2017-06-25 21:00

第十八食『谷中銀座・10円饅頭と平和について』| 食漂譚~バンドマン東京グルメ紀行~


第十八食『谷中銀座・10円饅頭と平和について』

 

text & photo by 淋梅毒(Super Ganbari Goal Keepers)

 

2017年5月22日、5月にしては初夏並みの暑さの正午、僕は日暮里駅に向かった。連載を開始して初めて、本音楽サイトUROROSの編集長北原さんと打ち合わせを兼ねた取材(早い話が飲み食い)をするためだ。この日はバンドメンバーでもあるsuper ganbari goal keepersボーカルギター・ショウヘイマンと、地元富山の旧友・W田も合流し、男4人で谷中銀座をUROUROした。


 

 


谷中銀座商店街とは、谷根千エリア(谷中・根津・千駄木)の名物で、昔ながらの個人商店が密度濃く立ち並ぶ下町感溢れる商店街だ。今回約5年ぶりに訪れたが、以前より観光客、特に外国人の方々の割合が増しているような気がした。


 


谷中銀座商店街について
http://www.yanakaginza.com/about/

 


日暮里駅、千駄木駅どちらからもアクセス可能だが、今回は日暮里駅から谷中銀座へ向かう。西口を出てしばらく歩くと、趣きのある坂が見えて来る。夕暮れどきなら昭和のドラマに出てきそうな坂だ。以前訪れたときは猫が何匹かだらりと昼寝をしていたが、さすがにその日は暑すぎて一匹もいなかった。


 

 


今回の目当ては谷中福丸饅頭という和菓子屋さんの名物、10円饅頭。1個当たりの値段が約10円からであり、直径も硬貨くらいしかない、本当に小さい饅頭だ。ただし色々な種類があり味も本格派で、テレビでもよく取り上げられている。

谷中福丸饅頭 : 商品案内
http://www.foodgallery.co.jp/products/index.html

 

 

僕はサツマイモ系の菓子に目がないので、芋かりんとう饅頭を迷わず買ったが、中にみたらしが入っている饅頭やきな粉のも大変おいしかった。特に、スタンダードな黒糖まんじゅう(10個入り110円)は紛れもなく看板商品にふさわしい素晴らしいバランス。皮のしっとりさと表面の艶やかさ、中の餡子の絶妙な軽さ。よくあるサイズの饅頭とは違い、スナックを食べるような感覚で10個すぐに食べてしまいそうだ。

 

 


アイス最中は初めて食べた。コンビニの湿ったモナカアイスとは全然違う、香ばしくサクサクに焼き上げられた最中の皮は、まさにちゃんとした和菓子屋のそれだ。1個150円ではあるがとても贅沢な気分。

 

 

この日は観光客だけでなく、地元の家族連れでも商店街は賑わっており、露店でラムネを売っていたり、子供向けのバルーンアートをやっていたりした。

 


喫煙所も風情があった。

 

谷中銀座は店内に限らず、商店街で買った惣菜を片手に軒先でビールケースに腰かけ青空の下で呑める場所としても有名だ。この日メンチカツを食べながら男4人で呑んだ琥珀ヱビスは、2017年暫定一番美味しいお酒となった。

 

 

とにかくこの日、僕は淀みのない平和な時間を過ごした。一見街ゆく人も、風景も穏やかで、何も考えずただ日常を平穏に過ごしていればそれだけでいいとさえ一瞬思えた。ところが、どうもそうは言ってられない状況がここ半年で加速したように感じる。

就活に失敗した若者も、夢を追う貧乏バンドマンも、周囲に理解されない同性愛者も障害者も、すべての様々な人々が暮らしやすくなるような市民主体の社会ではなく、逆に僕たちを規則・警告・法律で強く縛る、窮屈で疑り深い社会になっているように感じられて仕方がないのだ。

谷中を後にしてJRに乗った。すると、「犯罪を見逃さない!」と書かれた歌舞伎調の目のステッカーが至るところに貼られている。少女マンガ風のタッチで描かれたキャラクターが、「痴漢だ!」「犯罪だ」「許せない」と叫んでいる痴漢防止のポスターも、よく目にする。

 

 

街を歩く人々がお互いに猜疑心を抱いたり、そのせいで他人をことさらに警戒して関わろうとしない空気は、なんだか素晴らしい東京にあって居心地がとても悪い。

全く罪のない女性がいきなり痴漢にあってしまう理不尽さと同じく、全く身に覚えのないのに疑いをかけられ、社会的な信用を失ってしまう理不尽なことも絶対あってはならない。なのに、このようなポスターが作り出す異様な雰囲気が気付かないうちに当たり前になって、誰もおかしいと言わない。結果的に、拘束されかかって逃げた方が亡くなってしまう痛ましい事故も起きてしまった。

 
「テロ」という言葉が本来の意味を越えて暴走していることにも、大分前からおかしいのでは?と感じている。街中でも「テロ警戒中」の立て看板や表示がいたるところにあるけれど、本来テロとは

 

「テロリズム【terrorism】」

・政治目的のために、暴力あるいはその脅威に訴える傾向。また、その行為。暴力主義。テロ。(広辞苑 第五版)

・政治的目的を達成するために、暗殺・暴行・粛清・破壊活動など直接的な暴力やその脅威に訴える主義。テロ。(デジタル大辞泉)

・一定の政治目的を実現するために暗殺・暴行などの手段を行使することを認める主義。また、それに基づく暴力の行使。テロ。(大辞林 第三版)

どれを見ても、『政治目的のために』とのワードがある。だから例えば、僕がバンドが売れないからといってムシャクシャして駅前で人を刺しまくったり、自分より人気のあるバンドのライブ会場で爆弾を爆発させ多くの人が亡くなる事件を起こしても、それはテロじゃない。勿論絶対やらないけど。

一方、僕が「どうして給料から所得税や地方税がこんなに引かれなきゃいけないんだ!これだと生活がやっていけない、法律を変えろ!!」と政治的な主張を叫び、守衛さんも誰もいない状態の議員会館を爆破したり、コンピューターウィルスをまき散らしたりすると、誰も死人は出ていないけどこれはれっきとしたテロとなる。

 
しかし、今の報道や世間の認識では、「無差別大量殺人=テロ」と、勝手な等式が成り立ってしまっている。まだ犯行理由や動機が何もわかっていないのに、とりあえず沢山人が死んだら「テロ発生」と断定してしまう。こうして、事件がどうして起きたか本質を見つめないまま「あいつらが攻撃してきたらどうしよう」「やられる前に危なそうな奴は捕まえろ」式の過剰なセキュリティ意識が高まっていって、法律が変わったり、本来僕らが持っている他者への優しさや想像力が影をひそめてしまう。

 
音楽は文字通り楽しい。演者としてライブをやっているときも、友人とドライブしながら懐かしい90年代J-POPを聴いているときも、家で一人でMTRに向かって格闘しているときも、音楽にかかわっているとき全て。ただ、100%心の底から平和に音楽が楽しめるような世界になるまでは、ビッグブラザーに盾突くことを述べていかないと、ダメだ。

 
おっと、あんまり具体的なことを書くと某法律で捕まってしまうから、今回はこの辺で。

 
 


♪今月の一曲『John Lennon / 真実が欲しい』

 
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次回は、「茗荷谷・丼太郎の納豆丼」をお送りします。

 

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お知らせ

コラム『食漂譚~バンドマン東京グルメ紀行~』は、毎月15日をめどに更新する予定です。

 



 
淋梅毒(りん・ばいどく)

1986年富山県生まれ。Super ganbari goal keepersのドラマーとして活動中。
本年より自身のバンド「蜃気楼」を本格始動させるための準備に取り掛かっている。
学生時代はドキュメンタリー監督・森達也の元で4年間メディア・リテラシーを学ぶ。

蜃気楼 公式サイト
https://twitter.com/officeRBD

 


SGGK

 
Super Ganbari Goal Keepers(スーパーガンバリゴールキーパーズ)

2011年に結成。略称SGGKとして都内で活動中。
アルバム「Cang Gang Pops(宦官ポップス)」が流通盤として、各レコード店で販売中。草食系にすら食われてしまう、植物系ロックバンドとして、音楽雑誌「SGGKマガジン」を作ったり、SODクリエイトの人気AV「しゃぶりながらシリーズ」に楽曲が採用されたりと、独自の活動を続けている。

現在OTOTOYで両A面シングル「レコードコレクターズ / 世界は俺を中心に終わっている」の配信と、特設サイト「SGGKメンバーが影響を受けた50枚」を公開している。

SGGK 公式サイト
https://twitter.com/sggk_ganbari

 



SGGK代表曲「植物人間系男子」PV





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