ニューアルバム『Hello, NEW WORLD』をリリースしたMuffの田口将之氏にインタビュー
2015年10月にニューアルバム『Hello, NEW WORLD』をリリースしたパーティーインストゥルメンタルバンドMuffのギター兼リーダーである田口将之さんにインタビューを行った。バンド結成の経緯、ニューアルバムの発売、フジロック出演、さらには下北沢のお店「Rhythm9」まで、たっぷりとお話を伺うことができた。
photo by Shiho Aketagawa
interview & edit by Fuhito Kitahara
| ロックに負けたんです、多分ね
本日はよろしくお願いします。まずは自己紹介をお願いします。
田口将之(以下、田口) Muffという日本のインストゥルメンタルバンドのリーダー兼ギターをやっている田口将之です。マーと呼ばれてます。
まずは田口さんのバンド遍歴を教えてください。
田口 中学からギターを弾き始め、上京。青春バンドマンな修業時代を過ごし、よくいうJ-ROCK的バンドで90年後半に某メジャーレーベルからデビューさせてもらって全国をまわったりしていました。そのバンドが解散して、レコーディングミュージシャンを軽くやりながら、10年くらい前にMuffの前身となるバンドを結成したんです。残っているメンバーは今はボクだけですけど、ニルバーナみたいなグランジロックやオルタナ、UKロックなんかが大好きで、トリオ編成でボクがボーカルもとって熱いロックサウンドを奏でてました。
そのバンドでもアルバム出してツアー回ってとメジャー時代と変わらない勢いで動いたんですけど、ある日突然「これ、いつまでやってるんだろうか?」という気持ちが湧いてきてしまいまして。がなり声をあげて大音量でギターをかき鳴らして、オーバーなパフォーマンスをして汗だくになって、打ち上げで潰れるまで飲む(笑)、みたいなルーティーン疲れたなって。
ライブハウスでの環境にも違和感を感じだしてきまして…。インディーズファンのお客さんって、目当てのバンドしか見ない、目当てじゃないバンドは後ろの方で腕くんで見ているだけ。バンドによってステージ前のお客さんが入れ変わるみたいな。こんな汗だくになって体力を消費しながらプレイしてるんだから、もうちょっと僕達と遊んでよ!って。コレ、何歳までボクはやるんだろうって。ま、自分達にそこにいる全員を魅了する力があったらいいでしょうけど……ロックに負けたんです、多分ね(笑)。そして歌の才能もなかったっぽいです(泣)。
Muffを始められたキッカケは?
今ほどフェスや大型のイベントが流行ってない頃に「レイブ」っていう野外でのパーティーカルチャーがあって、ちっちゃいキャンプ場とか、山の奥の方とかでシークレットパーティーをいっぱいやっていて、そこにちょいちょい遊びに行くようになったんですね。シーズン中はフライヤーの情報をもとに毎週末どこかに参加してましたね。中にはDJによるダンスミュージックだけじゃなく、生のバンドさんが出演しているパーティーもたくさんあって。その場にいるお客さんの達はみんな、バンドが出す音に気持ちよく体を預けているんですよ。そのバンドのことを知らないであろうお客さんでも野外で気持ちよさそうに踊ってるんですね。その空気感がすごくよかったんです。僕の演奏したい場所はこれだ!ってなりました。「これだったらジジイになっても(笑)」っていうことでバンドの音も変わっていきました。というよりボクが勝手に変えていきました。
なんというか、フロアを楽しませるための音、空間作りみたいなポジションで音楽を楽しめるんじゃないかなと思って、ちょっとずつちょっとずつ歌を減らしてインスト化していきましたね。ロックでは「魅せる=カッコつける」という意識も大切だったけど、インスト化により「踊れる」「連れていく」というキーワードを1番に意識して音楽を作るようになりました。
音楽活動の変遷の意外さに驚きました。
田口 メジャーの時は、日本中でライブができて、ちやほやされて、各地の美味しいご飯いただいて、関係者が多くて、みんなで制作するっていう楽しさとか、可能性など、魅力的な要素がいっぱいあったのですが、音楽的には「ん?」っていうポイントがたくさんあったんです。イントロがあって、Aメロがあって、Bメロ、サビ、ギターソロっていうJ-ROCKの流れが苦手だったんですよ。王道なところでボブディラン、ストーンズ、ビートルズとなんかを掘り返すともっと自由な曲編成を感じるんですね。展開が読めてしまうその頃の商業的な日本の音楽が苦手でした。特に「Bメロ」の存在が一番キライでしたね(笑)。
60年代のアメリカンロックとかヒッピーカルチャーにもともと興味があったのもあり、ロック風に歌謡曲をやるJ-ROCKに対してどんどん苦手意識が強くなりましたね。その反面、もっと自由でルールのない音楽をやりたいなという欲求が強くなって、レイブカルチャーとの出会いでその想いが爆発しました。でも歌謡曲は好きですよ。
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