ある夏の日、私は一人で高雄の街中にあるカフェに入り、ふと手に取った村上春樹の「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」の本を気づけば何時間も読んでいました。読み終わる頃にはもうお店も閉まる時間になってしまい本を持って帰ることにしたのですが、アパートの前にバイクが数台止まっているのを見て、私は近くにある眼科の椅子に一人座り、蚊に刺され続けながらこの曲を書きました。

もともとこの曲のデモバージョンは、私たちが2016年に自主リリースした最初のEP《Demo.1》に収録されていたのですが、まだ当時の私たちにとっていろんなことが初めてだったので、ミックスって何？マスタリングってどういう意味？という状態で、気づけばこの曲は私たちと一緒に2020年の現在まで来ていました。

実は今年に入ってアルバムを録り始めたとき、この曲はもう”古すぎる”と思って、アルバムから削除しようか考えていましたが、最後には新しいバージョンとしてみんなに聴いて欲しいと思いアルバムに入れることにしました。

ボーカルを新しく録っているとき、プロデューサーのEasyは私に「ここは二人の女子高校生がお互いの胸を見ているのをイメージしてみて」と言いました。私の頭の中にたくさんのクエスチョンマークがありましたが、それでも考えてみました。ただこれを見ただけでは何かいやらしい事だと思うかもしれませんが、私はそうは思いませんでした。

つい最近その意味が分かるようになって「もう四年も歳をとってしまったけど、純粋とはいったい何か、当時はどう考えていたのかな？本当に分かっていたのかな？社会に出た”多崎つくる”もこんな疑問を持っていたのかな？」と考えるようにもなりました。物事がとても単純だと信じるのはいつも難しいことです。

時間が過ぎても、この曲とずっと一緒だった事はとても幸運なことで、青春は永遠だと宣言したいです。

− 依玲 Yi-Ling

 
淺堤 Shallow Levée『不完整的村莊 The Village』

発売：2020年8月5日（水）
価格：2,300円+税
品番：TRON1
レーベル：Tron Music
仕様：CD

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収録曲：
01. 樹影 The Village
02. 永和 Dear Friends
03. 信天翁 Albatross
04. 火車 Train
05. 月光 Moonlight
06. 陷眠 Daydreaming
07. 石頭 Ｗish Upon a Star
08. 多崎作 Colorless Youth
09. 薄冰上跳舞 Dancing on the Ice Lake
10. 傳道的人 Seeker

 
作品解説：
今作は待望の1stアルバムであり、バンドの故郷である穏やかな雰囲気が漂う台湾の南端・高雄と、日々慌ただしく仕事や生活に追われる台湾の北端・台北を行き来する中で、年々少しずつバンドが受けた影響がアイデアとなり、今作の歌詞やメロディーに表現されている。

バンドとしてもメンバーの交代や多忙なツアー生活を経験し、答えのない葛藤と戦ってきたShallow Levée。日々変わりゆく世界に向けらた10個の問い、またその答えに向かって歩み続ける人々と共に暖かく寄り添う情熱がそれぞれ10曲に込められた1stアルバムとなっている。