟んであるものだったり、ミシンを使って車線を入れてたり、やっぱり持ってくれば良かった。
M:素敵。ここにある漫画は台湾版が出版されるのが難しいと思う作品で、どうやって台湾の読者にオススメすればいいかをずっと考えてますね。
| ジャンルを超えたコラボレーションについて
青:台湾の人はあまりCD買わないの?
M:日本に比べるとCD文化の盛り上がりは少ないですね。
青:昨日聞いたんだけど、テープを買う人が多いって。
M:うん、テープとアナログレコードを買う人は増えてはいますね。
青:日本では、こういう(漫画)作品は大体音楽と共同でなにか企画する事が多いですね。例えば知久さん⑧とNUUAMMは近藤聡乃さんとコラボレーションしたり、舞台の《coccon》は原田郁子さんに劇伴をお願いしたり。私たちは漫画と音楽を一緒に広める事ができる。
M:台湾ではこういう共同企画はまだ少ないですね。ただ、私たちが漫画を紹介する時は、確かに青葉さんが言った様に、「誰それの音楽作品のジャケットを描いた誰」とか背景の知識も紹介します。例えば高野文子先生があがた森魚⑨さんのアルバムジャケットを描いた、とか。
青:たしかに、アルバムのジャケットを描いた漫画家さんはものすごく多いはず。
M:私たちもこういうのはとても良いと思います。例えば、今日マチ子先生が好きな人は、彼女がなんのアルバムのジャケットを描いたか興味を持って、さらにはその音楽作品そのものに興味を持てば、知ってる事がどんどん多くなります。ただ、台湾は各ジャンルの棲み分けがハッキリ分かれているので、舞台が好きな人は、恐らくそのジャンル内の事しか気にしないんだと思います。
青:日本のファッション、音楽、劇場、漫画、小説の各ジャンルはそれぞれ分かれているように見えるけど、いろんな繋がりや付き合いがあって、思いもよらないところでコラボレーションがあったりするの。劇を作る人がライブを見に行ったり、ファッションデザイナーが他のジャンルの人の衣服を製作したり。
M:なんて健全な文化なんでしょう(笑)。
青:違うジャンルの人と一緒にやる時は、それぞれの表現の仕方が違う事に気づくんだけど、言いたい事や伝えたい事が同じ方を向いていればうまく行きますね。
☞ 次のページにつづく
関連記事: