2016年9月25日に渋谷WWW Xのオープンを祝って開催されたOGRE YOU ASSHOLEのワンマンライブをレポート
2016年9月1日にオープンしたライブハウス「渋谷WWW X」。そのオープンを祝って9月25日に、OGRE YOU ASSHOLEによるワンマンライブ『OGRE YOU ASSHOLE LIVE WWWX 2016』が開催されました。今回はそのライブの模様を及川季節氏にレポートしてもらいました。
photo by 山川哲矢
WWW Xのオープニングシリーズとしてこの日行われたのは、OGRE YOU ASSHOLE(以下、オウガ)のワンマンライブ。今回、通常のステージ脇2つのスピーカーに加え、後方2箇所にもスピーカーを配置した、クアドロフォニック・サウンドシステムが導入された。スピーカーに囲まれた私達は、一体どんな体験をすることになるのか。
照明が落ちた暗闇の中、レトロな質感の語り口で、今回のサウンドシステムの説明アナウンスが流れ始める。ドラムサンプルを4つのスピーカーから1つ1つ順番に流していき、照明も順番に当てられ、耳だけでなく視線も思わずそちらへ向く。スピーカー達がなんとも可愛く見えてくるようなユーモラスな演出で、サウンドシステムへ興味が沸き、なおかつ音響に対する彼らの愛情が感じられるオープニングとなった。そして、出戸学(Vo&Gt)がオープンリールのスイッチを押す。淡々と語る女性の声が流れ始め、一気に会場が非現実的な空間となった“寝つけない(terribly humid mix)”から、いよいよライブがスタートする。
ピンクや赤や緑のサイケデリックな照明に彩られ、はたまた逆光で影となり、メンバーの表情はなかなか読み取れない。“黒い窓”のエコーがかった出戸の不穏な歌声は、見えないもやのように頭上を漂い、“フラッグ”や“見えないルール”で馬渕啓(Gt)が鳴らすノイジーなギターの音色は、会場中を自由自在に飛び交っている音がまるで目に見えるよう。勝浦隆嗣(Dr)が鳴らすシンバルの鋭い金属音は、顔のすぐ横をかすめるように瞬間的に通り過ぎる。清水隆史(Ba)のストイックな中にも人間味が滲み出るような低音は、足元をうごめき、血管や内蔵を伝わり、髪の毛の先まで痺れるものだった。まさに耳だけでなく、全身で体感する音。目を瞑って、押し寄せては引いていく、音の快楽にずっと身を委ねていたかった。
本編ラストに披露された“ロープ(long ver.)”のイントロ。以前のライブでは、彼らが暮らす長野の山で見る星空はこんな景色だろうかと、長野の夜に思いを馳せて聴いていた。だが、この日のアレンジはイントロから違う。流れ星のようなスライド・ギターの音色は360°あちらこちらから聴こえ、さらにエフェクトがかったスペーシーな効果音は頭のすぐそばを周遊する。徐々に熱を帯びていく彼らの演奏、馬渕がクールな表情で鳴らす感情的なギタープレイ、そしてラスト、4人のエネルギーが集結し放たれる音の爆発は、長野の山から大気圏を抜け、宇宙に放たれたのではないかと思うような、今までにない感覚だった。
4chのサウンドシステムを駆使した今回のライブは、兼ねてよりライブを共にしているPAの佐々木幸生、サウンドエフェクトを担当する中村宗一郎の2人の力を、より一層体感できるものだった。また、これまでにも感じていた、音へのこだわりと愛情を持つオウガだからこそ、今回のサウンドシステムがここまで効果的に、より観客の感情を揺さぶるものになっていたように感じた。メンバー4人、そして、音のプロフェッショナルである音響チームをはじめとする、スタッフの間にある信頼が生み出した音像だったのではないだろうか。
アンコールで演奏した、先日リリースされた “はじまりの感じ e.p.” 。そして、オープニングで続けて披露した3つの新曲も収録されるアルバム『ハンドルを放す前に』が、11月9日にリリースされる。このアルバムは私達を、今度はどんなところへ連れて行き、どんな体験をさせてくれるのか。さらに、これからライブではどんなアレンジで鳴らされ、進化していくのだろうか。
ああ、音響システムによる新たなライブ体験を提示したWWW Xにとっても、オウガにとっても、「はじまりの感じ」をたしかに感じられる一夜だったなと、メロウで物憂げな、全然「はじまりの感じ」がしないアンコールの1曲を聴きながら、考えていた。
セットリスト
01. 寝つけない
02. かんたんな自由
03. なくした
0
4. 夜の船
0
5. ワイパー
06. タニシ
0
7. ヘッドライト
08. すべて大丈夫
09. 黒い窓
10. ムダがないって素晴らしい
11. フェンスのある家
12. フラッグ
13. 見えないルール
14. ロープ long ver.
En. はじまりの感じ
OGRE YOU ASSHOLE ニューアルバム リリースツアー 2016-2017 2017年 |
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