2015-08-11 20:00

第一食『巣鴨新田・麺たつの正油ラーメン』| 食漂譚~バンドマン東京グルメ紀行~

sugamo-mentatsu

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Super Ganbari Goal Keepersのドラマーにして執筆家の淋梅毒さんにコラム『食漂譚~バンドマン東京グルメ紀行~』を連載していただくことになりました。記念すべき連載第1回目は、巣鴨新田・麺たつの正油ラーメンです。

 

第一食「巣鴨新田・麺たつの正油ラーメン」

text & photo by 淋梅毒(Super Ganbari Goal Keepers)

 
都内に無数にある飲食店。決して行列店でも、メディアにもてはやされる店でもないが、大切にしている自分だけの店がある。皆さんの中にもそのような方は多いのではないだろうか。この連載では、そういった自分だけの、かつリーズナブルで美味しい小規模な店を紹介していこうと思っている。

僕は上京して約10年になる。僕の故郷の富山は海の幸も山の幸もとかく新鮮で、ド田舎ではあるけれど食文化の面では豊かな子ども時代を過ごせた。しかし、東京に来て初めて体験する食文化も多かった。例えば、つけ麺やホルモン・やきとんの文化。もしくは、中華料理・インド料理・タイ料理など各国料理屋が都内のいたるところにあるが、店員が大体はその国出身の人(中華料理屋だと中国人)であるとかだ。

一人暮らしでは外食する機会も多くなるので自然と店を探すようになる。ただし、人がわんさか賑わっているようなところではなくて、もう少し落ち着けて、モノを食べた後の余韻に浸る時間を許してくれるような、良い意味で「余白」のあるような店だ。ここまで書いていて思い出した。既にメジャーなグルメ漫画になってしまったけれど、『孤独のグルメ』に登場する店にはそのようなところが多い。なんというかその漫画の主人公・五郎のようにぶつぶつ考えながら、食べに行くついでに小旅行感を味わいたい。東京は狭いけども、一駅一駅ごとに意外と町の表情が違うので、道中も楽しめる。

 
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前置きが長くなった。初回は豊島区の「麺たつ」というラーメン店を取り上げたい。
豊島区とはいってもラーメン激戦区池袋駅からは遠く離れた、都電巣鴨新田駅が最寄りの店だ。山手線からだと、これまたプチ激戦区の大塚駅から徒歩約10分。「激戦」などというけたたましい言葉からは距離を置くように住宅街にひっそりと佇み、夕暮れ時、白地の看板にぼうっと「麺たつ」の文字が浮かぶ。
カウンター9席の小さな店だ。男性店主と、おそらく母親であろうおばちゃんが二人で切り盛りしている。このような「息子と母親」スタイルのラーメン店はそこそこ見かける気がする。同じく豊島区池袋西口の「我家(うち)」という店とか。武骨で調理に専念する息子と、それを補うように明るく愛想のよい母親の組み合わせという、典型例のような店だ。

まず、この店は基本メニューが正油ラーメンと塩ラーメンの二種類だけなのだが、それぞれ630円と650円。都内の平均的な相場より、割と安い。安いからと言って適当なラーメンというわけではなく、れっきとした鶏ガラスタンダードの一杯だ。具はデフォルトでチャーシュー、ネギ、水菜、のり、メンマといった具合で、優しくスルスル入っていくちぢれ麺(最近はパツパツ系の固い細麺がトレンドな一方)、鶏油の甘みが合わさる。
いわゆる「蔦(巣鴨)」「やまぐち(高田馬場)」のような「超絶品!恐れ入りました!」系のラーメンではなく、どちらかというと安心感がある心のよりどころのような一杯だ。

大学時代は上池袋という巣鴨高校の裏あたりの地域に住んでいたので、高校横の坂を下った先にあるこの店にはよく行った。軽音サークルの後輩や友人を連れて行っても、皆満足していたようだった。

カウンターのみの小さな店にかかわらず、食べ終わってすぐ出ていかなければいけないムードは皆無だ。静かにじっくりと、時間を過ごしても構わない。

 
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子ども時代、ずっと母親の作った料理を食べて育った。その息子が、料理の修行をし、「母さん、俺店やるから。手伝って。」と言ってきた。息子の作る一杯は、自分の作ってきた家庭の味ではなく、プロの味付けだ。厨房での動きも、実家のキッチンで私が悪戦苦闘していた様子とはまるで違う、テキパキとした手際の良さだ。

幼かった息子が成長し、人さまに食事を提供したい。だから手を貸して欲しいと言う。

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母はどういう気持ちだったんだろう。
故郷を離れて久しい僕は、ふと考えた。

 

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次回は、「代田橋・スリーコンカフェのサンドイッチ」をお送りします。

 

執筆者のプロフィール

 
umezawa

 
淋梅毒(りん・ばいどく)
1986年富山県生まれ。Super Ganbari Goal Keepersのドラマーとして活動中。
学生時代はドキュメンタリー監督・森達也の元で4年間メディア・リテラシーを学ぶ。
https://twitter.com/officeRBD

 
SGGK

 
Super Ganbari Goal Keepers(スーパーガンバリゴールキーパーズ)

2011年に結成。略称SGGKとして都内で活動中。
アルバム「Cang Gang Pops(宦官ポップス)」が流通盤として、各レコード店で販売中。草食系にすら食われてしまう、植物系ロックバンドとして、音楽雑誌「SGGKマガジン」を作ったり、SODクリエイトの人気AV「しゃぶりながらシリーズ」に楽曲が採用されたりと、独自の活動を続けている。

現在OTOTOYで両A面シングル「レコードコレクターズ / 世界は俺を中心に終わっている」の配信と、特設サイト「SGGKメンバーが影響を受けた50枚」を公開している。

 
SGGK 公式サイト:
http://sggkeep.flavors.me/

twitter:
https://twitter.com/sggk_ganbari



SGGK代表曲「植物人間系男子」PV

 

ライブスケジュール

SGGKショウヘイマン企画
ブラックナードフェス

日時:8月29日(土) open14:00/start14:30
会場:上野ドゥービーズスタジオ
料金:1000円(1d込)

出演:
Super Ganbari Goal Keepers
山口やまぐと地獄少年
高野京介
小川直人
入江陽
穂高亜希子
momarmots
にゃにゃんがプー
蜃気楼(淋梅毒バンド)
アーバンダンス
坂口諒之介

 
サラバ箱舟
9月6日(日) 18時半開演
秋葉原 CLUB GOODMAN
予約1800円+d

出演:
Super Ganbari Goal Keepers
はなし
団欒
まっくら学芸会 (from山形)
てあしくちびる

 
冷牟田敬&SGGKショウヘイマン共同企画
日時:9月27日(日)昼 start12:30
会場:新宿LOFT BARスペース
料金:前売り1,500円

出演:
冷牟田敬
Super Ganbari Goal Keepers
Weekday Sleepers
Tempezt





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