毛利泰士のマニピュレーターが知っておいて損しない話 | 第1回 仕事とは、ジャイアントスイングの受け身とみたり。 やすし
全国の音楽、マニピュレーターファンの皆様こんばんは、Zelig works 毛利泰士です。振り回されてなんぼだよね、ほんと。立ち上がってくる様もオモロイよ。
前回、第0回と称しましてマニピュレーターってなんぞや、って話をさせていただきました。
と言うことは、
貴様らはもう全国マニピュレーター予備軍ということだ。今回からは即戦力を育てるためにビシビシと鍛えてやるからそのつもりでいろ!
…などということはありません。いや、いつだってやりたい人は募集してますよ。けど、ここでそういう話をしたいわけではないのですよモナムール。
僕といたしましては、過去の僕のような、実はよくわかってないけど始めちゃった、今更人に聞きづらい…というマニピュレーターや、 いつもなんとなくマニピュレーターに頼んでるけど、どこまで頼んでいいかわからない、ていうかあいつら何ができるんだそもそも…っていうようなレコード会社の人にも多くみてもらいたいわけです。
そしてそこのあなたには、その様子を覗き見していただきたい!覗き見をしていただきたい!!!!うん、なんか気持ちいいですね。
さて、そんなこんなで今回から本格的な話になります。
まず僕らが扱うコンピューターのソフトウェアの話なんですが、その前に…前述したような方々に読んでいただきたい一方、ちゃんとお仕事をされているプロフェッショナルなマニピュレーター同業者の方々へ。
ごめんなさい!!!!!
このように技術、手法を公開する事に対して、同業の方にとって好ましくないこともあるかもしれません。
僕にとっては、職業マニピュレーターにとって大事な事は、まずは!求められている事に対して現場で待たせないことだと思ってます。
そうするには何より、「いま周りが音楽的に何をしようとしているか」「自分の機材、ソフトウェアで今対応できるのか」「どのぐらいの時間でできるのか」をしっかり把握する。その為には、リハーサル前に楽曲を理解し、参加するミュージシャン、楽器編成、PAの組み合わせなどから、常に事前にどのような事を求められるか想定してソフトウェア、機材、ファイルを用意しておく、またはその場で察知して一足先に対応を始める。
こういった部分こそ今後広めていって、マニピュレーターという職業の技術を向上することにより、より音楽的な同期ライフを皆様に末永くすごしていただきたい、という気持ちなのです。
システム的なことは今まで費やしてきたお金とアイデアなんぞは、さっき書いた大事な事とは関係ないっちゃないんで全部隠さず公開して、できたら真似していただいて、また皆様からの意見によりぼくも更に新しい方法を考えてくことで、すこしでもより良い演奏、音像のライブが日本に増えるようにという思いで書いてみる事にしました。
技術的な話、専門用語も出てくるとは思いますが、そこはそれ、勢いで読み飛ばしても面白いを目指しますw
ライブで、現状そして今後の主流なマニピュレーターのやり方としては、DAW(Digital Audio Workstation)から音を再生する、という事だと思います。この僕らが再生する音のことは、同期、シーケンス、半オケなどと呼ばれています。
https://ja.wikipedia.org/wiki/デジタル・オーディオ・ワークステーション
小難しいこと書いてるけど、要はコンピューターにDAWをインストールしたら、君も音楽を作れちゃうんだぜ。今ならなんと、iphoneやipadでもできちゃうんだぜ。っていうのが「DAW」です。
その場合、どのようなソフトウェアでどうファイルを再生するか、そして音を出力するにはどのような機材システムでやるか、という2点が大きなくくりになると思います。
やべぇ、めんどくせぇ話じゃん、読むのやめようかな…とか思うなヨォ〜。確かに今回いきなりだけど、騙されたと思って読んでぇ〜
さぁ、ソフトウェアの話を。
今回は僕の使っているソフトを紹介します。
ソフトウェアはDigital Performer。愛用する理由の一番の特徴は「チャンク」という機能です。
大多数のDAWは、横軸に時間が流れてくウインドウを1つの楽曲=1ファイルとして取り扱っているとおもいます。
DigitalPerformerでは「楽曲×無制限=1プロジェクト」という仕組みです。要は、楽曲を切り替えるウインドウがあって、そこで選んだ楽曲にすぐに切り替える出来るようになっています。
曲順にならべておけば、自動で次の曲に切り替えてスタンバイになるので、非常に便利です。8GBメモリーほど積んだMacなら、USB3.0のハードディスクで32トラックある楽曲を20曲ぐらい入れてあっても問題なく再生できます。
その他に、
「楽曲ごとにテンポマップとマーカーを入れることができる」
「曲順の並び替えが簡単(ドラッグするだけ)」
「一時停止状態から瞬時に再生されるタイムラグのなさ」
「瞬時に選択箇所をループ、またはループ箇所を曲ごとに設定できる」
など、再生機能に非常に特化したソフトウェアです。いまや、MacとWin両方対応している点がニクいっす。
マイナス面は…
「リアルタイムでオーディオのテンポチェンジができない」
「純正のテンポチェンジの音質があまりよろしくない」
といったあたりでしょうか。
Digital Performerの画面。クリックすると大きく表示されます
僕は1楽曲に対して、実際本番で使うパートを32トラック以内にまとめて出力しています。僕の本番時には欠かせないソフトウェアになってます。
そこにいたる以前、リハーサルの最初期は1曲ずつTD済Protoolsセッションをリハーサル用にエディットしたものを使い、おおよその道筋がたった時点で、DigitalPerformer用に使用する各パートにまとめる(ステム化といいます)という手順にしております。
トラックダウン、ミックスダウン、などと言われます。
DAWにアレンジ、録音されたたくさんのトラックのバランスを整えたり、様々なプロの処理を加え、また引いて、製品一歩手前の音に整える作業の事。
エンジニアの腕が発揮されます。
この後、TDされた複数の曲たちを、最終的に一つの作品として仕上げるマスタリングという工程を経て録音音楽は完成するのです。
あまり、事前に用意されたステムを使う事は少ないと思います。バンドサウンドに合うように、音色を全曲整えることが理想的だからです。全曲の音を整えるというのは、TDでたくさんのオーディオファイルが、ひとつのステレオファイルになったあと、マスタリングでされる作業なので、たくさんのトラックを扱う僕らの段階では曲によって音像がまちまちなのです。
ある意味マニピュレーターとは、マルチトラックマスタリングのような作業も兼ねているのかもしれません(近年、レコード会社の方でステムを作成してあることが増えましたが、ライブでの使用に適したステムができていることは残念ながら稀です。今後の歩み寄りが必要ですね)。
その辺りは、仕事の規模、リハーサルの日数、元データの有無などによってフレキシブルに対応いたしますが、要は、ライブなのだから、生演奏の躍動感をしっかり出せるように、バンドの音に同期が自然に混ざってかつしっかり音量は出て邪魔はしてないという音像を作りたいからなのです。
演奏に覆い被さってカラオケのようにしてしまったり、バンドメンバーがうまく避けて演奏してるのに同期が聴こえなくて地味、という事がないように細心の注意とPAとの話し合いが大事なります。
と、最初からちょっと飛ばしちゃいましたが…
まずシステムの話に入る前に、なぜそうしなくてはならないのか、という意図こそが大事なので、説明が長くなってしまい申し訳ありません。
けど読み終えたときには、マニピュレーターになれてると思って頑張ってください!
(なりたくないとか言わない!!!)
次回は、マニピュレーターからは、実際どんな音が出てるの?何チャンネルぐらいだすわけ?って話です。これこそが、様々だとは思いますが、プロのお友達たちもご意見ください!!
では、長くなりましたが、みなさん今日も寝ルベ(上杉達也氏のセリフより)
追伸
この下のプロフィールを読んでいただきますと分かる通り、こんなにもマニピュレーター感出しておきながら、実は色々やってます。プロデュース、アレンジなどにも力をいれてるわけです。
今回、お友達の森山公一(オセロケッツ、the sokai)と、音楽を売るチームを立ち上げます。レーベルとかいう言い方とも違う新しいことに挑戦したいので、「プレイリストショップ」と名乗ろうかと思ってます。
冒頭で「Zelig works 毛利」と書かせていただきましたが、これが、Zelig worksです。
今後、面白いことしようと思います。9月にまず音源発売、ライブと開催しますので、興味ある方は是非。
またこのコーナーやマニピュレーター、僕についての質問、「毛利マニピュレーターやめたってよ」というお悩み相談も随時募集いたしますw
今後ともよろしくお願いいたします。
Zelig works 毛利泰士
(このコラムは、毛利氏のブログ『夢が毛利毛利』に連載されている「マニピュレーターが知っておいて損しない話」をご本人が加筆したものです)
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1974年3月10日 東京都出身 B型 上記の経験が生かされた、生演奏とシンセサイザーとコーラスを生かすアレンジには定評がある。 |
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