2019-04-19 21:00 Fuhito Kitahara

島々のミュージシャンによるオムニバス『Small Island Big Song 小島大歌』発売。いくつもの海を跨ぐ島々を音楽でつなぐ壮大な旅行記

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島々のミュージシャンによるオムニバス『Small Island Big Song 小島大歌』がリリースされた。

 
今作は台湾のプロデューサーBaoBao Chen氏とオーストラリア人のディレクターTim Coleにより制作されたオムニバスアルバムで、台湾をはじめ、マダガスカル、イースター島、タヒチ、ニュージーランド、オーストラリア・トレス海峡、マレーシア・ボルネオ島など、島々のミュージシャンによる楽曲を18曲収録。

いくつもの海を跨ぐ島々を、音楽でつなぐ壮大な旅行記とも言える作品だ。

 
アルバムパッケージには、タパの樹皮とサトウキビの繊維を材料にした手作りの紙を使用(海へのプラスティックの負荷軽減のため)し、56ページのカラーブックレット(英文)と竹製の歯ブラシが付いてくる。純利益の50%はアーティストとNGOに還元されるとのことだ。

 
木々のために語り、海のために歌い、コミュニティの音楽を継承する島々に息づく歌で、島々に想いを馳せてみてはいかがだろうか。

 
 

 
V.A.「Small Island Big Song 小島大歌」

発売:2018年9月6日
価格:CD 3,000円 / デジタル 1,600円

販売:
那覇市 桜坂劇場
Music from Okinawa 通販
Amazonでみる(デジタル)

収録曲:
1 Senasenai A Mapuljat (small island mix)
2 Ka Va’ai Mai Koe (small island mix)
3 Hisoma Sa Ts Hisoma (small island mix)
4 Gasikara (small island mix)
5 Naka Wara Wara To’o (small island mix)
6 Sogor (small island mix)
7 Pemung Jae (small island mix)
8 Manu Koroki (small island mix)
9 Mele O Ke Kipuka (small island mix)
10 Alie Sike (small island mix)
11 Sacanoy (small island mix)
12 Fafy Rano (small island mix)
13 Dewi Sri (small island mix)
14 Kwin Potutu (small island mix)
15 Omby (small island mix)
16 Ke Ha’a La Puna (small island mix)
17 Uyas Gerakun (small island mix)
18 Ka Va’ai Mai Koe – Reprise

 

インド洋、太平洋を渡り、出会った、
島々の音楽家たちの色とりどりの音楽。

 

Tim Cole & BaoBao Chen(「Small Island Big Song」プロデューサー)

 
2015年のクリスマス直前、プロジェクトマネージャーと音楽プロデューサーの2人は、所有物を全てストレージに預け、二人合わせて5,000ドルの予算で、オーストラリア中部にあるアリス・スプリングスから車に乗り込んで旅に出ました。

 その目的は、インド洋と太平洋地域で最も尊敬される有名な音楽家たちの協力を得て、グラミー賞にノミネートされるほどのビジョンのあるアルバムと長編映画を制作すること。「Small Island Big Song」のプロジェクトは、そのように始まりました。

 世界中の海を跨いで止まることなく失われ続ける自然と文化に懸念を覚えた私たちは、文化を深め継承している音楽家達に会いに行きました。ある者は木々のために語り、ある者は海のために歌い、ある者は最も長く存続しているコミュニティの音楽を継承していました。

 彼らの母語で歌われる歌を、彼らの楽器で紡がれる音を、彼らの誇りである故郷の曲を、彼らにとっての重要な意味を持つ自然の中で共有してもらえないかと声を掛けました。そして彼らが共有してくれた曲に音を重ねて録音するかたちで、祝福の気持ちを抱きながら、新たな音楽を創り上げていったのです。

大きな海を渡り、広い心をもった音楽家達に出会うことが出来ました。気がつけば、涙が溢れる程美しい景色の中で、想像もつかないような楽器による演奏を録音し、各々が話してくれた先祖の深い歴史を学びました。マダガスカルからラパ・ヌイ(イースター島)へ、アオテオラ(ニュージーランド)から台湾のビーチへと、海流と季節風に乗せて5,000年以上も人々を運び続けた歴史。オーストロネシア人、古代の海の旅人です。

 そこで私たちが出会ったのは、たくさんの笑い声と故郷への深い愛情、そして自然は支配するものではなく、繊細な織物のようなもので、その一端を我々も担っていると信じる世界中の同士たちへの、心からの感謝の気持ちでした。そうした彼らからの音楽という贈り物を、受け取っていただきたいです。

 なによりも重要なのは音楽であり、現代的あるいは伝統的な、痛切あるいは陽気な曲を、素晴らしい音楽家達の故郷で録音したその現場にいた私達と同じぐらい楽しんでいただきたい。失われるにはあまりに尊すぎる、いくつもの海を跨いだ島々の旅行記「Small Island Big Song」にどうぞお付き合いください。

 
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ティム・コール(音楽プロデューサー)のマニフェスト:

・海洋民族の子孫である彼らの母語で話し、歌い、演奏しました。楽器は全て先祖から受け継いだその土地に残るアコースティック楽器です。
・音楽家の母国で歌い、彼らが選んだ自然の中の場所で録音を行いました。
・演奏された曲は、演奏者達が選んだものです。
・制作する中で、イコライザーと、レベル調整は行いましたが、リバーブやエコー等のデジタル・エファクトは使用していません。

 
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”Small Island Big Song”
沖縄からのプロダクション・ノート

 “Small Island Big Song”のディレクターTimとプロデューサーBaoBaoの二人と最初に出会ったのは、2015年10月、ハンガリーの首都ブダペストで開催された「WOMEX(the World Music Expo)」の会場でした。そのとき、私たちは”Music from Okinawa”としてスタンド出展していて、沖縄の音楽のプロモーションを行っていました。二人はそこを訪ねてくれたと記憶しています。
 思えば、あのときの彼らは、これから始まる壮大な旅の出発を目前に控えていたわけです。ブダペストでは、その壮大なビジョンを話してくれました。小さな島々を歌でつないでいくという作業は、とても魅力的なものに思えました。
 プロデューサーのBaoBaoは、台湾の出身です。当然、彼らのプロジェクトには台湾も含まれていました。同じく豊かな音楽に彩られた隣の島・沖縄も、何らかの関わりを持てればいいなぁと漠然と思いました。

 それから3年間、一年に一度、WOMEXの会場で二人と会いました。昨年は、スペインのカナリア諸島で話をしました。”Small Island Big Song”のプロジェクトは、すでにヨーロッパの幾つかのワールドミュージックのフェスティバルで公演が行われていて、各方面で大評判となっていました。撮影とアルバムに参加したアーティストがステージ上で、それぞれの歌を披露し、コラボレーションをすることで、二人のビジョンを形にしていたのです。
 カナリア諸島で、映像を見せてもらい話をした時、「2〜3年の間には沖縄で公演が実現できるといいなぁ」と、特に根拠もなく話をしました。

 WOMEXから戻って、何度かBaoBaoとコンタクトをとりました。そのやり取りの中で、映像を沖縄国際映画祭で上映できないかなぁと、ぼんやりと考えました。映像の上映が、公演に向けたきっかけになるかもしれないと考えたのです。映画祭の担当の方に話をすると、話は意外とスムーズに進みました。立川直樹さんとピーター・バラカンさんを招いて「ブエナビスタ・ソシアル・クラブ」を上映しようと考えているということで、「うまくハマるかも」という話でした。そうしたで縁がつながって、2019年4月、沖縄国際映画祭で”Small Island Big Song”を上映してもらえることになりました。
 公演は世界各地で行われていたので、映画上映も何度も行われているものだと思っていました。ところが、よくよく聞くと、沖縄での上映がワールド・プレミアとのことでした。これも何かの縁なのかもしれません。

 ” Small Island Big Song”には、それぞれのフィールドで録音された音源があり、土地を背景にした美しい映像が残されていて、島に生きる歌い手たちが実際にその音楽を披露することもできる。それぞれの島の音楽が、まるで一つの糸でつながっているように聴こえます。
 「ソングライン」という言葉があります。オーストラリアのアボリジニが創り上げてきた目に見えない道のことです。彼らは、出会うものを歌にしながら旅をしたといいます。” Small Island Big Song”では、TimとBaoBaoの旅が、美しくしなやかなソングラインを紡いでいるのです。Timはオーストラリアの出身でした。もしかすると、実際にそういう背景もあるのかもしれません。

 カメラは、太平洋。インド洋のさまざまな島の音楽を追っていきます。マダガスカル、イースター島、タヒチ、ニュージーランド、オーストラリア・トレス海峡、マレーシア・ボルネオ島、台湾…。豊かな海洋文化に育まれた土地に息づく音楽は、今も人々の暮らしの中にあって、強力な磁力で、スクリーンに釘付けにします。島々の美しく力強い自然の中で撮影された映像からは、彼らが歌う音楽の背景が透けて見えてきます。
 映画を見て、アルバムを聴くと、改めて、沖縄にも”Small Island Big Song”があったということに気づかされます。小さな島々で、人々が歌い継ぐ土地の音楽。第2弾が撮影されることがあれば、ぜひその候補に沖縄も入れて欲しいところです。

 沖縄国際映画祭での上映を機に、”Small Island Big Song”のビジュアル・アルバムを日本でも沖縄発で発売することになりました。Timのマニフェストにもあるように、土地土地に連なる音楽が、できる限り自然の状態で録音されています。パッケージにも強いこだわりがあります。純利益の半分はアーティストとNGOに還元されることになっています。マイクロ・プラスティックの問題などで、世界の海が危機に瀕する中、二人は島々の音楽を通して、少しでも持続可能な仕組みを作り出そうとしています。
 今回、沖縄発で、このアルバムをリリースすることで、こうした動きが少しでも広がるお手伝いができればと考えています。さらに、”Small Island Big Song”の沖縄での公演に繋がっていけばと考えています。

野田隆司(Music from Okinawaプロデューサー)

 


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