10月4日開催の『姫路サウンドトポロジー』。共同代表の長谷川氏と谷口氏にインタビュー
2015年10月4日(日)に兵庫県姫路市で開催されるライブサーキット『姫路サウンドトポロジー』。今年から始まるまったく新しいフェスティバルだ。今回は、共同代表の長谷川さんと谷口さんにお話しを伺うことができた。
text by Fuhito Kitahara
| ミュージシャン、お客さん、ライブ会場、それらが繋がっていく
本日はよろしくお願いします。まずは長谷川さんと谷口さんの自己紹介をお願いします。
長谷川信也(以下、長谷川) 以前は東京に住んでいて、廃校フェスでキュレーターをやったりとか、渋谷とか下北沢とかでイベントやったりしていました。2009年から地元の姫路に戻ってきて、デザイン業をしつつ、自分でも音楽活動を始めたり、東京時代から引き続いてイベントをやったりしていました。今年の1月に、姫路城のすぐ手前くらいの場所に、ブックカフェギャラリーQuiet Holidayというお店を開いて店主をやっています。
谷口蘭太郎(以下、谷口) 最初は神戸チキンジョージというライブハウスで働いていました。その後、東京のThe High-Lowsの事務所ハッピーソングに9年間いたんですけど、The High-Lowsの解散にともない事務所を離れ、その後はいろんなミュージシャンのお手伝いをしたり個人的に活動していました。2011年に地元関西に帰ってきまして、神戸WYNTERLAND(現・Kobe SLOPE)というライブハウスでブッキングの仕事をしてたんですが、その後フリーになり、現在は神戸や姫路や自分が住んでいる加古川あたりでLANTARO MUSICという屋号でいろんなイベントを企画制作しています。
姫路サウンドトポロジーはどのような場所で開催するのか教えてください。
長谷川 姫路の本町商店街というところにある3つのスペースを使って行うライブサーキットです。1つは僕のお店のブックカフェギャラリーQuiet Holiday、だいたいキャパが20〜25人くらいの場所です。それから、コミュニティスペースの納屋工房さんというところをお借りしてます。こちらはキャパが80人くらいかな。あとは、イーグレひめじっていう市の建物なんですけど、その地下1階にあるキャパ300くらいのアートホールというところを使って行いますね。
タイトルのトポロジーってあまり聞き慣れない単語ですか、どういう意味で名付けたのですか?
長谷川 これを説明するのって、けっこう難題なんですよね(笑)。トポロジーとは位相幾何学(位置の研究・学問 *注1)の話しなんですけど、調べていると”ネットワークトポロジー”という言葉で使われてるのを見てたんですよ。そこでは、ネットワークのハブやLANみたいなものを使った端末を接続する形態みたいな意味でトポロジーって使われてたんです。音のつなぎめ、LANとかハブみたいな意味で、各会場とか、ぼくらイベンターとかがハブになって、音楽を広めていけたらいいなという意味で名づけさせてもらいました。
タイトルはどちらが決めたんですか?
長谷川 ぼくですね。
谷口 ぼくも「それいいね!」って言って、それで決まりました。しかも、「姫路」「トポロジー」って韻を踏んでるんですよね。いいでしょ?
長谷川 ほんとは「姫路トポロジー」になりかけたんだけど、サウンドを付けた方が意味がわかりやすいよなって思って。
谷口 空港でハブ空港とかあるでしょ。ハブの役割をする場所になればいいなという。サウンドが寄り集まるつなぎ目であったり、ミュージシャン、お客さん、ライブ会場、それらがLANのハブになり繋がって、それぞれがネットワークに繋がっていく、そして広まっていく、そんなイメージやね。
長谷川 だけど、語感ですね(笑)。
| 大都市じゃない、地方都市でやるっていうのに意味があると思いますね
このフェスはどういう思いで始めたのかを教えてください。
長谷川 東京ってちょっと調べたら平日でも面白いなって思えるイベントがたくさんあるじゃないですか。姫路に戻って来てライブハウスとか音楽をする場所自体が少なくて、「触れ合う機会が少ないなぁ」ってずっと感じていて。自分のお店もそうですけど、ミュージシャンがライブをやれる場所があればいいなとか、音楽を知ってもらうキッカケになればいいなと思ったのが動機ですね。
谷口 大都市じゃない、地方都市でやるっていうのに意味があると思いますね。大阪でも神戸でもない小都市でこういうライブサーキットフェスをやるって珍しいパターンでしょ?長谷川くんは姫路、僕は姫路の隣町の加古川っていうところなんですけど、そこを拠点に、あんまりシーンというかライブ文化が根付いていない街でやろうという割と挑戦的なところもあって。実際神戸とかではそういうイベントは多々あるんですけど、そこからさらに西に離れた小都市で面白い事をやりたいなと。ぼくらが住んでる街で。
長谷川 ぼくたちの住んでるところは、播磨(注2)っていうんですけどね。
谷口 姫路・加古川あたりは播州地方ってひとくくりにされるところなんで。
長谷川さんと谷口さんはどうやって知り合われたんですか?
谷口 それぞれが自分の企画でライブイベントをしていて、知り合いじゃないけどなんとなくお互いに認識しているような状態で。
長谷川 この辺りには、4〜5組くらいイベントを企画してる人がいらっしゃるんですけど、だいたいtwitterとかFacebookとかで見かけるんで。それで、どこかで知り合った…。
谷口 はっきり憶えてないけど、お互いなんとなく存在は知っていて、とあるライブ会場で出会って「あっ、君が長谷川くんか!」みたいな感じだったんじゃないかな。その後、お互いのライブに行き来しあうようになって。長谷川君が神戸の旧グッゲンハイム邸(注3)でやってるイベントとかを見にいったり手伝いにいったり、僕は年末に神戸チキンジョージでイベントやってるんですけど、それに遊びにきてくれたりとか、そんな交流がここ数年は続いていて、今回はがっつり一緒にイベントをやってみようって。
長谷川 そうですね。お互いのイベントを手伝ったりはしてたから。でも共催でやるのは初めてです。だけど、どこで知り合ったのかは憶えてない(笑)。
姫路、加古川の音楽シーンみたいなものってどうなんですか?
谷口 語るほどのシーンが存在してない。シーンが存在してないから、逆に作りたかったというか。
長谷川 シーンみたいなものはあまりないかも。レゲエとか民族系の音楽・文化は海辺のフェスみたいなのがあったりで、盛り上がってる印象ですね。京都みたいなシーンと言うか、文化があれば良いなと思ったりはしますが、僕個人としてはお店でのイベントや姫路サウンドトポロジーなどを通じて、自分たちが好きなものがもっと広がって行けば良いなと思ったりします。
今現在発表されてる出演者でいうと、どなたが地元の方ですか?
長谷川 まず僕でしょ、canorusさんっていうバンド、isaさん、ほりゆうじ…さん、カニコーセンさん、大西隆志さん、the cavesさん、ゑでぃまぁこんさん。箱庭っていうバンドは京都のバンドなんだけど、メンバーが姫路出身だったりします。だいたい半分くらいですかね。
| 長谷川さんのお店と、谷口さんのイベントの紹介
長谷川さんのお店と、谷口さんのイベントの話しを詳しく教えてください。
長谷川 ぼくの店は2階建てなんですけど、1階は古本を置いてあって、お茶もちょっとできます。お茶、コーヒー、ハーブティー、ジュースなんかが250円で飲めます。2階はカフェになってて、壁がギャラリーになってます。PAを立ててライブやったりとか、プロジェクターもあるのでアニメーションの会や映画の会をやったりとか、雑貨制作のワークショップに使ったりとか、レンタル貸しもしています。利用料金は1時間1,000円です。 どうして店を始めたかというと、元々『ブックカフェギャラリーされど』というお店があったんですけど、そこの経営者の方が辞める事になって、引き継ぐ人を捜してたんですね。さすがにちょっと迷ったんですけど、ライブにも使えるし、ギャラリーにも使えるし、自分なりの使い方を考えた時に、引き継いでいけたら面白いんじゃないかと思って。
ライブはどんな方がされましたか?
長谷川 今年2015年の1月7日にオープンして、最初に島津田四郎さんに出てもらい、そこからギターパンダさん、ゆーきゃんさん、あがた森魚さん、青木健さん、平井正也さん、小野一穂さん、安藤明子さん、森山公一さんに来てもらいました。地元の人もたくさんやってもらっていて、今回出演するゑでぃまぁこん、カニコーセンさん、the caves君にもやってもらいました。
例えば、東京からでも出演できますか?
長谷川 ツアーでどんどん使っていただければ。ぜひ使ってください。
谷口さんは『ああ素晴らしき音楽祭』というイベントを年末にやられてますよね。
谷口 2012年の年末に初めてやりました。自分の大好きなミュージシャンばかりを集めて、文字通り素晴らしきミュージシャンたちの素晴らしき音楽の祭りをしたいと思って。第1回目は友部正人さん、曽我部恵一さん、奇妙礼太郎くん、それから僕はアイリッシュ音楽も大好きで、今は解散してしまったんですけどJohn John Festivalっていう素晴らしいアイリッシュバンドにも出てもらいました。それから異国ムードたっぷりにガチャガチャ賑やかな演奏をするJaajaっていう素敵なグループ。
1組のライブが終わって次の人を呼び込む際に1曲セッションして、次のアーティストにバトンタッチするみたいな感じでやったんですけど、それがなかなか好評で。みんなに喜んでもらえたのもあって、このスタイルでその後もやってるんですけど、他では見れないセッションとかもあったりするのも特色のひとつかなと思います。
例えば第2回目の時は、踊ろうマチルダから次の出番の知久寿焼さんに繋ぐ時に、アイリッシュトラッドナッバーのセッションがあったりとか、そういうレアなシーンが見れるっていうね。そんな僕のセッションの希望とかこの曲をやってほしいってリクエストを実現させてもらってサイコーに幸せで楽しいことが次から次へと毎年起こっています。そういうイベントです。
全部じゃないけどいくつかはYouTubeで一般公開しているので、いろんな人に見てほしいな。
それはとても楽しそうですね!今年の年末も開催するんですか?
谷口 やります。今年は12月28日に行われることが決定してます。詳細はまだ発表できないんですが。
2013年末に開催された『ああ素晴らしき音楽祭vol.2』で、知久寿焼&踊ろうマチルダによるセッション。曲はアイルランドの伝統曲”Sí Bheag, Sí Mhór(シーべックシーモア)”。
最後の質問です。今年から始まるフェスに対しておかしな質問かもしれませんが、今後の展望を教えてください。
谷口 まずは姫路でサウンドトポロジーをやって、こういう面白いことをやってるよって認知度を回を重ねて広めて行きたい。そして、長谷川君の店をはじめ、そういうところにいろんなミュージシャンが立ち寄ってほしい。そういう場所も増えていけばいい。展望としては。
長谷川 それプラス、姫路の人にも知ってもらえるようになっていけばいいな。フェスとか好きな人以外にも興味を持ってもらえたらなと。
本日はありがとうございました。
長谷川&谷口 ありがとうございました。
長谷川氏が経営するブックカフェギャラリーQuiet Holiday
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おわりに
今回は開催前という段階なのもあってか、具体的なフェスの内容よりも姫路や加古川を含む播州という街に対するお二人の気持ちが強くでたインタビューになったと思います。『姫路サウンドトポロジー』を開催することで、長谷川さんや谷口さんのようなイベンター、ミュージシャン、会場、そしてお客さんが繋がっていく。そして、そんな流れこそが街作りに繋がっていくんじゃないかと、僕はそんな風に思いました。
編集部注
トポロジー
播磨、播州
旧グッゲンハイム邸 |
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