元cuneの小林亮三、Namiotoとして再始動。12月20日の青山月見ル君想フでのワンマンを前に緊急インタビュー
元cuneボーカルにしてメインソングライター小林亮三。バンド脱退からNamiotoとしてのキャリアをスタートさせ、三年間の時を経て、紡ぎだされた珠玉のポップアルバム『おとのしずく』。
再び東京に凱旋した彼が、ピュアネスと反骨精神を兼ね備えた現在の活動スタンスを赤裸々に語る。
interview , text & photo by 真田巧
| 「今ハートが鳴ってるな」っていう感覚を自分の中で捉えながら、ほぼ無意識的にメロディを紡いでいく
まずはお名前を教えて下さいますか?
Namioto Namiotoと申します。
Namiotoというアーティストの成り立ちを教えて下さい。
Namioto cuneというバンドをやってたんですが、脱退して鹿児島に移住して、ソロ活動を始めるにあたってアーティスト名を小林亮三からNamiotoに変えました。
Namiotoという名前もその場の思いつきです。会話の中で波音という言葉が出てきて、「直観」でそのままじゃあ名前にしてみようという程度で。あとからNamiotoという言葉に意味が生まれてきています。
小林亮三というバンドのボーカリストから、ソロのNamiotoというアーティストに変わったところで音楽的な方向性は変わりましたか?
Namioto JAZZをやっている界隈の人達とコラボレーションする機会があったりとか、バンドっていう形に縛られずに、自分の中に内在しているいろんな表情みたいなものを表現するとか、cuneではできないだろうっていう「ボケ方」みたいなものがあると思うので、その辺りが変わったところかもしれないです。
あと「体感」というところで作るようになってきた。すごく主観的で個人的な感覚で伝わりにくい感覚かもしれないですけど、胸が熱くなるとかよく言うじゃないですか。そういう、「今ハートが鳴ってるな」っていう感覚を自分の中で捉えながら、ほぼ無意識的にメロディを紡いでいくっていう。そういう作り方はcuneの時には無かったことかもしれない。
cuneはどういうバンドでしたか?
Namioto 良いメロディとか良い歌詞とか、親しみやすいキャッチーなものとかっていうのは追求してた。曲の構造自体の面白さ、例えばサビで歌が下がるとか、そういうのを研究できる場所ではあったよね。自分の人生においてとても重要なバンドだね。
鹿児島で作られた作品を今回、初のセルフプロデュースでリリースということですが、向こうでしか出来なかったんでしょうか?
Namioto 結果的にはそうなっとるよね。表面は色々変えれるけど、心の芯の声は定まってるから、その輪郭を見つめたかったというか。
鹿児島に行って本当に何もない状態で。東京ほどスタジオもなければミュージシャン仲間とかも一から作っていくっていう状況で。なんかこう、そういう環境から出来ることを探していくしかないっていうような状況が長く続いたので。
| 「コレ、俺が今やらなかったら物事動かない」っていう現実があるから。
自分との対話というか?
Namioto 東京にいた時との落差は結構きましたけどね。「あー、こういうことから始めなきゃならないんだな」って、リアルに体験していく作業だったりして。
具体的にはDIY感というか、例えばライブのブッキングとかフライヤー一つにしてもcuneの頃は全て人任せにしてきたので。いろんなミュージシャンが若いころに苦労して獲得していくことを、俺は今やってるっていう様な感覚があって。そういうのが大変だなって思うこともあるけど、「コレ、俺が今やらなかったら物事動かない」っていう現実があるから。
心の芯にある音楽聞いてほしいなとか、ライブいっぱい人来てほしいなとか、歌を聞いたらわかるよ!ていう気持ちとか、作品できたら届けたいし、でもそのインフラとかはいない状態から自分が獲得していくとか、そのOn The Road感というか(笑)。大変だなとか苦労したなとか思うけど、そういう感覚って面白いっちゃ面白いよね。
東京にいた時は誰かが動いてくれてたから回ってたんだなとか思いますか?感謝とか。
Namioto それはありますね。ただ同じくらい反骨精神もあるというか、ぶっちゃけ「畜生、見てろよ!」みたいな気持ちを原動力にする。感謝の気持ちってすごく静かに心にやってくるから。主に物事を動かし灦る時は、そういう反骨精神から立ち上がってプロダクトを動かしていくっていう意識。まあでも、そういうのを長くやってる人たちから比べたらまだまだ入り口に立ったところですけど。
そういう気持ちからアレンジだったり曲も生まれたりしたんでしょうか?
Namioto そうですね。すべてを自分が制作進行するわけだから、すべてが自分次第になってきて。例えば曲の振り幅をどこまで持たせるかとか、曲順だったり。そこの時点で出来上がるものは大きく違いますよね。DIYに尽きるというか、そこに集約されていくというか。
| クリエイティブしているときは気持ちいいっていう感覚に夢中になるNamiotoで、プロダクトを動かしているのが小林亮三。それがNamiotoと小林亮三との関係なのかもしれない。
そういった中で、今回の「おとのしずく」では作詞だけ2曲別の作家の方がやられていますが、こちらの経緯は?
Namioto 弟と妹っていう感じがしたんよね。あづま君(あづまひろゆき M5 SONIC FUJIYAMA 作詞)っていうのは、大阪にいた時にバンドのローディーをやってくれていたんだけど、なんかこう弟のような感じがして。モリクミ(森田くみこ M6 Salad 作詞)は妹みたいな感じがして。鹿児島でちょこっと接点があって、東京に出てくるタイミングとかが似たようなところだったりして。
全部自分で書けばよかったかなとかも思ったけど、とにかく早くリリースしたかったっていう。音楽って俺の生活全てとリンクしてるから、なんか自分のために早く出したほうが良いって思って。昔はその決断ができなかったと思うけど。会社がお金出してるからその時は。今回は自分がお金出してリリースするし、ギャラも彼らに払う。しかも僕が好きな才能を持ってるっていう人たちに対してお金を払うっていうのは気持ちいいことだから。
そこでは自分の歌詞との違和感みたいなものってありましたか?
Namioto いや、制作の仕方自体が、「この曲はこういうイメージなんだ」って伝えてもあるし、オケもほぼ全部出来て仮歌を入れていて、特にSaladの場合は、この仮歌が何を言っているかを言語化してくれって言うオーダーを出したんです。だから、歌いやすいとか歌いにくいとかの弊害は無かった。
状況的に、猫の手も借りたいじゃないけど、アルバムアシスタントというかそういう感じでお願いするわ、みたいな。そういう感じだから、パッと出てきたものにも一発で納得しました。求めてるテーマを返してくれるスピードも早かったし、もうそれでオッケーっていう。
アレンジに関しても手探りでやってて、自然に出てきたものを大事にするっていうか、8小節のループって言う感覚じゃなくて、ただ溢れ出るままに出てきたメロディが、結果的にはポリリズムっぽいというかちょっとはみ出したり、ここからこういう展開行ったらカッコいいなとか脳で思わずに、イメージがそっちに行ったから行くとか。そういうのを偶然形にできたというか。あと実際、「やり切るしか無い!」っていうスケジュール的なところもあったし。
先ほど言ってた体感っていうところ。
Namioto そうです。ボーカリゼーションもそれを意識しました。ハートが乗ってる状態で喉が振動してるかとか。なぜそれを求めるかっていうと、自分が気持ち良いからなんよね。めちゃくちゃシンプルなんですけど(笑)。
順番的にはアルバムが出来たから今回12/20のワンマンに繋がったんですか?
Namioto そうですね。アルバムはもう出来上がってて、ある日突然、「ワンマンやろう」っていう。そういうのが俺、無計画なんだよね(笑)。「あ、じゃあどうやってお客さん来てくれるだろう」とか考えても、「こんな良いアルバム出来たんだからお客さんなんて入るに決まってるだろう」っていう気持ちになってるから。馬鹿かもしれないけど(笑)でもそういう気持ちで居るんよ。それに足りないものがあれば補っていくっていう感じ。
あれですね。高校生が好きなバンドの曲を初めてコピーして、「俺ってロックスター!」みたいな気持ちになるのと同じですね。
Namioto そう!そういう感覚って俺すごい大事だと思う。そういう風に思ってるだけで無敵やん?そういう純粋な気持ちが、なんていうか心の芯にあるクリスタルみたいなとこで、それをもう一人の俺が、聞いてもらうために反骨精神みたいなところで動かしていくっていうか。
クリエイティブしているときは気持ちいいっていう感覚に夢中になるNamiotoで、プロダクトを動かしているのが小林亮三。それがNamiotoと小林亮三との関係なのかもしれない。ワンマンのフライヤーにも「小林亮三、再起動」って書いたり(笑)。
| 五感を使って体温持って呼吸して、それをリアルっていうし。それでステージとフロアでキャッチボールしてくわけだから。「パソコンとかイヤホンとかの前で感じてる情報量とぜんぜん違うよ?」って。
でも…ご自身で再起動っていう感覚ってあるんですか?
Namioto うん、全然自分では再起動とは思ってない。だってずっと頑張ってるわけやん。悔しさもあるよ。ホントは自分では書きたくない事だけど。ただ、外から見る人達からしたら、認知されている数が多いのは小林亮三って名前だったりする。記号的な意味で。「あ、東京にcuneの元ボーカルが戻ってきたんだな」っていう感じがするだろうなっていう。そういう意味でプロダクトする小林亮三の少しズルさみたいなところ、どうにかしてでも集客に繋げたいっていう反骨精神みたいなところから、再起動って言葉を使ったんよ。
12/20のワンマン、バンドセットですが当然サポートメンバーもご自身でオファーなさったんですか?
Namioto そうですね。特に今回初めてケンタくん(Gt 松隈ケンタ。中川翔子、Bis、BiSHなどへの楽曲提供などで活躍)にオファーして。今ワンマンでNamiotoとしての新しいフェーズに突入するっていうところでcuneというものはやっぱり外せないところにあって。彼が持ってるPOP感とROCK感みたいなところのバランスがすごく合いそうな気がして。cuneの楽曲をやるならケンタくんがいいと思った。それを思った時たまたま目の前におったし(笑)。そういうのが大事なんよね。ナチュラルな状態で、「あ、こうしよう」っていう流れの中で決めることって。
そういうのありますね。
Namioto そうそう。
ではどんな思いでワンマンに望みますか?
Namioto 自分がファンでもあるメンバーを後ろにして手放しで歌えるっていう状況が土台としては出来上がっていますよね。リハに入ってみんとわからんけど、どういう音になるのかワンマンが楽しみ。なんとなく見えては来てる。手放しで歌えてるっていう。
最後に読者の方にメッセージを。
Namioto 五感を使って体温持って呼吸して、それをリアルっていうし。それでステージとフロアでキャッチボールしてくわけだから。「パソコンとかイヤホンとかの前で感じてる情報量とぜんぜん違うよ?」って。「リアルってもっと熱いものだよ?」って。体験しないとわからない。今の俺のステージを観てほしいと心から思う。
Namioto『OTO NO SHIZUKU』
発売:2015年11月20日(金)
価格:2,200円
収録曲:
1. 波音
2. veil
3. 蜜月
4. Diabolos~絶望のロマネスク~
5. SONIC FUJIYAMA
6. Salad
7. その光にあわせて
8. 美しい月-instrumental-
9. オンリーユー
おとのしずくスペシャルワンマンライブ
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