2019-02-03 21:00

水野ねじインタビュー!『songwriter』を通して伝える “僕のやるべき歌“ とは

Pocket

アコースティックギターひとつを抱え、フォークやロックを通して、現代のポップスを奏でるシンガーソングライター水野ねじ。

 
キャッチーなメロディと絵の浮かぶ歌詞を根底に備えたアルバム『songwriter』、この音源に込めた思いを伺ってきました。2018年10月24日に発売された今作は、初のフルアルバムであり初の全国流通盤となっております。

 
また、今回のインタビューには合同プロデュースとしてアルバム制作に参加したカミイショータさんにもご参加いただきました。

カミイさんは水野ねじさんのバンド編成(水野ねじ&BEIJING DUCKS)でギターを担当しており、さらに今作ではレコーディングや録音・ミックスなどエンジニアとしても携わっています。

 
“アーティストである以前に親友”のお二人の関係性にも注目しながらご覧ください!

 

interview by ふじーよしたか

 
 
 

   まずはアルバム発売おめでとうございます!

 
水野ねじ(以下、水野) ありがとうございます!

 
   全国流通盤、そしてフルアルバムは初ということで。

 
水野 そうですね。今までCD-Rとして三作、『喝采』『LIVE盤ピンサロ』『会いたかった沼袋』を出したんですけど、フルアルバムは初めてです。作ろう作ろうと思っているうちにどんどん年数が経ってしまって。構想が膨らむだけ膨らんで、結果五年くらい経っていたという……。笑

 
   ちなみにその構想というのはどんなものだったんですか?

 
水野 こういう曲を入れたいとか、誰を誘いたいとかですかね。人のキャスティングに時間がかかったのもあります。

 
   ちょうど本日はカミイさんにも来ていただきました。

 
水野 カミイくんには共同プロデュースとして参加してもらったんですけど、やってもらいたいってずっと思っていて。カミイショータグループではアレンジセンスが爆発してて、才能があるって分かっていたので「絶対にカミイくんの手助けがほしい!」って思っていて。

 
   カミイさんは、誰かと共同プロデュースというのは初めてですか?

 
カミイショータ(以下、カミイ) そもそもちゃんとバンドで人の音源を録るのも初めてで。俺の話になっちゃうんですけど、カミイショータグループを辞めた後に、売れるとか売れないとか考えて音楽やるのヤダなって思って。じゃあ音楽を一生やるにはどうしたらいいんだろうっていうときに、打ち込みで曲を作るとか録音するとかやれることを増やそうと思ったんです。そのタイミングでねじに相談されて。俺も武者修行のつもりで「一緒にやってみようか!」っていうのが最初ですね。

 
 


カミイショータさん

 
 

   実際音源を完成させてみて、ねじさんどうでした?

 
水野 出来ごたえはマジでバッチリ!今までずっと一人でやってきたので、曲のイメージもざっくりしたものしかなくて。そこでカミイくんとか他のバンドメンバーとも話し合ったりしてアレンジを膨らませていくうちに、自分で作りたかった景色よりももっと別の景色が見られたというか。

 
カミイ 高尾山登ろうとしたら富士山登ってたみたいな。笑

 
水野 そうだね。笑もちろん想定していたものがそのまま形になった曲もあるけど、こういう歌の魅力もあるよなって気付かされた曲もあって、そういう変化がすごく楽しかったです。コンセプトとして最初に決めていたのが、一曲ずつその歌に一番合ったアレンジをしたいというところで。だから世界観も含めてバラバラになっちゃう危険性もあったんですけど。

 
カミイ コンセプトアルバムというより、オムニバスアルバムを作るようなイメージだったんですよね。

 
   あぁ、すごく分かりやすいです!

 
水野 だから自分が歌うということにもこだわってなくて、「ファミマ」なんかは最初女の子に歌わせようとしていて。カミイくんには反対されたんですけどね。笑

 
   でもそれくらい本当に自分の作った歌に対して、どこまで良く出来るかをこだわったという。

 
水野 はい。その歌が一番良くなるように全部アレンジを練ったつもりですね。

 
   ねじさんは弾き語りがベースの活動ですが、アレンジというと元になる弾き語りがまずあって、その段階でこういう風にしたいなというのが浮かんでくるような感じですか?

 
水野 いや、最初から考えて作っているものもあって。「しおかぜに乗って」なんかは疾走感のあるナンバーなんですけど、この歌が完成するのはバンドなんだろうなって最初から思っていて。とは言っても、弾き語りではバンドの景色と違うものを見せることが出来ると思ってます。バンドと弾き語りって僕の中では見せる景色を切り替えている印象で。

 
   解釈の違いみたいな感じでしょうか。

 
水野 そうです。弾き語りではこういう景色、バンドではこういう景色、っていう二つの選択肢があるので、優劣とかじゃなくどちらでも出来るんですよね。

 
 

| 「まず何の花か言って!」

 
   『songwriter』というアルバムですが、タイトルからして堂々としていて意思を感じました。

 
カミイ でもこれ決めるの大変だったよね……。

 
水野 大変でした。でも仰る通りの「堂々!」っていうイメージで決めて。
これから音楽をやっていくうえでの自分の位置付けや覚悟を重ねて『songwriter』だろうと。

 
   覚悟というとアルバム発売に合わせて名義も変更されて。
水野寝地から水野ねじになりました。

 
カミイ そもそも水野寝地って名付けたのが俺なんですよ。

 
   へー!そうだったんですか!

 
水野 最初は本名で活動してたんですけど、改名したいってその頃ずっと言ってて。

 
カミイ その頃はいつも髭もモジャモジャで、貧乏神みたいなボロッボロの格好をしてて。笑 ホームレスみたいってところからと、ネジが好きだったんだよね?

 
   あっ、パーツとしての。

 
水野 そうそう。「銀河鉄道999」でもネジが出てきたのが印象的で。

 
カミイ 小汚かったから、もう寝地にしようよって。笑

 
   ホームレス由来だったんですね。笑

 
カミイ ただあまりにも正しい読みで呼んでもらえないし、字面がポップじゃないからひらがなにしちゃえよって。

 
水野 思い入れはあったけど、ひらがなにして良かったですね。キャリアゼロになった気分で。

 
 

   今回の収録曲、過去のも踏まえてベスト盤のような印象もあって。
多くある中から曲を選ぶ基準ってどういうものだったんでしょう。

 
水野 まず僕がやりたい曲っていうのが大前提で。カミイくんとめっちゃ相談しましたね。

 
カミイ アルバムを作る前、一番最初に質問したことがあって。「これが水野ねじです!ってアルバムを作りたいのか、売れるようなアルバムを作りたいのかどっちなの?」って聞いたんですよね。そしたら「……わかんない」って言われて。笑

 
水野 全然覚えてない!笑

 
カミイ 俺は一番大事なことだから聞いたんですけど、全然覚えてないんですよ!結局僕も「分かんないならまあいっか、作るか」って作り始めたんですけど。笑 分かんないのもひとつの答えですし。

 
水野 アルバムの軸になる曲なんかも難しかったよね。

 
カミイ イメージはあるんですけど、ある程度かたちになってこないとこれはリード曲だろうっていうの見えてこないんで、最初の段階だと「ピンサロ」がリード曲かなって思ってたんですよね。
そしたら「しおかぜに乗って」が一番派手じゃん!ってなって。

 
   これまで録音してきた同じ曲でも、今作は全く新しく生まれ変わってますよね。バンドでアレンジを組み上げたり、シンセまで入れたり。ねじさん自身にとっても新しい経験になったんじゃないでしょうか。

 
水野 そうですね。本当に。一番大きかったのは言葉にするっていうことで。
僕ずっと一人でやってきたから言葉で伝えるスキルが本当にゼロで……。

 
カミイ ミックスしてるときに、「もっと花を添えるような感じにして」って言われるんですけど、「花を添えるってなんだよ……」ってなって。笑 「まず何の花か言って!」「どこに添えて欲しいの?右?左?」みたいなやりとりをして。ねじは抽象的にしか言えない人だから、それを拾って自分の中で具体化させて「こういう感じ?」ってするのにめちゃめちゃ時間がかかって。

 
水野 バンドのアレンジにしても大変で。飯田さん(Bass.飯田裕)はそのへんを言葉にするのがすごく上手で。そこは本当に勉強になりましたね。

 
   バンドメンバー全員でイメージを汲み上げていった感じなんですね。

 
水野 みんなに助けてもらった感じです。

 
   それも曲や音一つ一つに対して、持ってるイメージが強いっていうことですよね。

 
水野 そうですね。今までひとりよがりなところがずっとあったので、精神だけがずっと肥大しちゃってて。アコギと声だけでやってきたから、サウンドを言葉にするっていうことをしてこなかったんですよね。

 
   そもそもの話になってしまいますが、曲を作っていてこれはこういう完成が見えるという段階でバンドを組もうとはならなかったんですね。あくまでも弾き語りベースで。

 
水野 バンドももちろんやりたいんですけど、それとこれとは別なんです。僕は本当に弾き語りを愛しているし、弾き語りは常に100やりたいんですよ。だから水野ねじ&BEIJING DUCKS(水野ねじのバンド形態)もサポートメンバーで構成されているんですけど、それが今の理想なのかなって。弾き語りに全力を出しつつ、バンドで見せたい景色も見せられるっていう。

あと、バンドをやったことによって弾き語りが変わったところもあって。それは自分でも驚いてる部分なんです。
バンドで”動”をやることによって、弾き語りの”静”のパフォーマンスに磨きがかかったというか。

 
カミイ 弾き語りで力が入らなくなったよね。

 
   脱力出来たという感じですか?

 
カミイ 脱力ともまた違うんですよ。その曲のちょうどいいテンションに出来るようになった。極端な話、アコギの音を1にする度胸がずっとなくて。音楽ってダイナミックレンジが広いほうが楽しいじゃないですか。

 
水野 今はもう1にするのが気持ち良くなってきて。どこまで攻められるかっていう。笑
聴こえるか聴こえないかくらいを音楽にする面白さが今はあります。
アコギの音を信用出来るようになったというか、バンドでジャカジャカやったからこそ、静かに弾いても良いんだって気付けて。

 
 

| お互いの譲れない部分を譲らずに

 
   今回のアルバムのために新しく作った曲はあったんですか?

 
水野 「激情」ですね。一曲目の。

 
カミイ そうだったんだ!知らなかった。製作中にも「一曲目と二曲目が一番大事だ」っていう話をしてたんです。

 
水野 その段階で一曲目のタネのようなものがもうあったので、「激情」は完全に一曲目にするつもりで書き下ろしたんです。あれはもう完全にバンドサウンドを意識して作ったんですよね。歌い始めの “携帯電話を捨てた” っていうのも一行目のフックにしようと決まってて。そのタネを膨らませて、自分の経験を重ねて作った曲ですね。歌を作るのは結構苦労するタイプなんですけど、結構スーッと作れた曲だったんです。

 
   アルバムとして何曲構成にというよりも、まず録りたい曲をしっかりアレンジして録ることが先決だったんですね。

 
カミイ これ入れたいあれ入れたいがめちゃめちゃ多くて……。「いや……通好みかよ!」って。笑

 
   でも最終的にアルバム全体が良い意味であっさりとした聴き心地になって。アレンジもいろんな引き出しがあれど、それが緩急になっています。

 
水野 「その歌に一番合ったアレンジ」というテーマのオムニバスアルバム的なイメージだったんですけど、うまいこと一つのアルバムとして完成された感じがしますね。もともと11曲構成で録音したんですけど、全部録り終わったらあとに一曲削ったんですよね。

 
   そうなんですか、せっかく録ったのに!

 
カミイ どうしてもその一曲が浮いちゃうんですよね。

 
水野 それを浮かすか浮かさないかで問答したりして。

 
カミイ 最終的な10曲の曲順は俺が考えたものなんですけど、最後は「頼むから削ってくれ!」ってお願いする感じで一曲削ってもらって。ジグソーパズルのピースが一個余ってるみたいな感じになっちゃってたんですよね。

 
水野 完成した『songwriter』はベストアルバム的な僕の要望も叶って、カミイくんが意識してくれた曲の流れについても叶って、問答というかケンカしただけあって身になったなって。お互いの譲れない部分を譲らずにかたちになった。

 
カミイ ……結構譲ったよ?俺。笑

 
   ねじさんが譲れなかったところっていうのは言葉に出来る部分でありますか?

 
水野 どこだろうなあ……。「ピンサロ」はアレンジに関して本当によく話し合ったんです。

 
カミイ Soundcloudに残ってるんですけど、「ピンサロ」はカミイショータグループがバックバンドで一回レコーディングしたことがあって、その通りにやりたいってねじは言ってたんですけど俺は嫌だったんです。一回やったもんをもう一回やってどうするんだって。色々案を出したんですよね。三拍子にしたりとか、いっそバンドサウンドにこだわらないで電子音楽みたいな感じにしたりとか。でもどれも腑に落ちないようだったから、バンドアレンジにするにはどうしようかっていう話し合いを重ねて……「ピンサロ」に呪われてたんですよ、この人。笑

 
   うーん、確かに水野ねじと言ったら「ピンサロ」っていうイメージはありましたけれども。

 
水野 弾き語りで発表した「ピンサロ」があって、カミイショータグループの激しい「ピンサロ」がある中で、「そろそろピンサロを救ってやれよ」ってカミイくんに言われて、ハッ!としたんです。

 
カミイ 多幸感があるアレンジにしたかったので、ちょっとウルフルズっぽい感じにしようって提案して。「バンザイ~好きでよかった~」を聴いたときと同じ気持ちになれるような雰囲気を出したくて。そのアレンジを聴かせたら納得してくれたんです。コードとかもガンガン変えたりして。全曲それをやってるんですけどね。こうしたほうがもっと歌に深みが出るんじゃないかって。

 
水野 コード感に関しては言われたやつをしっかり気に入るっていう。笑

 
 

| 僕のやるべき歌

 
   アルバムを通して思ったのが、歌詞の中の印象的な人物を透過してねじさん自身のことを見ているような感覚があって。その人物そのものを書くわけじゃなくて、その人を鏡にして自分の情けない部分だったりだとかを透かしてみている感じがあったんです。

 
水野 あぁ、ありますね……。これは次のアルバムの話にも繋がったりするんですけど、今作はちょっと自分自分しているなと。ふじーさんが言ってくれたことを踏まえて言えば、自分のことをさらに鏡にして、そこから聴いてくれる人に向けている感じというか……。ちょっと短編小説チックなところがあって、物語を通して自分の描きたかったことを反映させるような歌が作りたかったんです。「ピンサロ」だったらダメな男がフられたショックをピンサロで慰めるという主人公がいて、その主人公を外側から見てもらうような曲が多いように思っていて。「ファミマ」の主人公は女の子なんですが、その女の子を通して自分の寂しさをを歌っていたりします。「ウォーキングブルース」は田舎から都会に出てきたときの鬱屈を歌ったりとか。一貫して何かに苦悩してもがいていたときの歌が多かったですね。

 
カミイ フラれて引きずった歌ばっかりだもんな。笑

 
水野 そうだね。笑 カミイくんの言ったとおり引きずってる歌も多くて。「君が好き」はその引きずっていた相手が結婚を発表して、うわぁーっ!ってなってめちゃくちゃわんわん泣いて、どうしたらいいんだって思ってギターを手に取ってガッと作った曲が「君が好き」だったんです。良い曲が出来た!って思えたんですけど、同時にめちゃくちゃダセえな今の俺……とも思って。その反面めちゃくちゃかっけえぞ俺……!って思いもあって、そのダサい俺とカッコいい俺が一緒に出せたような曲が出来たなって思います。

 
   もがいてるという話がありましたが、情けなかったりだとかダメダメな主人公に対してその感覚も分かるなぁ……って思えるところも良くて。それが激しいバンドサウンドだったり優しい弾き語りになっていることによって、救われているというか昇華されてる感覚があるんですよね。曲を聴き終わって共感する部分もありつつ、主人公たちに思いを馳せて(ちゃんと浮かばれたんじゃないかなコイツらは……)とも思うんですよ。

 
水野 めちゃくちゃ嬉しいです。いろんな歌を作ってはいますけど、情景が浮かぶような曲たちがこのアルバムにまとまったなっていう。

 
カミイ 情景描写にこだわってたもんね。

 
水野 僕の情景描写の始まりというか、最初に良いなって思ったのが高田渡で。全く押し付けがましくないけど言ってることが分かるというか、そこにすごく惹かれて。銀杏BOYZも好きなんですけど、あれはこちらの心を無理やりこじ開けてくれるような音楽で、そういう音楽に疲れたときに高田渡を聴いて、全く押し付けがましくないのに実は銀杏と同じこと歌ってたんだって思える瞬間があって。そこで加地等さんの存在も知ったんです。加地さんは情景描写の中に心理描写が含まれていたりして、そういう奥深さに惹かれて情景描写にこだわるようになりましたね。

 
 

   ちょうどこのインタビューをやるにあたってプロフィールを改めて見ていたんですけど、ねじさんの音楽って人によってフォークだったりブルースだったりと形容される部分がいろいろあると思うんですけど、プロフィールには「現代のポップス」って書いてあってハッとしたんです。

 
カミイ みんな言うんだよね、「ねじくんってこんなにポップだったんだ」って。
今回俺が一緒にやった一番の仕事はねじがポップだってことをどうやって気付かせるかってことだったんです。

 
水野 寝地って漢字に引っ張られてた部分もあったよね。笑

 
   たしかにひらがなはポップですからね。笑

 
水野 フォークシンガーとも名乗っていたこともあったけど、僕が歌を作るときに一番大事にしているのがまずポップであることで。そのポップを軸にしてフォークっぽくしようとかブルースっぽくしようとか考えるんです。

 
カミイ きっと自分で作ったものをポップじゃんって思えたからプロフィールにそう書けたんだよね。やっと神様が名乗っていいよって認めてくれたっていうか。

 
水野 ポップスの神様にね。それはあるかもしれない!

 
カミイ 俺はポップなものをどう端っこに寄せるかっていうのを自分の作品でやってるんですけど、ねじに対しては逆の作業だったんですよね。ポップをどう真ん中に寄せていくか。

 
   水野ねじで検索したら『songwriter』もポップと出てきたのが嬉しくて。

 
水野 そうそう!J-POPなんですよ。僕のやりたいことがそもそもフォークではないというか、全てに共通しているのがポップスより前に歌があって。だからこその『songwriter』というタイトルでもあるんです。ポップであり、かつ分かりやすい歌詞っていうのが僕がやるべき歌だと思ってるんですよね。

 
 

   分かりやすい歌詞という部分では、メロディの音程の上下で言葉が通じるかどうかも変わっていったりしてしまいますが、ねじさんはそこも丁寧なように感じて。

 
水野 僕もそれはいつも心がけてるんです。この母音に応じたメロディをだとか、この言い回しは絶対にこの音じゃなければならないってことだったりはいつもすごく考えていて。MVにもなっていますが、「しおかぜに乗って」はさっきの引きずってた女性が作ったフレーズなんです。そのフレーズがずっと自分の中で残ってて、これをなんとかしたいと思ってたのでやっと出来て良かったって思います。

 
   その女性がチラッと歌ってて気になっていたという話をオフトークで話してましたよね。

 
水野 そうそう!その歌ってるのを聴いて、それいいね!!ってなって。その人が歌ってた「しおかぜに乗って」という曲はもう無くなっちゃったんですけど、田舎から東京に出ていく歌だったんですよ。それを聞いて僕は逃避行のようなものが書きたいなって思ったので、僕の「しおかぜに乗って」を作って。

 
   映像もとても良くて…!あのラストシーンは本当に感動しました。

 
カミイ あの花火のシーンはめっちゃ良いよね。

 
水野 いろんな奇跡が重なって撮れました。後ろの花火に合わせて、カメラの横で僕が手持ち花火を握って連発してて。笑 あのカップルの後ろはすぐ海だったので、落ちたら死ぬくらいの場所だったんですけど。

 
   実際の花火大会に合わせて……最高のロケーションでした。

 
水野 ロケハン頑張りました。笑

 
 


水野ねじ – しおかぜに乗って(MusicVideo)

 
 

   カミイさんから見た水野ねじというアーティストはどんなイメージですか?

 
カミイ アーティストとして?……ないなあーー!友達なんだもん!

 
水野 それは嬉しいなぁ。笑

 
カミイ 『songwriter』は一つのCDとしてはもう聴けなくて。もう10年間の友達なんですけど、ねじのことって夏のことばっかり思い出すんですよ。それこそ引きずってた女性も含めて仲良く遊んでたときのことだったり。あのアルバムを聴くと、あの夏はもう戻ってこないんだなぁって思い出したりするんです。

 
水野 「サマーヌードポップ」がお気に入りだもんね。

 
カミイ そう!マスタリング終わったあとその曲聴いて泣いちゃって……。最高の仕上がりだと思います。自分のギターもミックスダウンも全て上手くいった。

 
水野 何度も話に出てきてますけど、その引きずってた女性とよくコンビニとか一緒に行くときにカミイくんの曲を二人で口ずさんでたんですよ。それこそポップスのありかただよなって思ってたんですけど、カミイくんが当時付き合ってた彼女と歩いてるときに「サマーヌードポップ」を歌ってくれてたみたいで……!

 
   うわー!なんですか、そのめちゃくちゃ良い話は……!

 
 

   チラッと話に出ましたが、リリースパーティーのアンコールでは「次のアルバムに入る曲です」と言って演奏された曲もありました。もう次のアルバムの話!と驚いたのですが、次のイメージがあればぜひ聞かせていただきたいです。

 
水野 さっきの話とも被っちゃいますけど、『songwriter』が内向的な部分を出したものだったんですが、僕のもう一つのやりたいことがあって。今度は外に向けた、一人に向けた手紙のようなものをやりたいんです。

 
   それはリスナーということでしょうか。

 
水野 そうですね、リスナーの一人一人。もちろん特定の誰かでもあるんだけれども、特定の誰かであるということはリスナーの一人一人に繋がってて。アンコールでやった「room music」という曲も一人に向けて喋り掛けるような歌詞で作っていて。次のアルバムはその「room music」がキーになると思ってるんですよね。今度は登場人物を見てもらうというよりも、一人一人に届けるような歌を用意しています。

 

 

   おぉ、楽しみです……!それは今回の製作をきっかけにモードが変わった感じなんですか。それとも気付いたらそうなっていたのか。

 
水野 なんだろう……。僕も最近そこは迷ってるところではあって。もともと音楽をはけ口として始めていたタチだったんですよね。青春時代の鬱屈を歌にしてたり。そうやって音楽と接してきたので、徐々に歌を作れるようになってきた技術がついたときに、やっぱり僕が歌で救われてきたぶん、誰かの為に歌を書きたくなったんです。それがすごく反映されるアルバムになるんじゃないかと思ってます!

 
カミイ 次はちゃんとコンセプトアルバムにしようよ。

 
水野 どうだろう……そこはまた……。

 
   じゃあまたカミイさんと喧嘩しつつ……。笑

 
カミイ えっ、また俺やんの?

 
水野 またやるだろうね。僕はカミイくんが好きだから。笑

 
 

 
水野ねじ『songwriter』

発売:2018年10月24日
価格:2,160円(税込)
品番:LVLT-101
レーベル:LOVE LETTER

Amazonでみる
TOWER RECORDS ONLINEでみる

収録曲:
1. 激情
2. ピンサロ
3. 君が好き
4. ファミマ
5. ウォーキングブルース
6. サマーヌードポップ
7. アバズレと毛布
8. しおかぜに乗って
9. 夢の中
10. 部屋の中で

 



 
ふじーよしたか

邦楽インディーズレコメンドブログ「音楽八分目」とデイリーレコメンドタンブラー「Ongaku Wankosoba」を使って、レビューやインタビューやライブイベントをなんやかんやしています。

http://hachibunme.doorblog.jp(音楽八分目)
https://o-wankosoba.tumblr.com/(Ongaku Wankosoba)
https://twitter.com/fj_pg_yochi




この記事の画像


関連記事:
関連する記事は見当たりません…