2020-08-05 21:00

小川紗綾佳、初インタビュー | 念願叶った「“ベスト”なタイミングの“アルバム”」が誰かにとってもベストであるように | 特別寄稿

Pocket

小川紗綾佳のデビューにしてベスト、と発売前から注目が集まるアルバム『百徳鍵盤』が順次リリースされる。

 
デジタルアルバムは3種類で、眠れない夜にリラックスできそうな心地よいインストルメントの『百徳鍵盤-どんな時も美しくて-』、陰と陽どちらの面にも必ず光があると感じさせてくれる歌もの『百徳鍵盤 -花が咲いたなら-』と『百徳鍵盤-everywhere-』。デジタルアルバム3種類を2枚組のCDにした『百徳鍵盤』では、楽曲だけでなく、曲やアルバムのコンセプトについてポエトリーに綴った文章も読むことができる。

 
インタビューは、生のライブ開催が難しい今、動画配信も行っているという自宅スタジオで行われ、愛用のピアノを弾きながら思いを伝えてくれる場面もあった。

 

interview by 宮﨑千尋
photo by 藤原 雪

 
 

   デジタル三部作の一つがリリースされましたね! 周囲の反応はいかがですか。

 
小川紗綾佳(以下、小川) 聞いてくれた人は「すごくいいね!」、「いつもそばに置いて、ドライブしながらなど、日常でいつも流して過ごしているよ」と言ってくれています。

 

   ひと足先にアルバムを聞かせていただいて、曲作りの幅広さに驚きました。

 
小川 今回、作り始めた時に「好きに作っていいよ」ってプロデューサーに言われたんです。だからなんのてらいもなく、生まれてくるままに作りました。こういう曲を作りたいから作ろうって生まれた曲は一つもなくて、その時に出会って感じたものを作っていったら、出来事分の色が出てきました。曲が生まれた時のこと、どんな出来事があってこれが出てきたのかということも全て覚えています。音楽が頭の中で聞こえた瞬間も全部記憶に残っているから、一曲一曲がとても愛しいアルバムになりました。

 
 

 
 

   曲作りがとても独特だそうですね。どのようにして作っているんですか。

 
小川 多いのは朝ですね。朝、眠りの浅い時に頭の中で音楽が鳴るんです。目が覚めているとも夢の中とも言えない、意識が漂ってるようなそんな狭間で音楽が聞こえてきて起きる。そして「あっ、いま曲が生まれるそう!」と自分で思う。それで音を聞きながらそのまま布団の中でボイスメモを取ったり、起き上がってピアノを弾いて作ったりということが多いです。
 
 

   作曲家として人から依頼されることも多いと思うんですが、その時はどうやって曲が生まれるんでしょうか。

 
小川 こういう曲を作ってほしい、と依頼を受ける時は、できるだけ具体的に話をききます。

例えば恋の歌なら、どんな恋なのか結構詳しく話してもらいます。私の感覚では「この曲を作ってほしい」という人がいるということは、その曲が生まれたがっているんだと感じるんです。生まれたがっているところにアンテナを合わせて…キャッチする。釣りみたいな感じかな(笑)。自分で作るというより、アンテナを合わせて聞こえたものを音楽として生み出すって感じです。だから自分で作っている感じは全然しません。聞こえてくるんです。

 
 

 
 

   今回のアルバムではどうでしたか。曲作りで大切にしていることは何でしょうか。

 
小川 私、自分が言いたいことって無くって(笑)。曲を作り始めた頃、自分の言いたいことを言い切る。出し切るまで、数えきれないほど沢山曲作りにトライした時期があったんです。

それで「ああ、もう空っぽになったな」というところまで自分を出し切りました(笑)。

そこから今みたいなスタイルに変わったんです。「こういう曲があったらいいよね」と誰かに言われたり、、何かが苦しくて辛そうなという人に出会った時とか、人の言葉や誰かの気持ちに触れた時に、私の感性がそれをキャッチして曲が生まれます。だから感性をなるべくクリアに、土管のようにきれいにしておくと、音がそのまますっぽり降りて来てくれるんです。心も身体も整えて、頭の中を空っぽにしておく。これが大切だと思っています。
 
 

   アルバム制作にかかった一年半の間に、色々なことがあったと思います。特に印象に残っていることを一つ教えて下さい。

 
小川 クラウドファンディングをさせていただいたことです。アルバムを作ろうと決断した後、クラウドファンディングを始めるまでに8カ月くらいかかってしまったんです。はじめての試みで、するかどうかとても悩んでいたからなんですが、周りの方々が「宣伝になるから絶対やった方がいいよ!」と背中を押してくれました。実際クラウドファンディングをさせていただいて、自分が想像していたよりも多くの方が応援してくれました。何年も会っていない人からも連絡がきて「待ってたよ! やっとソロのアルバムができるんだね」って言ってくれる声がすごく多かったんです。「ああ。私、アルバム作って良かったんだなぁ」って思ったし、応援してくれてる人がこんなにたくさんいるんだっていうことに気が付けました。すごくありがたいなと思ったし、自信になりましたね。

 
 

 
 

   趣味が和服と日本酒だそうですね。好きになったきっかけは何でしょうか。

 
小川 お酒はもう、ずっと好きなんです。物心ついた時から、注射の脱脂綿のにおいが好きで。
 
 

   そっちのアルコールから?!

 
小川 そうなんです。(笑)うーん、日本酒というか、お酒は全部好きなんです。特に日本酒って、色は一緒なのに味が違うのがすごく面白い。例えば辛口と甘口、あとは純米とか、銘柄によって味が違うじゃないですか。なんだかそれって、音をきいている時の感覚と一緒なんです。音って見えないけれど、耳で聞いて…聞こえていることを視覚と結び合わせて考えたり、感じたりしています。例えば「ららららら~」(ピアノを弾いてくれながら)って弾いた時に、これだとちょっと朧月まではいかないけど満月手前の月の光、とか。「ソシドレミ」(ピアノを弾いてくれながら)ってただ音を聞くよりも、そこから見えてくる香りとかを感じるのが好きなんです。曲作りもそういう感じで作っているんですけど、お酒ってなんだかそれと似ている所がありませんか? 飲んだ時に「あ。これは長野の山奥の沢のほとりの水みたいだな」とか。
 
 

   面白い! そんな時は、水を視覚で思い浮かべているんですか。

 
小川 水っていう視覚もですけど、奥行きとかかなぁ。これは深いけど後から味が来るとか、口に含んだ時に流動的な味がするとか、立体的に感じるのが好きですね。

 
 

 
 

   和服はなぜ好きなんですか。

 
小川 もともと、古いものが好きなんです。持っているものも、新しい着物はほとんどなくて「若い頃に着ていて、もう着れなくなったから」と頂いたものが多いです。そういう着物って、着物に時間が染み込んでいるというか、身に着けるとすごく落ち着くんですよね。後は、5歳から合気道をやっていて胴衣を毎週、週に2,3回着ていました。胴衣の前を閉じて、帯を閉めて、袴を履いてってすると、シャンとした気持ちになって身が引き締まります。体もだけど、心がすごく落ち着くので和服が好きです。
 
 

   今回の『百徳鍵盤』というアルバムのタイトルも和服に由来があるんですよね。

 
小川 はい。アルバム発表のイベントをやろう、どんな衣装にしようかなと考えていました。その時に、端切れをいっぱい合わせた着物があったら可愛いなと思ったんです。丈は短めで座敷童子みたいな感じで~と浮かんだものを絵に書いていきました。でもそういう着物ってなかなかないから、作ろうかなと思って“端切れ 着物”って検索したら”百徳着物”っていう着物が出てきて、思い描いていたものと全く一緒だったんです。

「ああ! あったーこれだ!!」 と思って、これってなんなんだろう? と調べたら“百徳着物”っていう、江戸時代前から今まで長く伝わっている日本の風習なんだそうです。子供が生まれた時に、その子の幸せを願って近所の徳の高い人や優しい人、この人みたいになってほしいなって思う人に「端切れをください」ってお願いして周るんです。昔は布ってとても高価なものだったので、それを少しだけ頂いて着物を作って、子供の成長と将来を祈るっていう習わしです。それをすると何が起こるかというと、端切れをくれた人からずっと気にかけてもらえるんですよ。「端切れあげたあの子どうなったかな?」とか 「元気にしてるかな?」とか、困った時に相談に乗ってもらえるような関係も育てられるその習わしを、その時初めて知ったんですけど、すごくいいと思ったんです。

私も今回、皆さんからクラウドファンディングで応援を頂いてアルバムを作っているし、曲ができる経緯もいろんな人と会って感じたことから全部生まれているから、みんなの、私にとってのこの音源は“百徳着物”だなと思っ
 
 

   そうすると“百徳着物”の子供と同じように、多くの人にずっと気にかけてもらえるアルバムになりそうですね。

 
小川 そうなったら嬉しいですね! 自分が作ったというよりも、みんなのおかげで本当に出来ましたっていう気持ちがとても強いアルバムです。それが”百徳鍵盤”という言葉で表せて良かったなって思います。
 
 

   小川さんの曲を聞くと、泣いちゃう! っていう人がたくさんいると聞きました。

 
小川 泣かせたいわけじゃないんですけどね(笑)『sparkling』(『百徳鍵盤-everywhere-』収録)っていう曲を「すごく悩んでいる友達が聞きながら泣いて、泣きながら毎日頑張ってます」という話を聞いたことがあって、嬉しいですよね。「『灯る』(『百徳鍵盤-どんな時も美しくて-』収録)を聞いて涙が溢れてきました」とか…私が泣くからか「涙が出てきました」という感想はライブでも結構いただくんです。頑張っている人ほどいつも泣けないというか…クッとこらえている。それが涙が流れることによってほぐれたらいいなぁと思っています。そうすると、あ。ちょっとは役に立てたかなって思うんです。

 

   小川さんにとって、ライブはどんな場所ですか。

 
小川 パッと思い浮かんだのは、エネルギー交換かな。ライブは私を通して、皆さんが聞いて心地よくなる音を渡す場所なんだと思います。皆さんが楽になって、楽になった波動で私が元気になります。

 
 

 
 

   最後に、なぜ今、デビューにしてベストとまで言われるアルバムができたんだと思いますか。

 
小川 今まで、何回かメジャーデビューのタイミングはあったんです。でも、色んな理由でできなくて、駄目になる度にガッカリしてきました。でもきっと、もっと良い状況でその時が来るだろうと自分を納得させて、でも…とぐるぐる色々考えて、そんなことが積み重なって今回の機会がやってきたんです。今思えばやっぱり、あの時期じゃなくて今なんだなって思います。一般的にいうベスト盤って、今まで作ったものを集めたものを言うんだと思うんですが、もしこのアルバムがベストアルバムと言ってもらえるんだとしたら、そのベストの意味は私にとって“ベスト”なタイミングの“アルバム”。だから、聞いてくれた誰かにとっても“ベストタイミングアルバム”になればいいなって思います。

 
 

 
 
 


小川紗綾佳「支笏湖の化石」MV

 
 

 
小川紗綾佳『百徳鍵盤』

発売:2020年7月1日(水)
価格:3,000円
品番:hOmEAU-004~5
レーベル:hOmEAU
仕様:CD

CD通販/お問い合わせ:
hOmEAU ほめあうキカク

収録曲:
DISC1
1. どんな時も美しくて
2. 北から風が吹き南の海が香る為の旋律
3. ある夜の音
4. あの星に帰りたい
5. never ending road or…
6. The Candle Light In The Darkness ~あなたの夜が穏やかでありますように~
7. 灯る
8. 支笏湖の化石

DISC2
1. 花が咲いたなら
2. 憩いの園
3. empty
4. 白い朝
5. everywhere
6. sparkling
7. おやすみなさい。
8. あるいてく
9. Good Luck, ○○

 
 

 
小川紗綾佳 / デジタル配信第1弾『百徳鍵盤-どんな時も美しくて-』

発売:2020年6月3日(水)
価格:1,200円
仕様:デジタル

Amazonでみる

収録曲:
1. どんな時も美しくて
2. 北から風が吹き南の海が香る為の旋律
3. ある夜の音
4. あの星に帰りたい
5. never ending road or…
6. The Candle Light In The Darkness ~あなたの夜が穏やかでありますように~
7. 灯る
8. 支笏湖の化石

 
 

 
小川紗綾佳 / デジタル配信第2弾『百徳鍵盤-花が咲いたなら-』

発売:2020年7月1日(水)
価格:600円
仕様:デジタル

Amazonでみる

収録曲:
1. 花が咲いたなら
2. 憩いの園
3. empty
4. 白い朝

 
 

 
小川紗綾佳 / デジタル配信第3弾『百徳鍵盤-everywhere-』

発売:2020年8月5日(水)
価格:750円
仕様:デジタル

Amazonでみる

収録曲:
1. everywhere
2. sparkling
3. おやすみなさい。
4. あるいてく
5. Good Luck, ○○

 



 
小川紗綾佳

artist/songwriter/pianist
3歳からピアノ、12歳から作詞作曲をスタート。アーティストとして活動を行いながら、
作曲家としてCMや番組テーマの制作やアーティストへの楽曲提供を行い、
音楽教育や医療・スポーツ界でも活躍。筒美京平氏から「10年に一人の逸材」と評されたことも。
ブルース・ギタリスト髙谷秀司と音楽ユニット「神雅氣-shinki-」として3枚のアルバムをリリース。
ヨーロッパやインド・アジア各国など海外公演も多数。昨夏行われた初のソロ公演はソールドアウトしている。

2019年秋、フルート2名、ピアノ1人による女性3人音楽集団 「三人楽器」結成。
自身が作編曲した「Midnight Blues」をデジタルリリース。2回のワンマンライブはソールドアウト。
今年4月に公演がキャンセルになってしまった事をきっかけに、たった一人の観客を招待するスペシャルなコンサートを企画して、
全国紙や地方紙、Yahoo NEWSに取り上げられ話題になり、4月27日フジテレビ「とくダネ!」にも取り上げられた。
出身も音楽ルーツも全く異なる3人が、独自の感性をぶつけ合い、ノスタルジックでありながらも新しい世界観を自由に表現している。
2020年初夏デビューアルバム「百徳鍵盤」リリース。千葉県出身。趣味は和装と日本酒。

 

ライター:宮﨑 千尋(みやざき ちひろ)


1989年静岡県生まれ。ライター。映画レビュー・インタビューなど。
映画好きな人に #好きな映画を3つ教えてください と質問するのがライフワークのひとつ。
noteに色々upしています。https://note.com/chihiro_dim/n/n427417537498

カメラマン:藤原 雪
フルーティスト/篠笛吹き 山形の指定無形文化財、上山藩鼓笛楽保存会に9才で入隊。音楽療法士の課程を習得。ネパールで音楽教師を務める。自身のバンド、三人楽器など音楽活動を行いながらラジオパーソナリティ、カメラマン、モデルなどマルチに活躍。
引きこもり支援活動にも関わる。山形県出身。

 

注目記事

小川紗綾佳、9月5日に東京湾一望の絶景スポットからライブ配信決定。デビュー作『百徳鍵盤』リリースを記念して




関連リンク

小川紗綾佳 Instagram
小川紗綾佳 Facebook


この記事の画像

タグ:

関連記事: