2017-04-16 21:00

第十六食『秋津・春駒のピーマン焼き』| 食漂譚~バンドマン東京グルメ紀行~

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第十六食『秋津・春駒のピーマン焼き』

 

text & photo by 淋梅毒(Super Ganbari Goal Keepers)

 

池袋から電車で約30分の東村山市・秋津では、面白い光景が見られる。西武池袋線・秋津駅とJR武蔵野線・新秋津駅の二つの駅は乗換駅として多くの人が利用するが、駅同士が徒歩約5分(400m)も離れているため、双方をつなぐ商店街をサラリーマンや学生たちが集団疎開のように歩いて大移動をしている様子が見られるのだ。初めてこの町に来た人は驚くかもしれない。

 


西武池袋線 秋津駅。

 

JR武蔵野線 新秋津駅。

 

新秋津駅前。

 

この強制的に歩かされる商店街は通称「秋津焼き鳥ロード」と言われており、焼き鳥居酒屋が大変多い。このエリアで最も有名なジャンボ焼き鳥が目玉の「野島」は、この日も店内は通勤ラッシュさながらの満員電車のように、立ち飲みサラリーマンで窮屈そうだった。それを横目で見ながら、西武池袋線の方の秋津駅寄りの居酒屋「春駒」へ行く。

この店に初めて入ったのは、隣町の埼玉県所沢市に以前住んでいた時だ。

 

 

イベント等が行われているわけでなく、単なる乗換客だ。

 

 

この日は土曜日ということもあり、ほぼ満席だった。まずは一通り焼き鳥を注文。春駒の焼き鳥は一串100~120円ながら、具も大きく、まずはコスパが良いと感じるだろう。ただし、特筆すべきは焼き加減だ。僕は、焼き鳥(串焼き)で最も大事なのは、肉の素材でも、具の大きさでも、タレのうまさでもなく、焼き加減だと思っている。そこそこの素材でも焼き加減一つで、美味しさがまるで変わってくる。固くパサパサになり過ぎず、かといって生っぽくもなく、表面は香ばしく、ジューシーで適度な柔らかさがあり、焦げの苦みもほとんどない、なおかつビールが進む絶妙な軽さなのが理想で、この春駒の焼き鳥がまさにそうなのだ。

 

 

以前上野にある、ミシュランのビブグルマンにも掲載された焼き鳥店に友人のセッティングで行ったことがあり、鶏は一級品で脂の旨みも肉のコクも確かに素晴らしく、食べ応えがあったが、やはり自分には大衆的で、ある程度の軽さのある焼き鳥のほうにしみじみ感動するんだなと今回改めて実感した。(ちなみにその店は会計のとき結構な値段で、家に帰って調べて後からミシュラン獲得店だと知った)

 


野菜はどれも甘みやホクホク感が引き出されている。

 

春駒で驚いたのが、野菜の串だ。特にピーマンが本当に唸る美味さだった。緑色の鮮やかさとツヤが際立ち、ピーマンが本来持つ甘みと瑞々しさを引き出した焼き加減も大変絶妙で、ほんのり生姜の風味もするカツオ節が混ざったしょうゆダレでいただく。これを食べるだけでも秋津まで小旅行に行ってもいいのではないかとさえ思った。

 

 

帰り際、昭和にタイムスリップしたかのような店内では、有線で谷村新司の「昴」が流れていた。

 
~されど我が胸は熱く 夢を追い続けるなり~

 
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次回は、「高田馬場・雀荘のカレーライス」をお送りします。

 

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お知らせ

コラム『食漂譚~バンドマン東京グルメ紀行~』は、毎月15日をめどに更新する予定です。

 

umezawa

淋梅毒(りん・ばいどく)
1986年富山県生まれ。Super ganbari goal keepersのドラマーとして活動中。
本年より自身のバンド「蜃気楼」を本格始動させるための準備に取り掛かっている。
学生時代はドキュメンタリー監督・森達也の元で4年間メディア・リテラシーを学ぶ。
https://twitter.com/officeRBD

 

SGGK

 
Super Ganbari Goal Keepers(スーパーガンバリゴールキーパーズ)
2011年に結成。略称SGGKとして都内で活動中。
アルバム「Cang Gang Pops(宦官ポップス)」が流通盤として、各レコード店で販売中。草食系にすら食われてしまう、植物系ロックバンドとして、音楽雑誌「SGGKマガジン」を作ったり、SODクリエイトの人気AV「しゃぶりながらシリーズ」に楽曲が採用されたりと、独自の活動を続けている。

現在OTOTOYで両A面シングル「レコードコレクターズ / 世界は俺を中心に終わっている」の配信と、特設サイト「SGGKメンバーが影響を受けた50枚」を公開している。

 
SGGK 公式サイト:
http://sggkeep.flavors.me/

twitter:
https://twitter.com/sggk_ganbari



SGGK代表曲「植物人間系男子」PV





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