2018-02-19 21:00

第二十二食『錦糸町・アジアカレーハウス』| 食漂譚~バンドマン東京グルメ紀行~


第二十二食「錦糸町・アジアカレーハウス」

 

text & photo by 淋梅独(Super Ganbari Goal Keepers/蜃気楼)

 

皆さんは、今までの人生を振り返ってみて、一番美味しかった食べ物は何かすぐ思い出せるだろうか。改めてこう聞かれると、ちょっと考え込んでしまうのが普通ではないだろうか。

 
話は変わるが、僕は映画が大好きなので、自分の人生におけるベスト5作品は聞かれたらすぐに答えられるように準備している。映画が好きと言っているにも関わらず、「どんな作品が好きなの?」と質問されて「いやージャンル問わずなんでも好きですよー」みたいな回答ほどつまらない返しはないと思うし、具体的に答えたほうが自己紹介代わりにもなると思うからだ。

 
ちなみに一応こんな感じです。

淋梅独の人生ベスト5映画

1. 3-4×10月(北野武)
2. 死の棘(小栗康平)
3. ガメラ2 レギオン襲来(金子修介、樋口真嗣)
4. その土曜日、7時58分(シドニー・ルメット)
5. 道(フェデリコ=フェリーニ)

 
ちなみに、Twitterでたまに盛り上がる「#あなたの好きなアルバム9枚を挙げよ」「#今年の映画ベスト10」みたいなハッシュタグ、面白くて好きです

 

ただ、食べ物となると、物心ついたもっと幼いときから振り返らなければいけないので、難しい。・・・さんざん考えた末、こんな感じでしょうか。

1位. 寿し義(富山県立山町)の握り寿司(店主は既に故人)
2位. 伊東りんご園(富山県魚津市)のリンゴ
3位. 楓神(埼玉県伊奈町)初代店長の豚骨ラーメン
4位. ブーランジェリーホセット(西所沢)の朝一番の食パン
5位. 藤の家(富山市)のクリームチーズあん鯛焼き

 

どうしても故郷の味が入り込むのは許して欲しい。

しかし2017年、この順位を揺るがすような衝撃的な食べ物に今年出会ってしまった。以前から、対バンしたことのある「THIS IS JAPAN」のドラマー・かわむらさんや、ここ毎年スターウォーズ新年会を一緒にやっている「きがわくんと27」の小林さんがTwitterで、「錦糸町のここは本当にウマイ!!」と、週に何度も通って写真を連投するくらいハマっているカレー屋がずっと気になっていた。そこまで彼らの推しツイートが自分のタイムラインを席巻するのなら、もう実際に行ってみるしかないと思った。

 


THIS IS JAPAN『TAXI DRIVER』

 


きがわ君と27

 

錦糸町は乗り換えで降りたことやテレビの街頭インタビューで見たことはよくあるが、目的を持って街を散策するのは初めてだ。

仕事終わりに春日部から電車で向かった。昭和後期の新宿はこんな感じだったんだろうなと思わせる、八王子にも似た地方都市感があって、なんだか懐かしい気分。錦糸町の名物「楽天地」という、スパや飲食店、映画館が寄せ集まっているおじさん向けの複合ビル(かなり昔からあるらしい)の赤いネオンが、さながら映画「スカーフェイス」のラストシーンのオブジェ、「WORLD IS YOURS」みたいだ。

 

 


映画「スカーフェイス」劇場予告

 

アジアカレーハウスを目指しマルイの裏側に行くと、ここはアメリカのストリートか、はたまた香港の裏路地かというほど、色んな国の人がたむろったりキャッチをしていて、自分が一体どこの国にいるのか、どの時代にいるのか混乱してくるようだ。

 

 

行列ができていた。20分ほど待って入る。

 

 

 

店内にはカラフルなスパイスの袋が天井高く積まれており、座席はカウンターに数席しかなく、奥のトイレに行くために座っている人の後ろを通るのがやっとなくらい狭い。カウンターテーブルに固定されたタブレットからはyoutubeでイスラム圏の現地のニュースが絶えず流れており、店主はそれをラジオ音代わりに仕事しているようだ。

 

 

メニューはカレーセット1300円のみの一択。割とすぐに料理が提供された。

初めて行ったのは金曜日のビリヤニの日。出てきたのは初めて見る色の、灰色に炊き上がったビリヤニと、野菜の酢漬け、そしてチキンカレー。ビリヤニは骨ごとぶった切った羊肉が主な具だ。

 

 

一口食べる。…なんだこの衝撃体験は。
灰色のビリヤニは野菜の酢漬けと混ぜて食べても料理として相当ハイレベルな味だけど、カレーと混ぜるともう本当に天国だ。そのチキンカレーは骨ごと煮込んであり、スパイスの複合的でいてそれぞれの個性もちゃんと引き出した香り、具材の火の通し方(つまりはちょうどよい固さかつ旨みが最も引き出された状態)、食感、お米と合わさったときのバランス、目の前の皿の全ての調和がシンクロ率100%。完全同調。エヴァも鉄鋼闘機ガイラも思い通りに動く。

X軸、Y軸、Z軸、こんなにも立体的に味を構築できる人が世の中にいるのか。ありえない。一流ホテルや、三つ星レストランじゃないところでも、こんな料理が味わえるんだ…。天才とは本当にいるんだな。シェフは奥で涼しい顔をしている。

…あまりにも美味しく、翌週も行ってしまった。この日はフィッシュ&野菜カレー、ダル(豆)カレースープ、チキンカレーの3点セットだった。もちろんこの日も「どうしてこんな味が出せるんだ…」とひたすら感動しながら最後のお米一粒、最後のカレソース一滴まで味を噛み締めた。

 

 

詳しい営業時間は食べログや他のサイトで参照してほしいが、夜21時位に行った感じでは月~木曜日はわりかし空いておりすぐ席に着けた。金曜のビリヤニの日は20分くらい並んだ。自分の中ではホントに人生ベスト級に美味しく、感動した!絶対に一度食べに行ってみて欲しい!クスリより、風俗より、ギャンブルより、コミケよりここに行くべし!(ライブは来てね)

 

 

今年も平和に、美味しい店を紹介し続けられたらなあと思うが、やっぱり、昨年の国際・国内情勢をみていると、楽しいことだけ考えているわけにはいかないと思わざるを得ない。
ちょうど一年前、2017年が始まる時の記事にも似たようなことを書いたけど、やっぱりまたこうなってしまった。

 

こんなことがあった。先日、年末年始を富山で過ごした。親戚の葬儀など慌ただしいこともあったが、つかの間の帰省を旧友と過ごすかけがえのない時間にもあてられた(今後はさらに結婚したり子供が出来たりする友人が増えて、会えなくなりそうなので)。

 
恒例となっている同級生同士の麻雀の会話の中で、自分が2017年に韓国に旅行したことが話題になった時、親友の一人が「俺、韓国人嫌いだからねー」と、結構はっきりと言った。僕は別にいい子ぶるわけではないが、「国で一括りに人を判断するのは、差別だよ」と言った。

ちなみに、彼は20代の内に両親を二人とも亡くし、苦学の末に医学生になった大変な苦労人だ。「廉がそう考えるのも自由だし、俺が他の国の人をどんな風に考えるのも、自由じゃない?」というようなニュアンスのことを彼は言った。

 
…すまんがそれは絶対に違う。「差別する自由」などあってはいけないし、あり得ないんだ。なぜなら…

 
「廉、お前の番だよ」
「あ、スマン、五萬を切るわ」

 
心の中で言いかけて、ゲームの最中だし他に二人いるのもある手前(麻雀は四人でやるゲームなので)、マジレスしての議論はその場では避けた。

 
話を元に戻すと、「差別していい自由」という言葉は、ロジック的にそもそもおかしいのだ。なぜなら、「差別していい自由」を理由に差別が行われたら、差別された側が必ず不自由を被るからだ。その時点で、自由などありえなくなってしまう。だって立場が逆転したら自分だって差別されるよ?なぜ自分が常に立場が上だと言い切れる?そもそも人種に優劣も上も下もない。

去年のヒット映画「ドリーム」でも描かれたように、60年代のアメリカ社会では黒人は白人と同じトイレを使えなかったり、公共バスの座席も分離されていた。それは明らかに不自由を強いているんじゃないのか。

 


映画『ドリーム』予告

 

もちろん「○○という人種がなんとなくキライ」という軽いプチヘイト意識がエスカレートして、ナチスのジェノサイドや、我が国で起きた関東大震災時の朝鮮人虐殺のような最悪の事態に繋がることを僕は危惧してもいる。大げさかもしれないが人は必ず間違いを犯す。

だから、プチだろうがトマトだろうが、相手を国や出自でひとくくりにするようなヘイトはあってはならない。

その親友とは以前にも死刑や防衛のことで意見が分かれたことがあった。その日は途中で話が止まってしまったけれど、次はゆっくり対話して、どうしていい大人でしかも公共の福祉に尽くす医師でもある彼が臆面もなく「韓国人は嫌い」と言えてしまうのか、その背景も含めてお互いの考えをじっくり聞き、咀嚼したいと思う。

 
まあ上記の話は極私的な出来事だったけれども、去年は「一体いつになれば僕たちは理性的になるのだろう」と感じることが本当に多かった。特に、北朝鮮の幼稚な挑発にムキになって、過剰な危機意識と誤った防衛認識を抱いている人たち(政治家もメディアもそう)。子どもの駄々に本気になってどうするんだ。

サンフランシスコの慰安婦像問題で浮き彫りになった、明らかに歴史的事実なのに南京虐殺という自国の過ちを「あれは無かった」と強情に言い張る醜い人々の多さ。あげく、サンフランシスコ議会の市議に「shame on you(恥を知りなさい)」と非難される始末。もう、本当に情けない。

 
唯一感じた希望は、また映画の話になるがハリウッドの有名プロデューサーにセクハラを受けた女優たちが「Me too」というハッシュタグを合言葉に立ち上がり、告発をしたことや、国内では伊藤詩織さんが自己のレイプを発表し顔出しで真相究明に乗り出したことだ。ただし、被害を受けた人頼みではいけない。告発者の権利を大いに尊重し、立場の弱い人やマイノリティが地域で、学校で、職場でさらに声を上げやすい社会に僕たちがしていかないと、きっといつまでも同じ間違いを繰り返すと思う。

 
いい年にしましょう。スキマ風が常に吹いているような自分の孤独な婚活生活にも終止符を打ちたい。
読者のみなさん今年もこの連載と、バンド(super ganbari goal keepersと蜃気楼)をよろしくお願いします。

 

♪今月の一曲 「TOUGH BOY」TOM☆CAT

 
昨年末初めてこの曲を知った。それ以来毎日何度も聴いている。「僕たちは80年代に生きている 80年代を生きているんだ」という歌詞がホント泣ける。

 
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次回は「蒲田・明平製菓の人形焼き」をお送りします。

 
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コラム『食漂譚~バンドマン東京グルメ紀行~』は、毎月15日をめどに更新する予定です。

 



 
淋梅独(りん・ばいどく)

富山県出身。Super ganbari goal keepers、蜃気楼の二つのバンドで活動中。
学生時代はドキュメンタリー監督・森達也の元で4年間メディア・リテラシーを学ぶ。
趣味はドラマ「相棒」鑑賞。
https://twitter.com/officeRBD

 

蜃気楼

2017年本格活動開始。MV「童謡」を公開中。
蜃気楼 公式サイト
蜃気楼 SOUNDCLOUD



 
 

Super Ganbari Goal Keepers(スーパーガンバリゴールキーパーズ)

2011年に結成。略称SGGKとして都内で活動中。
アルバム「Cang Gang Pops(宦官ポップス)」が流通盤として、各レコード店で販売中。
https://twitter.com/sggk_ganbari

 



SGGK代表曲「植物人間系男子」PV





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