2019-05-30 12:00 Fuhito Kitahara

NYAI、ポップソング新章への新たな一歩を踏み出した2ndフルアルバム『HAO』7月3日発売決定。MV公開&6/16にはリリパも開催

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NYAIが、2ndフルアルバム『HAO』を7月3日(水)にリリースすることになった。

 
彼らは、90年代オルタナティブバンド周辺に影響を受けた潔いバンドアレンジとひねりの効いたメロディを得意とする、福岡の5人組ロックバンド。初の全国流通盤となった『OLD AGR SYSTEMATIC』以降、スピッツ草野マサムネがフェイバリットバンドとして名をあげるなど、独特なゆるさの雰囲気も相まって国内外にじわじわとファンを増やし続けている。

 
今作は中国風コードを使ったポップな楽曲や、ヒーロー感あるギターとアッパーな四つ打ちドラムでキャッチーな楽曲、Sonic Youth ミーツ Erik Satieな楽曲など11曲を収録。これまでの作品と違いボーカルが感情を露わにする楽曲もあり、NYAIにとってのポップソング新章への一歩を踏み出した作品に仕上がった。

 
また、6月16日(日)には地元・福岡cafe & bar gigiで、strobolightsを迎えリリパの開催も決定。

 
さらに、アルバム冒頭曲「Jackie chants J」のミュージックビデオも公開された。NYAIとライターの小倉陽子氏によるアルバム紹介文も発表されたので(下記に掲載)、併せてチェックしてみよう。

 
 


Jackie chan`s J / NYAI

 
 

 
NYAI『HAO』

発売:2019年7月3日(水)
価格:2,000円+税
品番:NYAI-002
レーベル:(株)ウルトラ・ヴァイブ/ニャイちゃんレーベル

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収録曲:
01. Jackie chan`s J
02. Noise
03. Buckwheat
04. Yumeshibai
05. Boredom
06. 22column
07. Chinese daughter
08. Spicy beans
09. Circular saw
10. Ghostly turn
11. Meaningless

 

NYAIによるアルバム紹介文

 「透明化するパワーポップ」について考える。これが公に使われてる表現なのかはよく分からない。いわゆるパワーポップのベタな手法として、分厚く歪んだギターがどっしりとドライブするサウンドがイメージされると思う。そんなディストーションなギターがなくなった、クリーンなサウンドのパワーポップのことを言いたいんだと思う。「ディストーションギターがなくなること」を「透明化」と短絡していいのかはさて置いて。
 元々パワーポップというジャンル自体が「ギターサウンドはディストーショナルでパワフルだけどメロディは透明感ある」みたいな特徴があると思うので、それでサウンドまで透明化が進めばどんな感じになるか。元々がパワーポップかはともかくとして、ジーザス&メリーチェイン『Darklands』みたいな事例はあると思った。あと北欧系のパワーポップバンドは、はじめからサウンドもドライブ感あるものと透明なものと使い分けをしてるイメージがある。Last Days of AprilとかWannadiesとか。
 パワーポップバンドのサウンドの透明化にはいくつか方向性がある(ことにする)。フォークとかルーツロックっぽくなるのは、サウンドが透明っぽくなるかどうかはともかくとしてひとつの方法だろう。そしてそれ以上に重要なのは、ニューウェーブな感じになることや、エレクトロニカ的要素を取り入れることなど。これらは並行する場合もあると思う。たとえば(サウンド変遷の順番的に合ってるか分からんけど)晩年のスーパーカーのバンドサウンド回帰は、ニューウェーブ的なスカスカ感がある演奏に、少しのエレクトロニカ要素が添えられて、いい具合に空間を感じさせる(特にこの時期のシングルカップリング曲が最高。『ANTENNA』とか)。

 この文章は前置きが長すぎる。NYAIのこの新しいアルバムのサウンドを語るのに、こんなに前置きが必要だったのかな。聴けばすぐわかることばっかりだろうに。
 彼らを語るときに常に出てくるスーパーカーとの比較において、今作ではまさに、晩年のスーパーカーのそれを思わせるサウンドの取り組みが散見されることを特に言いたかった。アルバム前半が比較的「キャッチーなパワーポップ」が連発される(『Yumeshibai』は実にエモい…!)のに対して、中盤くらいから現れる、透明化したNYAI的なロックンロールの数々の涼しげな趣。前作アルバムから今作への橋渡しになったミニアルバム『Out Pitch』で模索されたサウンドはより発展して、今作ではアルバムの中核にあると言っていいだろう。サラサラとしたギターコードの響きは、透明なフォーキーさだけを残している。オブリガードのギターもより抽象的なプレイが増えた。リズム隊のプレイは時にJoy Divisionか初期New Orderを彷彿とさせ、特に直線的ながら印象的なフックを付けるベースプレイは、まるでもうひとつのリード楽器のような存在感があり、心地いい。
 楽曲のポップセンスは維持され、むしろより自在に、ユーモラスさと透明感とを行き来する。とぼけたポップさも織り交ぜつつ、ひたすら透明な空の中を駆け抜けていくような楽曲を連発して、そして窓から差し込む陽光の揺らぎの中に消えていくような最終曲の切なさに落ち込んでいく様は、彼らの現在のリリシズムがあり、とても甘美で感傷的で、静かに感動的だ。
 「静かさ」。この透明さに溢れたサウンドはまた、そのように言い換えることも出来るのかもしれない。歌詞にはまた、無力さを感じさせる単語がこれまでより増えたかもしれないけど、それは決して虚しさそのものを指さず、その周縁をなぞるように言葉を連ねていくから、サウンドと重なって、印象としてやはり透明な静けさが広がっていく。
 たとえば、このアルバムを聴きながら見る空の色は、どんな涼しい感じがするだろうか。このアルバムを流して、別にNYAIのホームである福岡市のことを思う必要は無い。あなたが見る空の色や質感・情景もしくはその時の口の中の味なんかに、またはあなたの抱えた軽い憂鬱やらぼんやりやらに、このアルバムはきっと、何らかのささやかで鮮やかな色を添えるだろう。それはきっと音楽のとても大切な役割のひとつだと、ぼくは信じてる。

 
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小倉陽子氏による作品解説

福岡発、2011年の結成以来ゆるやかな活動ながらそのオルタナティヴな音楽性を静かに研ぎ澄ましてきたギターロックバンドNYAI(ニャイ)。PavementやPixiesなどのUSインディーや、NUMBER GIRL、SUPERCARといった日本のオルタナティヴ・ロックの系譜と言われながらも、バンク、ニュー・ウェイヴ、シューゲイザー、ドリームポップなどそれぞれの音楽を吸い込んで、 捻くれゆるふわギター・ポップへと鮮やかに翻訳し、じわじわと期待を高めてきた、男女ツインボーカルの5人組バンドだ。 そんな彼らの全国流通版フルアルバムとしては2作目となる『HAO』を通じて波のように寄せては返す感覚は、夢みたいな世界が現実かもしれないし、死だと思っていることは生かもしれない、 そしてネガティブに並んだ言葉たちはポジティブの現れなのかもしれない、とかそんな相反する両面を往来しているかのよう。「オルタナティヴを研ぎ澄ますことがポップであること」 なのかもしれないし「ポップを突き詰める姿勢がオルタナティヴを貫くこと」なのかもしれない、なんてそんなことをフワフワ考えるのにピッタリの、浮遊感と清涼感いっぱいのドリーミーなポップチューンの数々だ。

とはいえここまでに述べた言葉の羅列さえ、発した先からフワリと優しく溶けてなくなるように、今作は新しくて堂々たるNYAIに出会うことが出来る。『HAO』というアルバムタイトルだけあって 中国風コードを使ったポップな楽曲や、「Noise」とタイトリングされた作品がヒーロー感あるギターとアッパーな四つ打ちドラムでキャッチ―に仕上げられていたり、Sonic Youth ミーツ Erik Satie といった面持ちのノーウエイヴな作品には一撃を食らう。広くジャンルやルーツを跨った音楽たちが境界線をふやかして溶け合う喜びが、キラキラ音になって煌めく。そして今までの NYAIなら、ギターがエモーショナルに響いたりドラムがドラマティックに楽曲を盛り上げることはあっても、ボーカルが飄々としてバランスを保っていたところもあるのだけど、今作ではボーカルが感情を露わにする楽曲もあって、NYAIにとってのポップソング新章への一歩を踏み出したように感じた。

NYAIの歌詞はいつもどこか諦めていて、どこか疑っている。そこがオルタナ然としているのか、「諦めないで、信じること」なんかを歌うようなポップソングとは真逆なのだけど、捻くれた言葉から 感じるのは本当は真っ直ぐだからこそ疑い、疑うゆえに捻くれ、捻くれた末に後悔しているのではないかということ。さっきまで誰かと笑い合ってキラキラした時間を過ごしていたのに、ふとしたときに 小さくウッと声を出して思い出す報われない自分と少しの後悔のような、たっぷりの煌めきの中にそこはかとなく漂う憂い。既存のオルタナティヴもポップも、現実も夢も、生も死も真っ直ぐ見つめ 再解釈したNYAIなりの骨太なポップチューンたちが誕生した。 願ってももがいても覚めることのない現実の中に、少しの諦めとそれでも笑って前に進むやさしさを、手に入れたみたいだ。こんなにも、音楽も人間も愛しい眼差しで包み込むことが出来る

文 / 小倉陽子

 

ライブスケジュール

 
NYAI 2nd full album release party 『HAO』
日程:2019年6月16日(日)
会場:福岡cafe & bar gigi
w/ strobolights

 
海の日のファンタスティック・ビアー!!-九州急襲編-
日程:2019年7月15日(月祝)
会場:京都livehouse nano
w/ folk enough、Strobolights、K-19、atuiso、メシアと人人、Ribet towns、beethoven frieze、and more…

 



 
NYAI

福岡でマイペースな活動を続けるNYAI(ニャイ)。90年代インディギターバンド、オルタナティブバンド周辺に影響を受けた潔いバンドアレンジとひねりの効いたメロディを持つ男女混成ボーカルギターロックバンド。2016年に初の全国流通フルアルバム『OLD AGE SYSTEMATIC』をリリース。独特のユーモアやゆるさを持つバンドの雰囲気で国内外にじわじわとファンを増やし続けている。スピッツ草野マサムネがフェイバリットバンドとして名をあげるなど今後の活動にさらに注目が集まっています。

 
takuchan (Vo/gt )
ABE (Vo/key)
showhey (Gt )
たにがわシュウヘイ (Ba)
アヤノ・インティライミ (Dr)


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