2019-02-26 22:00

Koochewsen riyo(Vo/Gt)インタビュー。「sweet illusion」が見せた愛のかたち

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昨年10月に1stフルアルバム『sweet illusion』をリリースした、東京のロックカルテットKoochewsen。

 
東名阪ワンマンライブを大盛況に終わらせ、二度目となる中国ツアーも予定されており、国境や人種を越えて愛されつつある彼ら。

 
今回はriyo(Vo/Gt)さんをお招きして、新境地に至ったアルバムの魅力を探ります。「愛」という言葉が重要なインタビュー。読み終えたあとには楽曲に対するイメージも、愛に対するイメージも変わっているかも知れません。

 

interview by ふじーよしたか

 
 

| 当たり前のようにそこに存在しているもの

 

   それでは宜しくお願い致します!今作『sweet illusion』はこれまでのKoochewsenから考えてもジャンルレスな作品になった印象でした。アルバム全体の流れなどで意識された点はありましたか?

 

riyo アルバムのコンセプトというよりも、全体のバランスを考えて曲順を決めました。ジグソーパズルみたいな。聴く人のことを考えてますね。

 

   その中でも表題曲の「sweet illusion」はライブ中のMCでも「大切な曲」という前置きで演奏されていました。アンビエントな雰囲気を持ったこの曲がアルバムラストに来るっていう重みもKoochewsenっぽいなって思ったんです。

 
 

 
 

riyo うん、大切な曲ですねぇ……。以前ペルーに行った話はしましたよね?

 

   そうですね。7年前くらいに聞いた話でしたけど、アヤワスカという伝統的な幻覚剤を用いた儀礼をシャーマンから受けたという。

 

riyo そのときに「今まで見てきた世界は幻想だった」という衝撃を受けたんです。
秩序とか社会ってここ二千年くらいで始まったことで、何百万年も前からの人類の誕生目線で見たら、すごく歴史が浅いんですよね。

アヤワスカを体験して社会とか秩序っていうものに対してすごくネガティブなイメージを受けたんです。そんなオリみたいな中でみんな生活をしてるわけですけど、お金とか価値観とかステータスやらで人と比べて生きていくってことにすごい違和感と反発や怒りを感じて。

日本に帰ってきたら見るもの全て嘘っぱちでハリボテに見えるくらいでした。そもそも存在してることとか、自我を持ってるってことに対してもネガティブなイメージを持ってしまっていたんです。

 

   それくらい衝撃的な体験だったんですね……。

 

riyo でも一昨年ラオスに行ったときに、そういうのをやめて今ここにいるんだからもっと愛したほうが楽しいなって思えたんです。

ラオスの広大な自然の中をスクーターで走ってるときに、The Flaming Lipsとか聴いてたんです。『Yoshimi Battles the Pink Robots』ってアルバムなんですけど、その中で ”何が現実だか言うのは難しい” っていうような歌詞があって(「One More Robot/Sympathy 3000-21」”Cause it’s hard to say what’s real”)。

そうだな!!!って思って。笑
何が現実かなんて分かんねー!!でも楽しいー!!ってなったんですよ。笑

 

   スクーターに乗りながら。笑

 

riyo illusionって言葉にネガティブなイメージを持っていて。そんな幻想に、そんな小さな世界に囚われてるんじゃねぇって思って生きてきたんです。

でも、いやsweetだ!!って思えたんですよね。甘き幻想

なんでこんなに悲観的に生きてたのか、どうせ生きてるんだからもっと楽しまないと損だろっていう考え方をし始めて。そういう楽しいとか嬉しいって気持ちを大事にしようと。今は愛をもって接しようと思ってますね。

 

   本当にシンプルなことですよね。その明快なメッセージがアルバムのそこかしこに入っていて。実は今日、歌詞から受けたイメージの中からキーワードを持ってきたんです。そのひとつがちょうど「愛」だったんですよね。

 

riyo 愛っていうと男女のなにかを連想する人が絶対多いと思うんです。でも全然違うんですよね。男女間の愛を連想するのはすごくいびつだと思う。愛はもっと当たり前のようにそこに存在しているものというか……スピったことを言うけど、宇宙全体に当たり前のように溢れてて。

地球も宇宙の中に存在しているわけだから、東京にいようとラオスにいようとそれは一緒で、自分できっかけさえ作れれば無限に感じられるものなんです。感じられない人は閉ざしてるだけなんだと思う。俺も閉ざしてただけだったし。

 

   でも開くことが出来た。

 

riyo そのドアを開けるのにすごい時間がかかって。骨と一緒ですよ。
俺、椎間板ヘルニアなんですけど、長い間悪い姿勢をとってたから骨が曲がっちゃって治すまでに時間がかかるんです。思考も全く一緒で、長年ネガティブに捉えていていればパッとは変わらなくて。変わるまでにやっぱり一年以上かかりましたね。

 

   まさに精神のリハビリですよね。

 
 

 
 

│ 不思議な体験

 

   以前渋谷でワンマンを観たときに、アンコールで「世界一クールなロックバンド」って言ってからやったのが「soul」だったんです。
個人的にも「soul」はとても好きだったんですが、”ロックバンド” があの曲を演奏するという図にまんまとやられました。笑

 

riyo ありがとうございます。笑
「soul」は俺もすごい気に入ってる曲で。この曲もさっき愛について話したことそのまんまですよね。

 
 

 
 

   そうですよね。いっそ魂になっちゃうっていう、自分の身体から解脱したような視点ってriyoさんならではな感じがします。

 

riyo 離れた視点って全ての人間が本来持ってるべき才能だと思うんですよね。
宇宙とか愛とか大いなるものの話が、俺だけのものとは思ってなくて、むしろ全人類誰しも持ってるはずなんですよ。

現代社会はノイズが多くてピュアになるのが難しいんですよね。これだけ情報が多かったら無意識に閉じちゃうと思うんです。脳が自分を守ろうとしてなんらかのリミッターをかけている気がして。

だから気付けない人も多いと思うんですけど、瞑想とかしたらみんなそういうこと思うんじゃないですかね。

 

   (歌詞カードを差して)「soul」のこの段落がすごく印象的で。
(MVでは1:37~)

 

riyo これは19歳のときに不思議な体験をしたことがもとになっていて。あるとき急に精神が4歳くらいの子供に戻って、当時住んでた実家に居たことがあったんです。

 

   精神だけが……心の夢遊病みたいな感じですね。

 

riyo そうです。家の匂いとかカーペットを触った感じとかが本当にそのまんまで、胸が張り裂けそうになるくらい懐かしくてたまらなくて。でも脳は19歳のままで、子供のときを再体験しているような感覚なんです。

そこに父親が帰ってきて、無邪気に「おとうさんおかえりー!」って胸に飛び込むんですよ。子供の頃は分からなくて19歳の脳で把握したことなんですけど、お父さんの服が煙草臭かったんです。

お父さんは煙草が嫌いなんですけど、その臭いから付き合いとかで家族のために働いて帰ってきたんだなぁ……ってお父さんから家族に対する愛情をめちゃくちゃ感じたんです。なんかめちゃくちゃエモくなってちょっと泣きそうになったくらい。

 

   お父さん、煙草吸わないんですね……!

 

riyo あっ、そうか!これ言わなきゃ分かんないですよね!笑
そこからさらに戻り過ぎちゃって精子になっちゃったんです。

 

   あっ、もうそこまで含めて実体験(?)なんですね。笑

 

riyo そのときは分からなかったんですけど、優しい色で輝いてるオレンジの球体があって、「わ〜〜なんか気持ち良いからそっち行こ〜〜」って彷徨って行くんですよね。今思い返すとあれは絶対お母さんの卵子だったんです。……あんな体験は初めてでした。

本当にこの地上で親ほど尊いものはないですよ。ビッグリスペクトですね。

 
 

 
 

   サウンドの話もしたいのですが、今作はサンプリングをはじめとしてバンドとしての自由度が増してますよね。

 

riyo サンプリングはナウでハマってますね!本当に楽しい!無限だと思うんですよ。音楽ってなんでも出来るんだな!って改めて思います。「your TV」のサンプリングも全員イクところだけを切り取って。笑

 

   狂ってる……!笑
もはやバンドサウンドには囚われない方向になっているかと思うのですが、その変わっていきように毎回驚かされます。

 
 

 
 

riyo 純粋にビジネス的なことを考えたら音楽性をコロコロ変えるのはデメリットですよね。

プログレやってた頃の方が好きだったっていう人もいると思いますけど、でもそれは人それぞれだから全然気にしてないです。それは人が思うことであって俺の人生じゃないって感じですね。好きにやってるのは変わらないかな、ずっと。

 

   最後に、ちょうどベースの西平(匠杜)さんが三月いっぱいで脱退するというタイミングでインタビューをさせていただくかたちになりましたが、これからのKoochewsenはどうなるんでしょうか。

 

riyo ベースはサポートにして正式メンバー三人でやろうと思ってます。新しくメンバーを入れる気は今はないですね。たぶんずっと三人なんじゃないかなぁ……。

 

   そう思うのはどうしてでしょう。

 

riyo 飽きちゃうから変化させていきたいんですよね。同じ人でずっとやって、その人間の変化を楽しんでいくっていうのもありますけど、もっと違うかたちでいろんな人がベースを弾くっていう変化もアリなんじゃないかなって。

これからのKoochewsenは「your TV」が鍵だと思ってます。新境地を拓いたと思ってるので。変わっていくのはいいことだと思うんですよ。俺の好きなバンドもみんな変わっていってますし。King Crimsonとかね。

 
 

 
 
 

 
Koochewsen『sweet illusion』

発売:2018年10月17日
価格:2,500円(税込)
※会場、通販限定販売

通販はこちら
iTunes / Amazon

収録曲:
1. soul
2. city rock
3. your TV
4. spacey summer Ⅱ
5. いっそUFO
6. 深海魚のマーチ
7.ヴィーナスの恋人
8. English man
9. sweet illusion

 

Koochewsen live

 
TOKYO SWING SP.
日程:2019年3月24日(日)
会場:新宿Motion
出演:Koochewsen / 左右 / 余命百年 / Emily likes tennis / 宇宙団 / and more

 
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riyo live

 
春のYOIMACHI
日程:2019年4月7日(日)
会場:大塚 Hearts+、Hearts Next、Deepa、MEETS、お風呂ステージ(大塚記念湯)、BUSステージ
※複数会場往来自由
※出演者多数、随時更新中!
http://hearts-web.net/yoimachi/

 
望月志保(宇宙団)×ゴガツハズカムPre.“望月ハズカム”
日程:2019年4月19日(金)
会場:新宿Motion
出演:riyo (Koochewsen) / 望月志保(宇宙団) / タテジマヨーコ / 世界のあーちゃん
司会:望月志保&???

 



 
ふじーよしたか

邦楽インディーズレコメンドブログ「音楽八分目」とデイリーレコメンドタンブラー「Ongaku Wankosoba」を使って、レビューやインタビューやライブイベントをなんやかんやしています。

http://hachibunme.doorblog.jp(音楽八分目)
https://o-wankosoba.tumblr.com/(Ongaku Wankosoba)
https://twitter.com/fj_pg_yochi




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