2020-11-06 19:00

ninomiya tatsuki『scat』インタビュー | 特別寄稿

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2018年1月にボーカリストYikiiとのユニットanemoneとして同名タイトルの処女作をリリースしたコンポーザーninomiya tatsuki。

 
2018年6月リリースのソロ名義での1st『homebody』、そして2019年2月リリースの2nd『laidback』より約1年8ヶ月、ジャジーでメロウなHip Hopプロダクションはより成熟味を増しスムースかつソフィスティケートされた秀逸・必聴の4thアルバム『scat』をリリースしたninomiya tatsukiにアルバムを中心に話を伺った。

 
 

   まずはリリースおめでとうございます!今回の『scat』はninomiya tatsukiさんの音楽についての深い造詣が感じられ、全編凝縮された素敵な曲が詰まっていますね。まずはninomiya tatsukiさんの作曲を含む創作への発想の源的なところを教えて下さい。

 
ninomiya tatsuki(以下、nt) ありがとうございます。自分は日常での考え事や、なんとなくイメージしたものを創作に結びつけています。心の中で漠然としたイメージをスマホのメモに書き留めて、文章から曲を作ることもあります。そのイメージに合う音をサンプルやソフトシンセで探したり、楽器や効果音を録音したりして、音を重ねて切り貼りして遊んでいる感じです。創作や作曲というよりパソコンで日記をつけている感覚に近いです。

 

   本作『scat』で聴いて頂きたいポイントを教えて下さい。また全体でも個別でも何かコンセプト的なポイントはありますか?

 
nt 深く考えて聴き込むというより、サブスクリプションのプレイリストのように聞き流す感じで聞いてほしいと思っています。全体のコンセプトとして、生活の邪魔にならないような聞き心地のいいピアノ主体の曲でまとめました。

 
 


ninomiya tatsuki “scat” PFCD100 AlbumTrailer

 
 

   「scat」というは興味深いなタイトルです。このタイトルにした意図といったところを教えて下さい。

 
nt scatって特に意味がない音を即興で奏でる歌唱法だと思っていて、今回のアルバムの楽曲がどれもそのニュアンスに近いかなと思ったのでscatというタイトルにしました。作ってる当時は何か思うことがあって作っているのでしょうけど、あんまり覚えてないです。多分深く考えずに出来た曲を集めた感じなので、scatというワードがしっくり来ました。

 
 

 
 

   では各曲についてお聞かせ下さい。アルバムのオープニングを飾る「good time」は本当にピアノが綺麗なロービートですね。聴き所など簡単にご紹介をお願い致します。

 
nt ピアノのサンプルが綺麗な曲ですね。本屋と雑貨屋が一緒になっているところで流れてる曲のような感じで、なんとなく雰囲気で楽しんでいただければと思います。

 
 

 
 

   M2「strength」は80’sの香りもしつつ凄く広がりのある曲に感じました。どのようなイメージで制作されたのでしょうか?

 
nt ジャズ風だけど力強いみたいなイメージで作りました。自分は筋トレが趣味なんですが、トレーニングのパワフルなイメージをサンプルや打ち込みで表現したつもりです。

 
 

 
 

   M3「sakura」もピアノが非常に美しいのと同時にストリングスなどが16ビートのドラムとマッチしていて気持ち良いです。どのような発想の元に制作されていったのでしょうか?

 
nt ありがとうございます。今回のアルバムの中では一番思い入れがあるかもしれません。今年はコロナウィルスがあって桜の時期は外出自粛を強いられていたじゃないですか。なので車で近所のライトアップされた夜桜を見に行ったんですが、それがとても綺麗だったのでそのイメージが新鮮なうちに作った曲です。

 
 

 
 

   M4「melty snow」は心地良いホーンに引っ張られつつハネたビートと相まって郷愁を感じさせます。聴き所など簡単にご紹介をお願い致します。

 
nt サンプリングしたピアノのフレーズに、サックスのサンプルがハマっていい感じになりました。冬にピッタリな曲だと思います。

 
 

 
 

   M10「rose」はラップトラックのインストのようなテイストで非常にクールです。どのようなイメージで制作されたのでしょうか?

 
nt ぼんやりと都会のイメージを浮かべながら作った曲です。こちらもなんとなく雰囲気で楽しんでいただければと思います。

 

   アートワークは写真家のカズキヒロ氏の作品をメインに添えたとお聞きしました。ご自身でCDを手に取られた際の感想を聞かせて下さい。また内面にはninomiya tatsukiさんの写真を使われているとのこと、2枚の写真を簡単にご説明をお願い致します。

 
nt レーベルからCDが送られてきて、とても綺麗に仕上がってるなと思いました。余白を入れるアイデアは自分が出したんですが、それが素材の写真と相まっていい感じになったと思います。ジャケット内面の2枚の写真は去年の旅行で撮った写真です。昔住んでいた場所の駅と、通っていた古書店の写真です。

 
 

 
 

   楽曲制作に対するアプローチや、楽曲制作で常に意識していることは何ですか?

 
nt 先ほどと同じことを言ってしまいますが、日常の中での考え事や浮かんだイメージを大切にしながら制作に取り掛かっています。気持ちがフラットな時は穏やかなビートであったり、優しいエレクトロニックやアンビエントだったり、逆に気持ちが重く沈んでる時はダークでノイジーな曲を作ったりしてます。楽曲の方向性は気持ちに左右されることが多いです。

 

   これまでに影響を受けたアーティストを教えて下さい。

 
nt 自分はすぐに感化される人間なので、音楽だけでなく何にでも影響を受けています。今回のアルバムのインストヒップホップに関してはGREEN ASSASSIN DOLLARの影響が強いです。Spotifyのプレイリストからも影響を受けています。

 

   最近のお気に入りのアーティストや作品を教えて下さい。

 
nt 最近だとNNAMDÏのBRATというアルバムが衝撃的でした。あとは北海道のLike a Dreaming Girlというカセットレーベルに注目しています。

 

   フィーチャーや共演など、今後一緒にやってみたいアーティストはいますか?また、今後どのような創作を続けていきたいですか?

 
nt 一緒にやってみたいアーティストは…パッと出てこないですね。波長が合う人が居ましたらぜひともって感じです。創作は今後も変わらず思ったことをそのままDAWソフトに記録する感じで続けていきたいと思います。

 

   これからの音楽シーンについて、特にフィジカル、配信、ライブなど、アーティストの視点でみる今後や将来像的なところを教えて下さい。

 
nt サブスクリプションの登場で音楽の発信や販売のやり方が随分変わったように思えます。自分の場合は無理にフィジカルでリリースしなくても、サブスクリプションやBandcampでの配信、好きなカセットを個人で販売していくのも選択肢の一つかなと考えていました。昨今の音楽の売り方とサブスクリプションの関係性は、自分みたいなアーティストにとって大きな課題のように思えます。

 
 

 
ninomiya tatsuki『scat』

発売:2020年10月14日(水)
価格:2,200円+税
品番:PFCD100
発売元:PROGRESSIVE FOrM
販売元:ULTRA-VYBE, INC.

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収録曲:
01. good time
02. strength
03. sakura
04. melty snow
05. sorrow
06. eu-phoria
07. twinkle
08. dilemma
09. paper crane
10. rose
11. drift
12. don’t be afraid

 
作品紹介:

2018年1月にボーカリストYikiiとのユニットanemoneとして同名タイトルの処女作をリリースしたコンポーザーninomiya tatsuki、2018年6月リリースのソロ名義での1st『homebody』、そして2019年2月リリースの2nd『laidback』より約1年8ヶ月、ジャジーでメロウなHip Hopプロダクションはより成熟味を増しスムースかつソフィスティケートされた秀逸・必聴の4thアルバム『scat』が完成!

そっと優しく様々に表現されるメロディーとコードワークが多様なロー・ビートと一体となってあらゆる情景を描き出すプロデュースセンスは実に見事と言える。

美しいピアノがノスタルジーを誘うM1「good time」M3「sakura」M5「sorrow」M8「dilemma」、80年代の香りが都会の洗練さを醸し出すM2「strength」、サックスとピアノが郷愁を誘うアルバムのハイライトの1つM4「melty snow」、ATCQを彷彿とさせるクールなM10「rose」をはじめ、Hip Hopからクラブ~エレクトロニック・サウンド、またジャジーなサウンドなど、多くの様々なリスナーの耳に届く至高のアルバムとなった。

次世代の煌びやかな才能に今後ますますの注目が集まることであろう。

 



 
ninomiya tatsuki

新潟在住のトラックメイカー、ボーカルYikiiとのユニットanemoneのコンポーザー。
ピアノやギターなどの楽器に触れ、バンド活動を始めるも持ち前の協調性の無さから、人と音楽をやる楽しさが見出せず、「一人で音楽をやりたい」という気持ちが芽生える。
後に一人で音楽制作が出来るDTMに興味を持ち、2015年にDTMでの音楽制作を開始する。
当初は歌モノロックをメインに活動するつもりだったが、様々な音楽ジャンルに触れ、それらを自分なりに昇華し、精神世界・心象を音にするというテーマでジャンルに捕らわれずに日記をつけるような感覚で音楽活動を続けている。
2018年1月にはanemoneの1stアルバム『anemone』をPROGRESSIVE FOrMよりリリースする。
また本人名義では2018年1月にEP『furiae』をOthermanRecordsから、2018年4月にアルバム『tranquil』をfumin.からオンラインでリリース。
2018年6月にPROGRESSIVE FOrMから2ndアルバム『homebody』、2019年2月、3rdアルバム『laidback』をリリース。
2020年2月14日にanemoneのEP「flowers」を自主リリース、6月4日にYoshimiとのスプリットアルバム「優しい時間」をDREAM CATALOGUEからリリース。
そして10月14日、ソロとしての4thアルバム『scat』をリリースする。

 

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