2017-06-17 21:00

Hello Pop Records 杉本貴芳 台湾トークイベントツアー『獨立音樂大阪燒派對』回顧録 | 特別寄稿

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台湾でディストロ専門レーベル「Hello Pop Records」を運営している杉本貴芳さんが、今年4月に台湾のゲストハウス5ヶ所を会場にトークイベントツアー『獨立音樂大阪燒派對』を開催しました。

 
今回は、杉本さんによるレポートを特別掲載します。台湾旅行を考えている方はもちろん、台湾でツアーをしてみたいアーティストも必見のレポートですよ。

 

注目記事
台湾で活躍している日本人!レーベル『Hello Pop!!』の杉本貴芳さんにインタビュー

 
 

こんな方法もある!台湾(海外)でライブツアーを組みたいミュージシャン必見!トークイベントツアー『獨立音樂大阪燒派對』回顧録

 

text & photo by
Hello Pop Records 杉本貴芳

 
 

今年4月、Hello Pop Records企画として台湾のゲストハウス5ヶ所を会場にトークイベントツアーを開催しました。

 


イベントの様子(台中会場)

 

昨年9月より台湾に拠点を移し、日本語教師とゲストハウススタッフを行いつつHello Pop Recordsを立ち上げました(Hello Pop Records立ち上げの経緯についてはインタビューをご覧ください)。

現地のホステル業界に関わるようになり改めて台湾にはデザイン・機能性ともに優れた素晴らしいゲストハウスがたくさんあり、共有スペースでは面白いイベントが行われていることを知りました。

ゲストハウスを会場にツアーを組めば演奏場所、ホテル、なんなら打ち上げまで全て一箇所で済み、DIYで活動するアーティストにとってコーディネートしやすいのではないかと思い、まずは自分で確かめてみることに。ただし自分はミュージシャンではないため内容はトークイベントとお好み焼きパーティーとしました。

 
開催都市は台湾を満遍なく廻りたかったので花蓮、台東、台南、台中、台北の計5カ所。台中、台南では交流あるゲストハウスが諸々の都合で利用出来ず、面識のないゲストハウスと交渉しました。

すると直前になって台南会場から使用不可との連絡が…。既にフライヤー画像も作成した後だったのでかなり焦りましたが、最終的に台東会場スタッフに別のゲストハウスを紹介していただき事無きを得ました。

面識なく信頼関係が築けていない状態で交渉を行うと、こういったリスクが発生する可能性があることを身をもって体験出来ました。

 


差し替えせずに済んだフライヤー画像(笑)。一緒にHello Popを行なっている台湾人Katさん作

 

トークイベントのテーマは“東京インディーズシーンの現在”。今おすすめのバンドやライブハウス、東京のバンドマンはどのようにライブ活動を行っているか等、高円寺HIGHスタッフとしても東京のシーンを実体験して得られた情報を含め、全て惜しみなく伝えました。

 


台東会場にてホステルスタッフに看板描いていただきました

 

参加費は全会場一律100台湾ドル。今回はお試し価格ですが通常台湾のバンドによるインディーズライブイベントは前売りで350~600台湾ドルです。

参加者の管理はKatさんに作成してもらったGoogleリストを利用しました(※定員に達した台北・台中・台南会場は既に非表示になっています)。

Googleリストは便利で使いやすかったですが、Facebookのイベントページ同様あくまで参加意思を表明するだけで参加費は当日現場徴収となります。

そうなると心配なのがやはりドタキャンです。特に今回は事前に食材を用意するため、不参加の場合はすぐに連絡をと希望者への確認メールでも念押ししました。

しかし結果として15人弱がGoogleリストで参加意思表明をしていたにもかかわらず会場には現れませんでした。

 

無断キャンセル内訳

花蓮1
台南4
台中8人
台北0人
※台東はGoogleリストでの申込者0人

 

この急な参加者減少の打開策はゲストハウスでの開催メリットを存分に活かす形で無事解決されました!それは会場のスタッフから当日の宿泊客や系列のホステルスタッフ等に声掛けしていただいたのです。有難いことに結果的にはドタキャン分以上集まり食材が余ることはなかったです。

ただ定員に達したため申し込みをお断りしていた会場もあるので、申し込んだ以上参加していただくか、一言不参加の意思をこちらに伝えてほしいですね。日本のライブハウスでも前売りチケット取り置きで同様の問題が発生するかと思いますが、当日現地支払いだとなかなか回避しづらい問題かも知れません。

その中でたまたまなのか律儀な方が多いのか、唯一台北会場ではドタキャンなく申し込み者全員お越しいただきました。

 


台中会場イベント前。スタッフ友人みんなでお好み焼きの下準備中

 

ツアー参加人数
花蓮 3名
台東 10名
台南 6名
台中 19名
台北 14名

 
収支内訳

〇収入(5ヶ所)
参加費 5200台湾ドル

〇費用(5ヶ所)
交通費 1958
宿泊費 949
食材費 4761
会場使用料 570
雑費 307
計 8545台湾ドル

 

結果的にはほぼ食材費分を回収出来た形となりました。

参加者の皆さんに伺ったところ、参加費用については各会場統一でなく台北は高くしたり地域差があってもいいのではとの意見もありました。

では実際にインディーズバンドがこういった形でライブをするなら参加費いくらで来ますか?と聞いたところ、即座に「無料!」と言われました(笑)。

今回のように飲食付きなら150台湾ドルでもいいとのこと。フード付きにした点は概ね好評で、参加者だけでなくゲストハウス側も話を持ちかけた際の食いつきが良かったです。トークイベントのみだと集客が厳しいと思われ断られてたかも知れません。どこのゲストハウスにも必ずキッチンはあるのでフード付きイベントをゲストハウスで行うのは理にかなっているとも言えそうです。

 


お好み焼き効果は抜群で皆さんとても興味を持ってくれました。ちなみに台湾ではお好み焼きのことを「大阪焼」と言います

 

しかし200台湾ドル以上ならフード付きでも参加しない、とかなり厳しい意見を聞きました。例え音楽的に優れていても知名度がないとなかなかお金を払って参加しようとはならないようです。

地域別で言うとやはり東部の集客は厳しかったです。街の規模が小さい上にそもそもインディーズ音楽に興味をもつ世代である若者自体少ないそうです。花蓮、台東に関しては完全にゲストハウスとお好み焼きに助けられた形となりました。

 
また今回唯一花蓮は金曜日開催でしたが、台湾でイベントするなら土日しか人が集まらないよ、という声も聞きました。

交通の便も東部はほぼ電車しかないため希望時間のチケット確保が大変でしたし、食材の準備もお好み焼き粉や焼きそばの麺は百貨店(地下スーパー)のない東部では準備出来ず、台北から持ち込みました。ただ電移動時の風景は素晴らしかったですし、場所も人もとても良いところでした。

 


電車からの自然の景色

 

参加者はやはり若者中心で日本のバンドシーンの情報もよく知ってる人が多くみえました。そういう方々はオススメインディーズバンドに対し非常に興味を持ってくれました。

会場使用料や宿泊費については、ブログ・SNS等で日本人に向けゲストハウスを宣伝することを交換条件に無料や割引にしてくれる所もありました。台湾のゲストハウスは大半が個人経営で融通がきくと思いますので、事前に交渉してみるのもいいかも知れません。

但しその際はギブ&テイクを念頭にゲストハウス側へのメリット(宣伝効果)も提示したうえで割引交渉を行い、win-winの関係を築くことでより今後に繋がると思います。

やりとりは自分は中国語でしたが、台湾のホステルはどこも英語が通じますので英語で全く問題ありません。最初の段階でタイムスケジュールまで記載された詳細な資料を各ホステルに送ったのですが、具体的な資料はありがたかったとも言われました。

 
今回の台湾での告知についてはHello Pop RecordsのFBページのみでした。台中や台北ではSNSでシェアしてくれる人もいて、予想以上に興味を持ってくれる人が多かったです。

但し花蓮があまりにも集まらなかったため大学の軽音楽サークルにメッセージしてみました。しかし効果はなく台湾シンディシーンで影響力のあるレコード・CDショップ2manymindsがシェアしてくれて参加者が増えました。申込者数は台中が一番多かったです。いずれにしても台湾はFacebookが主流のため、告知はFacebookが中心となりました。

 
 

以下簡単に各ゲストハウスについて当日の様子等お伝えします。

 
2017年4月7日(金) 花蓮 Elysees House欐舍

 
自分がスタッフをしてるゲストハウスWe Come Hostelにオーナーがたまたま宿泊したことがきっかけで親しくなり、今回声掛けさせていただきました。厳密にはゲストハウスではなく民宿ですが、宿の環境設備どれも想像以上によかったです。

参加者3名はオーナーの友人、中国から来ていた当日宿泊客でした。北京でドラムを教えてるそうで、色々お話をした際彼の口から出てきた日本のバンド名はLamp、toe、椎名林檎、the pillows、スピッツでした。

イベントを開催するという点で言えば4部屋だけのこじんまりした民宿のため、当日宿泊客を取り込むにも宿泊客自体少なく、集客面に不安のあるイベントを行う場合はゲストハウスのがいいかも知れません。

オーナー姉妹それぞれのキャラもよく、とても居心地良い空間なので普通に旅行で利用する分には申し分ないと思います。

 
花蓮 Elysees House欐舍 公式サイト

 
 

2017年4月8日(土) 台東 途中青年旅館 / On My Way Taitung

 
We Come Hostelと協力関係にある途中青年旅館。オーナー、スタッフがとても明るくて室内は常に楽しい雰囲気です。台東でも集客は全てゲストハウスにおんぶに抱っこで、お好み焼き作りを手伝ってくれただけでなく味噌汁も出してくれました。会場の雰囲気も完全にスタッフに助けられ明るく楽しく終えることが出来ました。

こちらでは理学療法士を目指してるLUCKY TAPESやThe fin.、台湾のバンドではSunset Rollercoasterが好きな学生カップルが参加されてました。音楽の話以外に猫背を指摘され、実演指導付きでどういう運動が改善に効果的かを教えてもらいました(笑)。

 
途中青年旅館 公式サイト

 
 

2017年4月9日(日) 台南 一點點旅舍 (One Dot Dot House)

 
気さくなオーナーが合言葉のように常に「開心就好(楽しければそれで良いよ)」と言って準備を手伝ってくれただけでなく、果物を買ってくれたり、翌日車で駅まで送ってくれたりと大変お世話になりました。

ホステル自体は決して今風のおしゃれなものではないですが、必要最低限揃っていますし特に台所のスペースが広く、すぐ近くにスーパー・雑貨店等がありイベントがとてもやりやすかったです。

昨年台南でイベントをした際出演してくれたゲシュタルト乙女のVo.G Mikanさんに急遽通訳をお願いしました。

 
唯一にして最大のネックは言葉が中国語のみという点です。逆に日本人の利用者はかなり少ないようですので、そういう所を希望されてる方にはおすすめだと思います。

 
一點點旅舍 公式Facebookページ

 

ゲシュタルト乙女
現在は新作製作中とのこと。ユニバーサルミュージックより配信されてますので新音源まではこちらを聴いて待ちましょう。

 
 

2017年4月15日(土) 台中 N joy Taichung 台中

 
元々ライブを含む相当数のイベントをされてるようで、セッティングから後片付け、その間Q&A、クイズ等も含め司会までしていただきとてもスムーズに進行出来ました。

イベントを開催する場合は最大2時間まで、チケット代は本来150~200元で設定、そして参加費の30%を会場使用料とするそうです。

セッティングや準備、司会、後片付けと段取り良くしてくれ、スーパーまでバイクに乗せてもらい食材の買い出しまで付き合ってもらってますので30%も十分妥当と思われます。

 
またこちらにはマイクや大きめのアンプも二つあるそうなので今回の中では一番ライブイベントを開催しやすい場所だと思います。

そして今回のツアーで初の現役バンドマンにご参加いただきました。バンド名は、「サバの野心 鹹魚的野心」で日本でライブをするのが目標と言っていたのでぜひイベンターの方誘ってあげて下さい!

 
こちらではQ&Aがとても活発で、あなたにとってインディーズの定義とは?どうしてバンドマンは武道館でライブをやりたがるのか?等込み入ったものも多かったです。

あとはマスコット的存在の柴犬ハスキーがかわいいですね笑。

 
N joy Taichung 台中 公式Facebookページ


N joy Taichung 台中のマスコット的存在 ハスキー(柴犬)

 
 

2017年4月16(日) 台北 北門臥客青年旅舍 We Come Hostel

 
ツアーファイナルは実際に住んでいるという意味でもホームであるWe Come Hostel(笑)。広い共有スペースはイベントを行うのにぴったりです。

初の東京のライブハウス(下北沢Shelter)に行った事があると言う参加者がいらっしゃいました。

 
北門臥客青年旅舍 公式サイト

 
 

下記ゲストハウスに特化したまとめ記事を書いています。上述したように宣伝するためでもあるのですが(笑)、本当にどこのゲストハウスも良い所だったので書いてることに嘘偽りはありません。ぜひ台湾旅行の宿選びとしても参考にしていただければ幸いです。

https://matome.naver.jp/m/odai/2149289490220855201?page=1

 

終わりに

 
今回のツアーで改めて台湾のみなさんの暖かさを再認識し、本当に楽しい時間を過ごす事が出来ました。ライブハウスではないのでアンプラグド中心のライブが可能なアーティストに限られてしまいますが、こういう形でもツアーが出来るということ、台湾(海外)でライブを行いたいと考えている方の行動するきっかけとなれればこれほど嬉しいことはありません。

 


杉本貴芳さん。ツアーお疲れ様でした!




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