第四食『高円寺・馬力の馬力とうふ』| 食漂譚~バンドマン東京グルメ紀行~
第四食『高円寺・馬力の馬力とうふ』
text & photo by 淋梅毒(Super Ganbari Goal Keepers)
僕は上京した約9年位前からライブハウスに行ったり、バンド活動をしたりと、ロック音楽にかかわる環境に身を置いているが、音楽でつながった人々で一番古いのは、自分のバンドメンバーのような同世代(20代後半~30代前半)ではない。高円寺で主に活動する、オジさん・オバさんバンドマン達だ。
彼らとつながる直接のきっかけになった出会いは2006年にさかのぼるが、それはまた今度の回に回す。赤羽か十条を舞台にしようと思う。
東高円寺UFOクラブによく出演していた、スカルボというバンドがいる。現在では大久保水族館や三軒茶屋HEAVEN’S DOORに出ることの方が多くなってしまったが、ふとしたきっかけから彼らのライブを07年から良く観に行くようになり、PVを作らせてもらったり、1st音源のジャケットの絵を描いたりなどした。終演後近くのリトルアジアや、中華料理屋(現在は閉店、店名は忘れてしまった)で小規模な打上げに参加したりなどした。
「スカルボ」
年末になると、スカルボのボーカル&ギター、百川さんから忘年会の誘いが来る。場所は決まって高円寺のガード下にある大衆居酒屋・馬力だ。集まりには中央線界隈に住む中年ロッカーたちがワイワイと集まってくる(心は全然若い)。
馬力はそこそこ人数も入るし、食事もとても美味しい。ここの名物が「馬力とうふ」と「馬力ハイ」だ。まるでセットかのように皆それらを注文する。
久しぶりに食べたら、かなり強烈な味だった。
今ではライブハウスに出ていてもSGGKメンバーより全然若いバンドマン達と競演することの方が多いが、この恒例の忘年会では毎回僕は最年少だ。皆サブカルに詳しく、映画や音楽、そして中央線界隈の昔話を、いろいろ教えてくれる。この集まりに関しては自分は質問したり聞き役になる方が全然楽しい。
最近出来た渋谷の馬力で焼き鳥を焼いている所を見かけたので、改めて高円寺店で聞いてみると異動になったそうだ。
忘年会には、例えばバンドブームのころに目茶苦茶稼いでいたとか、現在スタジオミュージシャンをやっているとか、そのような音楽を本業にして暮らしている人はいない。皆、普段は仕事をしながら、マイペースでバンド活動を続けている、それぞれ面白いところを持つ人々だ。
都内で長年暮らしていたが、急に思い立って山梨県・上野原の一軒家を借りて家庭菜園をやって暮らし、2年後再び都内に戻って来た者。数年ごとに何度も結婚・離婚を繰り返す者。OLをやりながら、週末には舞踏とコラボしてエレキギターの即興演奏をする者。IT雑誌のライターとして、国内各地を取材している者。愛車のバイク・ボルドールでツーリングをし、丁寧な写真付きのブログを書く者。西荻でバーをやりながら、たまにドラムを叩く者。球体関節人形を作る者。
本当に色々な人がいるが、皆、優しく、穏やかなバンドマン達だ。年下の自分に対して居丈高になる人もいなければ、酔って暴れる人や、大声をあげる人、ライブで人の頭の上を転げまわるような人も、一人もいない。繰り返すが、穏やかな人ばかりだ。
2012年の春、大学を卒業して就職のために静岡に行く僕の送別会を、彼らが開いてくれた。香川県の名物ふりかけや泡の出る入浴剤、ハンカチなど、色々な贈り物もありがたかったが、何より10歳以上も年下の自分のためにわざわざ皆が集まってくれたことが嬉しかった。
結局、数か月後に再び関東に戻って来たので、彼らとのつながりは切れはしなかった。ただし、自分のバンド活動の比重が大きくなったことや荻窪~高円寺エリアから遠い春日部に住んでいることもあって、中々彼らのライブは観に行けないでいる。それがちょっと淋しいのである。
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次回は、「明大前・もみじ屋の二郎系ラーメン」をお送りします。
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執筆者のプロフィール 2011年に結成。略称SGGKとして都内で活動中。 現在OTOTOYで両A面シングル「レコードコレクターズ / 世界は俺を中心に終わっている」の配信と、特設サイト「SGGKメンバーが影響を受けた50枚」を公開している。 twitter: SGGK代表曲「植物人間系男子」PV |
ライブスケジュールHELLO AND ROLL企画 出演:
SGGKオニギリジョー企画 出演: |
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