2016-10-15 21:00

毛利泰士のマニピュレーターが知っておいて損しない話 | 第3回 整理するっていつからやればいいんだろう

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夏が過ぎ、秋が来たんですか、そうですか。
僕は3カ月ほぼ室内にしかいませんでした。。。

 

すっかり連載も止まっていましたが、だってしょうがないじゃない。夏の時期マニピュレーターが忙しくなかったら仕事ないも同然じゃないですか…と、職業マニピュレーターあるあるを一つ披露したところで、皆様ご無沙汰しております。

あなたの音楽の悩み、それなりに解決します。
Zelig worksの毛利泰士です。

 
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さぁ止まっていたからって、気にするな。君がマニピュレーターであり続ける限り、スペースキーを押せばいつでも音楽の続きが聴けるんだ(注:バンドメンバーとの関係によってはそうならないこともあります)。

よし!
前回までの事などみんな忘れてると思うけど、いきなり続きにすすめるからな!

 
今回から実践編!!!
マニピュレーター的DAWにおける、トラック作りです。

 
ライブって、当たり前だけど何曲もやるじゃないですか。てことは、マニピュレーターは1回のライブで何曲も再生するわけです。

前回で回線について説明しました。
1つの曲で、リズムループ、効果音、シンセ、ギター、弦、コーラス、沢山の音がマニピュレーターから再生される事があります。リズムループといっても様々な音の組み合わせだったり、シンセも沢山のパートが重なっていたりします。という事は、1曲で20トラックとか使うのはザラなわけです(100トラックとかもあります)。

 
それが20曲あったとしたら…少なくても400トラック……

 

毛利泰士のマニピュレーターが知っておいて損しない話03-400トラック

 

いや、キツイです。
そんなの無理です。
今年いよいよ老眼が始まった?!僕には、もう何が何だかです。

 
というわけで、ここで2つ選択肢が生じます。

① 1曲ずつ別々のファイルにする。

② トラックをまとめて、全曲でもわかりやすくする。

この2つです。

 
まず①から考えます。

1曲ごとにファイルを閉じて次の曲のファイルを開くとすると、次の曲に行くまでちょっと時間かかりすぎて現実的ではありません。拍手が収まってシーン…とした時間ができてしまいみんな冷めちゃいますね…

DAWによっては、複数の曲を開いておいて選択した曲を再生できるものもあります。「LOGIC」や「STUDIO ONE」などです。この場合、開いてる曲の分コンピューターのメモリーを使用するので、開きすぎには注意です。MCごとに区切るなど工夫すればいいでしょう。こうすれば楽曲ごとのファイルで編集、管理できるのでだいぶ楽だと思います。

 
もしくは僕が用いている方法、「Digital Performer」(以下DP)を使うです。これに関しては、第1回で解説してるので読んでみてください。

 

次に②「トラックをまとめる」です。

これにもいくつか方法がありますが、「トラックをまとめる」という事に主眼をおくならば、前回のアウトプット回線の話にさかのぼります。PAに送る回線、基本で「リズム」「音程のあるもの」「声」ステレオ3トラックと書きました。

 
一番簡単な方法としては、この3トラックにまとめてしまいます。そうすると、20曲でも60トラック。だいぶ減りましたね。さらに、この3トラックを全曲、同一トラックに曲順に並べる事でクリックと合わせて4トラックだけで済む事になります。

 

毛利泰士のマニピュレーターが知っておいて損しない話03-4トラックにまとめちゃう

 

わかる人にはわかる手抜きのファイルですみませんが、こうする事で、1曲目の「毛利参上」から4曲シンプルに並ぶ事ができました。

 
これなら、本番で間違う事も少ないし、DAWの種類を問わず、お手持ちのものでできると思います。

ただ、この場合大きな欠点があります。
まとめてしまっているので、本番中に「あ!この音もう少し大きくしたい」とか思っても何もできないということです。

ちゃんと音とバランスが出来上がっていれば良いのですが、本番の会場にいってから気づくこともやはりあります。

 
どの段階でトラックをまとめるのか…本当に悩ましいところです。曲によって「これは後でもいじれるようにしたほうがいいな」と思うトラックはまとめないで個別にしておいてもいいのかもしれません。

が、そうすると欲が出てくるのも人の世の常。沢山トラックが増えていってしまわないように気をつけましょう。

 
とりあえずこれで細かいことは抜きにして、マニピュレーターとしてライブに参加するファイルの準備はできました!

 

次回は…『じゃぁお前、そのとき再生する勇気あんのかよ』です。いや、わからないw
なんにせよ、再生に関する事です!

 

余談。

 

夏は、Animelo Summer Liveにかかりっきりでした。

130曲ぐらいは再生しただろうか…毎年キツイんだけど、音楽に関わるあらゆるプロの大人たちが、毎年学園祭のような思い入れと熱意で楽しくやってます。秋の放送が楽しみです。

9月は、くるりの『NOW AND 弦』に参加しました。ストリングスとバンド、刺激的でこういう音楽をコンピューターの前にばかりいる方々にこそたくさん触れて欲しいと思います。

 
あと、レーベルでもある「Zelig works」を立ち上げた事でプロデューサーとしての時間を過ごす事が増えてきて、音楽を人に届けるために、音を作る以外の大事な事に気づかされる事ばかりです。多くの人に自分がサポートするアーティストの楽曲を聴いてもらうため勉強の日々です。

 
また、先日アンケートをとって、まだまだCD購買層が多く、定額音楽配信が普及していない事がわかり驚いています。Zelig worksは配信を中心に考えていたので、その辺も考えていかなくてはなりません。

定額配信、自分じゃ今まで買わなかったような音楽に手軽に出会えるってすごい楽しいですよ。もちろん好きなアーティストの作品を買ってもらわないと成り立たないわけですが、多くの人が多種多様な音楽を自発的に楽しんでもらえるようになればな、と願います。

 
Zelig works最初のコンピレーションアルバム『Zelig’s playlist#1』今回は手始めに、僕と森山公一がプロデュースしてきた作品集です。 各種定額配信で聴く事ができます。気軽に楽しんで聴いていただければ幸いです。

 
 

Zelig's playlist #1

 
V.A.『Zelig’s playlist #1』

発売:2016年9月17日

収録曲/アーティスト;
1. 恋道 / 中村仁美
2. また会ったね、ロンリネス / 森山公一
3. ever / cocoroage
4. ヒカリ / ラクライ
5. あんだーりんぐ / 日南子
6. カモン! / MINOKAMO!田中慈人
7. 破れた心の果ては青空 / cocoroage
8. もしかして君だけが苦しいって思ってないかい -LIVE Record! 2014- / 森山公一

作品購入ページ
http://www.tunecore.co.jp/artist?id=155323

 

それではみなさま、また次回。

毛利泰士

 

(このコラムは、毛利氏のブログ『夢が毛利毛利』に連載されている「マニピュレーターが知っておいて損しない話」をご本人が加筆したものです)

 

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毛利泰士_2016

 
毛利泰士(もうりやすし)

1974年3月10日 東京都出身 B型
プロデューサー/アレンジャー/マニピュレーター/シンセサイザープログラマー/マルチミュージシャン
 
幼少からバイオリンを習い、その後わかりやすくロックに染まり、ドラム、ベース、ギターを中学からはじめる。
高校から打楽器を有賀誠門氏に師事。練習不足がたたり1浪して洗足学園短期大学打楽器科にすべりこむ。
卒業後、たまたま見学したレコーディングで初めてみたサンプラーに衝撃を受け、Macを購入。
アレンジャー門倉聡の元で、シンセサイザープログラマーとしてキャリアをスタート。
1999年オフィス・インテンツィオに所属後「坂本龍一」のアシスタントを歴任するとともに、
数多くのアーティストから、シンセサイザープログラマー、マニピュレーターとして信頼を得ている。

上記の経験が生かされた、生演奏とシンセサイザーとコーラスを生かすアレンジには定評がある。
自身のピアノトリオロックバンド「ラクライ」ではベーシストとして活動。
森山公一とのプロデュースユニット「Zelig works」では、詞曲の世界観から音像までトータルにコーディネートするなど、自身のスタジオ「Buono! Studio」を拠点にして幅広い活動をしている。
http://intenzio.co.jp/artists_crew/mohri?f=1&id=3
Zelig works

 
主な参加アーティスト
「槇原敬之」「福山雅治」「藤井フミヤ」「サディスティック・ミカ・バンド」「X JAPAN」「大友康平」「松たか子」「坂本真綾」「絢香」「JUJU」「星野源」など多数。





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