2016-03-01 19:30

第十一食『芝浦・焼肉はるみのセンマイ刺し』| 食漂譚~バンドマン東京グルメ紀行~

kuihyoutan011


第十一食『芝浦・焼肉はるみのセンマイ刺し』

 

text & photo by 淋梅毒(Super Ganbari Goal Keepers)

 

この連載には元ネタというか、ルーツが三つある。まず一つ目は、第一食「巣鴨新田・麺たつの正油ラーメン」でも書いたように、マンガの『孤独のグルメ』。二つ目は、僕の大学時代の担当教授であるドキュメンタリー作家森達也の『東京番外地』というエッセイ。そして三つ目は、作品ではなく人だ。

 
大学時代の先輩にタナカさんという人がいる。タナカさんは明大の色んなサークルに顔を出しており、学内ではよく知られた存在だった。彼は複数のサークルのメーリスで「週末、こういう企画をやるので来ませんか?」と、一風変わったアイデアのイベントの誘いを頻繁に流していた。ざっと列挙すると、

 
・オールナイトで山の手線を徒歩で一周する
・上野~山谷~吉原を歩き、ドヤ街の激安宿に泊まる
・ゴムボートで神田川を東京湾まで下る
・廃業の決まったデニーズを貸し切ったパーティ
・下北沢駅前での青空飲み会
・自分の思い付く最高にダサい格好をしてオシャレスポット(代官山や銀座)を練り歩く、Tokyo Street Collection
・恋愛テクニックの本を持ち寄り読み合う、「モテ本研究会」

 
など、書ききれないものがまだまだある。タナカさんの催す週末イベントは、彼が大学を卒業してからも活発に続いており、盛況なものはシリーズ化もされる。

 

写真1
↑タナカさん。

 

そんな沢山のイベントの中で、僕が参加したのはこれだ。このmixiページを見て欲しい。
http://mixi.jp/view_event.pl?comm_id=1189494&id=59926935

 
東京都中央卸売市場食肉市場(は見学できないので附設のお肉の情報館)に寄った後、そこで捌かれた新鮮な肉が卸されている、芝浦のバラック小屋群のホルモン店で夕飯を食べるという会だ。

 
ちょうど前述の森達也のゼミで、「タブー視されがちなものについて調べてみよう」というテーマで数週に渡ってディスカッションをしていた。例えば、中絶、大麻、絶食健康法、原発など。その中で、屠殺というワードも出た。若者は肉が好きだけど、自分で動物をしめたこともなければ、解体される場面を見たこともないよねと。その一環で、森達也が授業中に「にくのひと」という当時大学生だった満若勇咲監督作のドキュメンタリーを流した。

 
屠場の様子を静謐に、じっくりみつめた作品だ。時節、そこで働く人々のインタビューから、職業差別や部落差別の話題が出る。

 
今回のタナカさんの企画は、僕にとって相当タイムリーだった。

 
若干話が逸れるが、屠殺場を扱ったドキュメンタリー映画だと「ある精肉店のはなし」(2013年・纐纈あや監督)も素晴らしい作品だ。静謐なトーンの「にくのひと」に比べ、こちらは強烈に「生」を意識させる作品だ。子牛のときから丹念に育てた牛の頭部を、思いっきりハンマーで叩き気絶させ、素早く首にナイフを入れ、血抜きをするシーン。どの部位もムダにしないよう、牛の皮をなめして和太鼓の皮にしてゆくシーン。こんなに美しい赤色があるのかというくらい、捌かれてすぐの枝肉の鮮やかな色。もう一つ、驚くべきシーンがあるのだが、全ては書かない。DVDにはなっていないので、劇場に足を運んで欲しい。

 
お肉の情報館の展示を見てプチ学習をしたあとは、「やまや」という戦後からあるような佇まいのバラック小屋のホルモン店に行った。やまやについては、このサイトが詳しい(結構参考にしている)。
http://tokyodeep.info/shibaura-takahamabashi-2010/

 

写真2
↑2011年2月、やまや

 

今回再びタナカさんと共に「やまや」を訪問しようとすると、橋の架替事業の余波を受けてバラック小屋の呑み屋群は全て閉店していた。

 

写真3

写真4

 

しかし、タナカさん情報によるとバラック呑み屋の一つ「焼肉はるみ」が田町駅近くに場所を移し営業しているらしい。かつて隣にあった「やまや」と同じく戦後の面影を残す老舗ホルモン店でもあり、メニューは似通っている。少しでも面影を味わいたいと思い、タナカさんと新・焼肉はるみに向かった。

 

写真5

 

新テナントに居を移した焼肉はるみは、芝浦ホルモンという3階建て居酒屋の2階スペースを半分借りて営業している。バラックにあった時代からの常連さん用に、お店の名前と昔からのメニューを残しているそうだ。

 

写真6

kuihyoutan011

 

注文したもの全てがそれぞれ大変新鮮で弾ける活きの良さだった。まずレバー。
座布団の様な厚さで、見た目もつやつやしている。レバー特有の嫌味がない。軽く炙るのと普通に焼くのとで味が全然変わり、それも含めて楽しめる。

煮込みはモツ、豆腐、ネギだけといったシンプルな具材で、澄んだ生姜スープ。ドロドロのこってり煮込みと全く違う新世界だ。どうやったらこんな味が出せるんだ。

そして、灰色でザラザラした食感が特徴のセンマイ刺し。コチュジャンだれに付けて食べる。閉店した「やまや」の写真と比べてみてほしい。瓜二つだ。サカナにおける「新鮮」は僕の故郷富山に来れば存分に味わえるけど、肉における「新鮮」は芝浦に来れば味わえる。

 
瓶ビールがクラシックラガーというのも良かった。(「生」ビールじゃない)

 

写真8

写真9

 

かつて訪れた地にはバリケードが張られ、再開発の波に追いやられ過去が人知れず消えていくのかと思いきや、場所は変えども、品は変えずに昭和の味が残っているのだということを実感でき、安堵した夜だった。

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次回は「上池袋・京たこのたこ焼き」をお送りします。

 

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コラム『食漂譚~バンドマン東京グルメ紀行~』は、毎月1日と15日をめどに更新する予定です。

 

umezawa

淋梅毒(りん・ばいどく)
1986年富山県生まれ。Super Ganbari Goal Keepersのドラマーとして活動中。
学生時代はドキュメンタリー監督・森達也の元で4年間メディア・リテラシーを学ぶ。
https://twitter.com/officeRBD

 

SGGK

 
Super Ganbari Goal Keepers(スーパーガンバリゴールキーパーズ)
2011年に結成。略称SGGKとして都内で活動中。
アルバム「Cang Gang Pops(宦官ポップス)」が流通盤として、各レコード店で販売中。草食系にすら食われてしまう、植物系ロックバンドとして、音楽雑誌「SGGKマガジン」を作ったり、SODクリエイトの人気AV「しゃぶりながらシリーズ」に楽曲が採用されたりと、独自の活動を続けている。

現在OTOTOYで両A面シングル「レコードコレクターズ / 世界は俺を中心に終わっている」の配信と、特設サイト「SGGKメンバーが影響を受けた50枚」を公開している。

 
SGGK 公式サイト:
http://sggkeep.flavors.me/

twitter:
https://twitter.com/sggk_ganbari



SGGK代表曲「植物人間系男子」PV





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