2017-06-18 21:00

毛利泰士のマニピュレーターが知っておいて損しない話 | 第6回 システム編_接続の巻

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びくぅ!!!押してないのになぜ音が??!!! あ、映像かぁ~。皆様こんばんは、Zelig works 毛利泰士です。

 
今日は槇原敬之さんのツアー中、八戸からこのお便りを書いてます。如何お過ごしでしょうか?八戸のイカやサバを前にお酒を我慢するのはなかなかなものです。酒を我慢する理由は後述いたします。

 
さぁ、今回から一気に専門的になりますが、四の五の言わずにロックミー!
開講です。

 
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前回は、図を作成するのに時間がかかりすぎて、本題に入ることができませんでした。

では、いよいよシステムの解説に入りましょう。僕の機材でのやり方で説明しますね。もう一度、図を貼っておきます。

 

 

今回はまず、僕のシステムの接続と本番時の音声の流れを説明しますね。

 
まず、音を出す前に、デジタル機器が多いのでクロックジェネレーターを紹介します。

クロックジェネレーターとは、44.1kHzとか48kHz、96kHzってハイレゾだとかで目にしたことはあると思いますが、基準になるワードクロックを発生して各種機種に整合性を持たせるというか、なんていうの? 組体操の扇の真ん中の人みたいなやつですよ。

 
で、Antelope ORION32です。

以前は、ずっとAardvarkのAardSyncを使っていました。
正直いってクロックによる音の違いに踏み込みたくなかったのですが、ワードクロックを数珠つなぎにすると、トラブルのときに問題箇所を発見するのに困るので、一括分岐するためにクロックジェネレーターは必要だと考え導入していました。

2015年に、長年システムを変更していないので、大きくシステムは変えずにブラッシュアップしようと思い、これを導入しました。いくつかの機種を視聴して、僕の機材と好みにはコイツが合ってました。

ORION32のワードクロックアウトは4つ付いており、そこから、DM1000、Traveler、828とワードクロックを送っています。

 

次は、マックです。MacMini 2012 Quad2台 。
2台のMacMiniには、双方ともDigitalPerformerがインストールされており、同じ本番用のファイルを開いています。

これが本番時のDijitalPerformerの画面です。

 

 

Macは、片方が、マスター(メイン)。常に音が出る側です。もう片方が、スレーブ(サブ)。マスターがトラブったときや、本番中、突発的に演奏の尺が変更されたときに合わせるのに使用します。

 
マスターにつながっているオーディオインターフェース(以後インタフェース)は、

 MOTU Traveler mk3 /Firewire 接続。

ここから、ADAT Optical2系統、計16chが出力されます。

 
これでわかる方にはわかると思いますが、僕のシステムは、サンプリング周波数48kで動いてます。

昨年から、bitは極力32bit float にしてます。(32bitは編曲、録音してるとき本当にいいな、と思います)。最近96kのファイルも増えてきましたが、デジタル端子的に、96kは手を出しにくいのと、実際96kでファイルのコピー、バックアップが続くときの待ち時間を考えると、ライブにおいて96kはまだ現実的ではないなと思っているので、まず48kにダウンコンバートしてから、作業に取りかかることにしています(その辺りはまた今度)。

MADI、DANTE、AES/EBUなどのデジタル規格が、もっとインターフェースに普及してくれれば考えるのですが…

 

スレーブ側は、 

 MOTU 828 mk3 Hybrid とMOTU UltraLite mk3 Hybrid
 どちらもUSB接続。

 
こちらは、アナログアウトで、両機から8chずつ、計16ch出力されています。基本、マスター、スレーブ両方、おなじ出力数が欲しかったため2台使用しておりますが、この3台のうちのどれかが壊れたときのための機材のバックアップも兼ねてます

先々、システム的なことがクリアできれば、1台で出力可能なMOTU AVB 24oなどいいな、と狙ってます。

 

その出力されたオーディオをまとめるのが、

 YAMAHA DM1000 VCMです。

DM1000は2003年から使い続けており、僕にとっては大事なシステムの心臓部でもあり、音の特徴になっていると思います。昨年、VCMバージョンを追加購入しました。以前のVersion1は予備として、常に準備してあります。

DM1000は48インプットあります。マスターからのADAT16chが、ADATオプションカードに入力され、チャンネル1-16に立ち上げてます。DM1000は、フェーダー16本なのでキリがいいのです。

スレーブからのアナログ16chは、Mic/Lineインプット(これも16chついてます)され、チャンネル17-32に立ち上げれば、フェーダーを表裏切り替えることで、マスター、スレーブ、まったく同じ並びで立ち上げることができて便利です。

 

第2回でアウトプットのことにふれましたが、僕の場合はこの機材の仕様により、まずDAW上で16chに割り振ってアウトプットして、DM1000上に立ち上げた後、さらに現場に合わせたチャンネル数にバスアサインし、PAに出力しています。

こうすることで、基本的な自分のルールでのフェーダーの並びを常に維持することができるからです。視認ですぐにどこにどんな音が立ち上がってるかわかると対応も速くなるものです。

 
僕の16chの割り振りはこんな感じです。アーティストにより、アレンジの方向は色々違いますが、この中で役割を決めて割り振ることが多いです。

 

・01-02 リズム
・03-04 リズム or 楽器(シンセシーケンス、SEなど)
・05-06 楽器(パッドやオルガン、コード感のあるもの)
・07-08 楽器(ベルとかブラスとかラインのあるシンセ等)
・09-10 楽器(ストリングスなど特徴になる大事なパート)
・11-12 コーラス
・13 ボーカル(本番未使用)
・14 ダブルボーカル
・15 クリック or キック
・16 クリック

 

YAMAHAのデジタルミキサー、DMシリーズ、02R,01Vはすべて、内部バスは8BUS、8AUXあるので、十分なアサインが可能です。またダイレクトアウトの融通もきくので、様々な出力方法を考えることができると思います。

 
僕は以前説明したように、上記の16chを現場に合わせてBUS/AUX アサインして、アウトプットを10ch以内にまとめます。

PAへのアウトプットは、DM1000には、キャノンで12OUTあります。そこにBUS/AUX アウトプットをアサインして出力します。

 

また図には書きませんでしたが、昨年からはもうひとつアウトプット方法を用意しました。

先にあげたORION 32は、32chAD/DAコンバーター(アナログ⇄デジタルの双方向コンバーター)でもあるのです。DM1000のADATオプションカードのアウトプットに、BUS/AUXをアサインして、DM1000からORION32にADAT接続でDAすることで、ORION32から16chアウトプットすることができます。

これにより、クロックと合わせて、少し古かった機材の音が今どきに対応しつつもガッツは失わないようにすることができて満足しております。

 
これで、PAにアウトプットできました。細かい設定などは、また実践篇で解説しようと思います。

 

この他にも、DM1000から、リハーサル時の確認用にモニタースピーカーFOSTEX NF-4Aにコントロールルームアウトを出力。

PAには送らずに自分でだけシーケンスの音をモニターするためのステレオアウトと、自分確認用のクリックを、Mackie 1202Vlz3に出力しております。

そう、この Mackie 1202Vlz3 には、F.O.H(お客さんが聞く音)とモニター(演奏者が聞く音)からの2ミックスも返してもらいます。リハーサル、本番時は常に、このミキサーの音を聴いていることになります(実際はさらにこのミキサーからアウトして、ヘッドフォンアンプからイヤーモニターで聴いています)。

 

ちょっと文章だとややこしくなりますが、これが、僕のセットの接続になります。
これでいつでもセッッティングみんなに手伝ってもらえますね!!!

 

さぁ、接続ができたところで、次回いよいよ!!!
みんなが知りたかったアレ。 

 
メイン、サブ2台の同期について、です!!!
鈍ミス一兎!

 

余談。

 
それにしましてもですね、前回カラダが大事って書いたんですけどね。
最近ほんとそう思って。
ついにダイエットしてますよ!!!!
もうここに書いたら引き返せない。
次写真とるときは普通の体型だ!!!

それではみなさま水分補給はわすれずに。

 

(このコラムは、毛利氏のブログ『夢が毛利毛利』に連載されている「マニピュレーターが知っておいて損しない話」をご本人が加筆したものです)

 

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毛利泰士_2016

 
毛利泰士(もうりやすし)

1974年3月10日 東京都出身 B型
プロデューサー/アレンジャー/マニピュレーター/シンセサイザープログラマー/マルチミュージシャン
 
幼少からバイオリンを習い、その後わかりやすくロックに染まり、ドラム、ベース、ギターを中学からはじめる。
高校から打楽器を有賀誠門氏に師事。練習不足がたたり1浪して洗足学園短期大学打楽器科にすべりこむ。
卒業後、たまたま見学したレコーディングで初めてみたサンプラーに衝撃を受け、Macを購入。
アレンジャー門倉聡の元で、シンセサイザープログラマーとしてキャリアをスタート。
1999年オフィス・インテンツィオに所属後「坂本龍一」のアシスタントを歴任するとともに、
数多くのアーティストから、シンセサイザープログラマー、マニピュレーターとして信頼を得ている。

上記の経験が生かされた、生演奏とシンセサイザーとコーラスを生かすアレンジには定評がある。
自身のピアノトリオロックバンド「ラクライ」ではベーシストとして活動。
森山公一とのプロデュースユニット「Zelig works」では、詞曲の世界観から音像までトータルにコーディネートするなど、自身のスタジオ「Buono! Studio」を拠点にして幅広い活動をしている。
プロフィールページ
Zelig works

 
主な参加アーティスト
「槇原敬之」「福山雅治」「藤井フミヤ」「サディスティック・ミカ・バンド」「X JAPAN」「大友康平」「松たか子」「坂本真綾」「絢香」「JUJU」「星野源」など多数。





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