2016-01-18 19:30

第九食『金町・レコーディング中の出前中華』| 食漂譚~バンドマン東京グルメ紀行~

kuihyoutan009

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第九食『金町・レコーディング中の出前中華』

 

text & photo by 淋梅毒(Super Ganbari Goal Keepers)

 

東京都葛飾区金町。失礼ながら、この地名を今年まで聞いたことがなかったのだが、とある縁で金町に行くことがあった。

 

元々秋葉原以東の東京へはほとんど行くことがなかった。ライブハウスも大学もなく、住宅エリアというか、下町のイメージが強い。強いて言えば、富山から友人が来た際に浅草に観光に連れて行ったり、「宇ち多゛」をはじめ昼間っからやっている呑み屋街で有名な個人的ベストオブ裏東京・立石にたまに行くぐらいしか、千葉県寄りの東京東エリアには行くことがない。

 

今年に入って、スーパーガンバリゴールキーパーズ以外のバンドでドラムをやらないかという誘いを受けた。常々音楽性の違う他のバンドでドラムの修行をし、SGGKの音楽にその経験を活かしたいと思っていたので、大変ありがたい誘いだった。若き音楽プロデューサーの卵いぬマシンくんを中心に、不定期で活動中のtempeztというバンドからボーカル前田さん、ベース古田さん、そして前田さんの同僚の介護士・原さんがギターとして加わる5人バンドだ。

 

melancholia
↑melancholia。

 

そのmelancholiaのPVを撮るために、金町駅から歩いて20分、「水元公園」という広大な公園に行った。金町はおよそ東京感が全くない。かといって僕が住む春日部のような郊外感や、同じ葛飾区にある亀有や青戸のような下町感があるわけでもなく、不思議な磁場を持った場所だ。ちなみに水元公園は都立の水郷公園なのだが、極端に面積が広く、石神井公園の4倍強、井の頭公園の2倍以上の広大さを誇り、とても23区内にあるとは思えない「大」自然を味わえるスポットだ。これは今年驚いたことの一つ。

 


↑この映像は水元公園で撮影されたもの。野原や森は紛れもなく都内である。

 
 

もちろん撮影だけでなくちゃんと本業の音楽制作もやっている。都内某所にあるいぬマシンくんの音楽制作基地(兼自宅)でボーカルを録るため、昨年の2月頃からメンバーが通うようになったのだ。いぬマシンくんはその基地に籠もり、日夜ひたすら楽曲を制作している。メイン楽器であるギターは必ず生演奏で録音することにこだわっており、それ以外の楽器は全て打ち込みというスタイルだ。最近は大手ゲームメーカーの音ゲーの収録曲を一曲依頼されたり、藍上というアイドルの楽曲を制作したりと、徐々にその活動が世に認められ始めているので、よければ何曲か聞いてみて欲しい。

 

藍上 ‐ Träumerei

藍上 ‐ Lie

 

みしゃむーそ ‐ サイコーの夢を見て起きて歯を磨こう

 
 

東京の冬は寒い。上京して間もなく10年になるが、未だに慣れない。生まれ育った富山の方が雪も沢山降るし平均気温ははるかに低いのだが、体感的に東京の冬の風の方が骨身に堪える感じがして、どれだけ厚いジャンパーを着てもあまり意味がない。東京は降雪がなく、湿度が低いからだろうか。

 

そんな今年の冬に、新バンドのメンバーたちと金町へ幾度目かのPV撮影に来た帰り、たまたま都合が良かったのでついでに道中にあるスタジオでレコーディングをした。僕はスタジオのロビーに置かれていた、昔ながらの中華食堂の「出前 承ります」とのメニュー表が気になっていた。

 
録音本番。マイクスタンドを立て、ヘッドホンを付けて前田さんが唄う。ガイドメロディと寸分違わず歌うことは困難で、良いテイクが録れるまで何度も録り直す。正確に歌いやすいように各楽器の音量のバランスを変えたり、一旦ヘッドホンを外して皆で口ずさんで練習してみたりと、正確に歌入れができるようにいぬマシン君のリーダーシップのもと色々試している。

 

Melancholia – 歩道橋に咲く花

 
 

前田さんのボーカル録りがひと段落し、さあ夕飯だ。となった。適当にどこか食べに行こうかという話になった時、先ほどの中華屋の出前を取ってみたら面白いんじゃないかという話になった。ピザやガストの宅配はともかく、このような昔ながらの出前を取るのは小学生以来かもしれない。先ほどのメニューを見ると、これまた懐かしい。中華料理が基本だが、オムライスもカレーもカツ丼もある、なんでもござれのラインナップ。メニューが多すぎて、ラーメンからネギラーメンになっただけでいきなり300円も増えているような出鱈目感すら趣きがある。「カツ丼」があるのに「カツライス」ってなんだ?

 

とりあえず注文した。僕は定番のチャーハンと餃子。前田さんはみそラーメンに、古田さんはカレーライス、いぬマシンくんは五目麺。・・・電話をしてものの15分も経たないうちに、もう中華屋のおじさんが現れた。出前の到着を待ち焦がれるひと時を味わう間もないクイックさだった。「我々がメニューを店先から持って行ったときにはもう目星をつけられていたのか?」と、想像でその店を勝手にあれやこれやとネタにした。

銀色の岡持ちに入った、4人分の夕飯。それぞれにラップがかけられている。内側についた水滴がこれまた懐かしい。

 

・・・ただし、味は本当に普通だった。懐かしさや高揚感が沈静化するような、ザ・普通の味。作りたてではないので、ラーメンの麺のちょっとだけ伸びた感じ、餃子の皮がちょっとだけふやけた感じ、それも含めて普通。タバコ臭いロビーのガラステーブルに狭々と置かれた出前料理を男たちが身を寄せ合って食べる様子は、なんだか引越しの合間のせわしい休憩時間のようだった。

 

写真2

 

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2015年、残念ながらSGGKは全く前進しなかった。流通版のCDを出したにも関わらず、企画イベントはほとんど大赤字。動員や話題性の面でも散々な結果だった。さらに、メンバーの予定が中々合わず、誘われたライブを断らざるを得なかったり、練習が出来なかったりと、サラリーマンモードの間も悔しさと歯がゆさが滾々と絶えず湧き出て、平日日中の仕事中ずっとバンドのことばかり考えている相当ダウナーな一年間だった。
(だからこそ、我々のライブにわざわざ来てくれる数少ないファンの方には、心からお礼を言いたい)。

 
安月給で貯金もなく、結婚相手もおらず、肝心のバンドも成功へは程遠い。

 

しかし、今年は大学を卒業して以来、友人と呼べる人々が続々と増えた年だったのが、せめてもの救いだった。対バンで顔見知りになることはあるけれど、プライベートでまで顔を合わせる人は今までいなかったのだが、今年はバンドマン達とBBQをしたり、ささやかな誕生会を開いてくれたり、日帰り温泉ドライブに行ったり、麻雀集まりをしたりと、交友関係が広がった。楽しい時間が過ごせて、大変ありがたいと思っている。

 
ただ、自分はバンドマンだ。本業の音楽でも楽しい思いをしたい。来年こそは何としてもSGGKを成功させねば。

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次回は、「大塚・実弟と行った北大塚ラーメン」をお送りします。

 

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お知らせ

コラム『食漂譚~バンドマン東京グルメ紀行~』は、毎月1日と15日をめどに更新する予定です。

 

umezawa

淋梅毒(りん・ばいどく)
1986年富山県生まれ。Super Ganbari Goal Keepersのドラマーとして活動中。
学生時代はドキュメンタリー監督・森達也の元で4年間メディア・リテラシーを学ぶ。
https://twitter.com/officeRBD

 

SGGK

 
Super Ganbari Goal Keepers(スーパーガンバリゴールキーパーズ)
2011年に結成。略称SGGKとして都内で活動中。
アルバム「Cang Gang Pops(宦官ポップス)」が流通盤として、各レコード店で販売中。草食系にすら食われてしまう、植物系ロックバンドとして、音楽雑誌「SGGKマガジン」を作ったり、SODクリエイトの人気AV「しゃぶりながらシリーズ」に楽曲が採用されたりと、独自の活動を続けている。

現在OTOTOYで両A面シングル「レコードコレクターズ / 世界は俺を中心に終わっている」の配信と、特設サイト「SGGKメンバーが影響を受けた50枚」を公開している。

 
SGGK 公式サイト:
http://sggkeep.flavors.me/

twitter:
https://twitter.com/sggk_ganbari



SGGK代表曲「植物人間系男子」PV

 

SGGK ライブスケジュール

 
LADY FLASH企画『シムシティvol.2』

日程:2016年2月6日(土)
会場:渋谷ルビールーム
料金:未定

出演:
花泥棒
alicetales
NAISHO
Super Ganbari Goal Keepers
LADY FLASH





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