2017-03-12 12:00

切なくも穏やかな約3年ぶりのフルアルバム『CELEBRATION』をリリースするよしむらひらくにインタビュー


よしむらひらくが、約3年ぶりの全国流通フルアルバム『CELEBRATION』を2017年3月15日(水)にリリースします。厳しく突き放しつつも見守るような、そんな新しい視点を感じるアルバムになったと思います。この変化はどこから来きたのか、そしてこれからについて聞かせていただきたくインタビューさせてもらいました。2016年春にスタートした新プロジェクト「東京幽谷混声合唱団」についてもお聞きしました。

 

art work by Mayu Murota
photo by Shiho Aketagawa
interview & edit by Fuhito Kitahara

 
 
 

| 元々はそういう子だったんじゃないのかな俺は

 

   まずは自己紹介をお願いします。

 

よしむらひらく(以下、よしむら) シンガーソングライターのよしむらひらくです。弾き語りと、バンド編成でもライブをしています。レーベル「スタジオローサ」の運営も行なっています。

 

   今回、3年ぶりに全国流通のフルアルバム『CELEBRATION』をリリースされることになりましたが。

 

よしむら 2014年2月にリリースした『67年のラブソング』以来、全国流通盤は出してなくて。3年の間にも自主制作盤やコラボ盤のリリースはしていたんですけど、いつの間にか空いてしまってという状況ですよね。

 

   今回のアルバムはソロ名義ですが、バンド編成の曲も収録されていますね。

 

よしむら バンドサウンドの曲も大体の楽器は俺が演奏しているんですが、ドラムと鍵盤はほぼ全曲メンバーに頼みました。今回はドラマーが3人、鍵盤が4人参加していて、バンドでみんなで録っているというよりは、「この曲のこの場所に」という感じでいろいろな人に参加してもらっています。

 

   今作には突き放しながらも見守ってくれるような「父性」を感じました。たぶんそれも関係してくると思うのですが、アルバムタイトルを『CELEBRATION』にした理由を教えてください。

 

よしむら 今までは自分のこと、もしくは自分ともうひとりのことくらいの、すごく小さなことを歌ってたと思うんです。今回は友達が結婚した時に作った歌とか、友達に子供が生まれて1歳の誕生日に贈った歌とか、そういう曲が並んでいて、全曲揃った時に「(アルバムの)タイトルどうしようか?」って最後まで決まらなかったんですけど、「CELEBRATION」って思いついた時に、本当にこれしかないなって。

 

   コンセプトありきで作ったわけではないということですか。

 

よしむら 自然とそういうモードになったとしか言いようがないかなと思います。

 
 

 
 

   お友達が結婚された時に作った曲や、お友達のお子さんが1歳を迎えた時に作られた曲があるとのことですが。

 

よしむら 結婚式の時に作ったのは、8曲目の「マリッジソング」という曲です。これが今作収録曲では一番古い曲ですね。2年前くらいに作った曲です。友人の子供に贈ったのは、4曲目の「はづきたち」という曲です。いってしまえば、はづきちゃんという子供に贈った曲です。

 

   「はづき”たち”」ということは、その子に向けてもちろん歌っているんだろうけど、その子だけじゃなくて同世代の子供や、これから生まれてくる子供達にも向けているのかなと思いました。

 

よしむら そうですね。まさにそういう曲です。作っているうちにそういう気持ちになっちゃったんですよね。いつのまにかその子だけじゃなくて、「子供達に」というイメージになってましたね。

 

   だから「見守っている」感じがするんでしょうね。それで僕は「父性」を感じたのかもしれません。

 

よしむら 今までそういう曲がなかったのに、今回ここまでそういう曲が揃ったというのは、自然とそういう時期だったのかなと思います。

 

   心境や生活に変化があったということは?

 

よしむら 歳はとったとは思いますけどね。なにせ20代で3年間といったら結構大きな変化があると思うので。ただ3年経ったというただそれだけのことなのかもしれないですし、地震のこと(2011年の東日本大震災)がすごく大きくて、前作『67年のラブソング』は地震の直後に作り始めたので、それとの対比というか、自然と明るい作品になったのかなとも思います。それまでずっと喪に服していたような気分があったのですが、去年か一昨年くらいに、そこから解放されてもいいのかなっていう気分にようやくなったということはありましたね。そこから今回のモードにつながっていったのかなと思いますね。本当にシンプルにおめでたいことが、友達が結婚するとか、子供が生まれたとかそういうことが続いて、その影響ということなのかもしれませんね。

 

   確かに地震は大きくて、前作のリリースの頃だと「おめでとう」ともなかなか言いづらいタイミングだったかもしれませんね。

 

よしむら そうですね。思いついていたとしても、言っていいのか悪いのか難しい時期でしたからね。今もじゃあ何が終わったのかというと、わからないですけど、おめでたいことがあった時に、暗いことをうじうじ言ってるのも逆にすごく良くないなあという気持ちになりましたね。周りのことに無理やり引っ張り上げてもらったということなのかもしれませんね。自分がずっとうじうじしていたのを引っ張りあげてもらう、そういう過程がアルバムになったという感じもありますね。

この前、今回ドラム1曲とパーカッションを叩いてくれた高橋恭平と話していて思ったんですけど、高校生くらいの時に作っていた曲の視野の明るさと、むしろ今が近いのかなと。奴とは高校の同級生なんですけど、「元々はそういう子だったんじゃないのかな俺は」って思いました。20代はひたすら暗かったから、「俺、こういう奴だったんだ」っていうのが最近多いですね。

 

   それがサウンドにも出ているんじゃないかと思いました。明るい曲が多いですし、リラックスした曲が多い。今までだったら弾き語りの曲でも攻撃的というか。

 

よしむら ちょっとは朗らかになったんじゃないかと思いますね。

 
 

 
 
 

| ひとりひとりの演奏している感じというのがよく出ていると思います

 

   収録メンバーを紹介していただけますか?

 

よしむら ドラムは、先ほどいった高橋恭平が一曲。金川卓矢には「スイートチョコレートラバーズハイ」「Shinobaz light step」を叩いてもらっています。結構長い付き合いで、minamitetsuというバンドを一緒にやってたりもして、今はTHE SLUT BANKSのメンバーですね。

岸田さん(岸田佳也)は、今回のアルバムでも特に柔らかめの曲で叩いてもらっていますね。さっきの「はづきたち」とか。

キーボードは4人にお願いして、1人は長い付き合いなんですけどオワリカラのカメダタク。で、今よしむらバンドでレギュラーで弾いてくれる「ricca」のリツコさん。今は活動休止しているんですけどテリーヌとボンボンというユニットをやっているふくいかな子さん。最後の曲は、新宿MOTIONのPAをやっている大森なつ美さんがピアノを弾いてくれています。彼女は合唱団にもちょこちょこ顔を出してくれていて、今回のピアノをお願いしました。

 

   チェロも入ってますよね。

 

よしむら チェロも合唱団に参加していただいている杉山咲耶子さんという方です。「チェロ弾けるんですか?弾けるんなら弾いてくださいよ」みたいなノリで俺から強引に誘いました。

ベースは熊谷(熊谷東吾)が一曲。よしむらバンドは一番長くて、高校卒業した春から一緒にバンドをやってるので12年くらいの付き合いです。「はづきたち」に参加してもらっています。また、ギターは吉田ヨウヘイgroupの西田(西田修大)が二曲弾いてくれています。

 

   今までの音楽活動の中で出会って来た方と作り上げたアルバムなんですね。

 

よしむら そうですね。ビッグネームとか、この人とやったら話題になるだろうっていう気持ちで誘った方はひとりもいなくて、今まで付き合いの長い人とか、仲が良い人とか。身近なメンバーとやれたのはすごくよかったです。 

 

   マスタリングは吉田ヨウヘイさんが担当されていますね。

 

よしむら 吉田さんとはずっと付き合いがあって、最近吉田さんがマスタリング機材を買ったと知ってお願いすることにしました。

 

   マスタリングをするとガラッとイメージが変わるじゃないですか、今回のマスタリングで良かったことはありますか?

 

よしむら これまでのマスタリングは1〜2時間でその日のうちに決めちゃうっていうことをずっとやってたんですけど、今回は吉田さんと何度もデーターのやり取りをして、「マスタリングでそういう感じになるなら、こっちのミックスを直すよ」みたいな感じでじっくり作っていけたのがすごく良かったですね。

 

   録音とミックスは全部よしむらさんがされたんですか?

 

よしむら それこそ音楽を始めた頃からずっとなので。今回すごく言いたいのは、今までよりも録音もミックスも上手くできたので、その辺もぜひ聴いていただきたいなと思います。

 

   ニューアルバムを聴かせていただいて、楽器が自然な音というか、穏やかな音だなと思いました。

 

よしむら 今までより一番気をつけたのは、あんまり潰したり、本来の音より格好良いって感じにならないように、綺麗にエディットしたり、バキッと編集したりっていうことをできるだけやらないようにって心がけましたね。ひとりひとりの演奏している感じというのがよく出ていると思います。

 

   1曲目「March on the farewell」のAメロの歌詞の載せ方がすごく面白いと感じました。

 

よしむら 今までにあまりやっていなかった感じというか、ずっとやりたいイメージがあった曲で、去年(2016年)の3月に原型ができた曲ですね。ギミックを明かしちゃうと、オケを作って、それに対して歌を乗せるリズムがちょっと特殊なのかなと。フリーな感じで乗ってるというか、ラップをめちゃくちゃ遅く言ってるみたいなイメージで作りました。

 
 

 
 
 

| 合唱団についても伺いました

 

   去年(2016年)の春くらいから合唱団も始められたとお聞きしました。この「東京幽谷混声合唱団」ですが、確か最初はtwitterで募集されてたんですよね?

 

よしむら そうですね。twitterブログで募集しました。ぶっちゃけ、「よしむらファン」しか来ないだろうって思ってたんですけど、案外そうでもなくて。合唱をやってた人とか、何かやりたいみたいな感じで来てくれた人がいて、今すごく良いバランスでやれてます。よしむらバンドよりもはるかに練習してるんですよ。去年はよしむらバンドの5倍くらい練習して、俺も合唱をやるのは初めてだし、みんなで足並みを揃えてやってるからすごいゆっくりなんですけど、すごく空気が良いですね。

 

   何人くらいでやられているんですか?

 

よしむら 毎回の練習に10人くらいですかね。メンバーはもっと多いんですけど、用事があったりとかで、だいたい集まるのがいつも10人くらいですね。

 

   メンバーはみなさんミュージシャンの方なんですか?

 

よしむら 音楽をやってない人の方が多いですね。音楽はやってないですけど、みんな仕事とか何かをやっているわけじゃないですか。そういう人と普通に会話をする機会とかあまりないから、俺から見たらそっちの方が尊い。合唱団のみんなは本当に別の世界にいる人たちだから、すごく俺自身が楽しめています。そういうのが合唱に全部活かせるかといったら難しいですけど、全く音楽に関係ないスキルとか経験とか、思想とかを持っている人たちが集まっているので、音楽しかやっていない人の集まりよりもすごくこう、豊かだなと思っていて、本当に可能性を感じていますね。

 

   前に一度ライブされてましたよね?

 

よしむら ライブって言っても本当に初期の頃で、俺のライブに急遽バックコーラスで参加してもらったという感じです。それ以降は、外に向けては発表してないですね。その時にやった曲を去年(2016年)、OTOTOYから配信リリースはしていますけど、合唱団としてメインの音源というわけではないので。

 

   今後、合唱団でライブやリリースのご予定はありますか?

 

よしむら 今、まさにオリジナル曲を作っていて、昨日2番の歌詞ができて、今日最後まで曲を通せたかなってくらいですね。みんなと相談しながら曲を作ってい本当にゆっくりやっているので、いつか何か出せるかな〜くらいな感じですかね。今年は外向きの活動ができるように頑張ります。

 

   楽しみにしてます!ちなみに、新メンバーの募集はされていますか?

 

よしむら はい、募集要項は公式サイトの東京幽谷混声合唱団のページにありますので。見学はいつでも歓迎です!

 
 

 
 
 

| 自分に甘くなったところはありますね。

 

   今後の抱負を聞かせてください。

 

よしむら 本当に今までになく広げたいなってすごい最近強く思うようになっていて、前はライブで歌ってても、お客さんの1人と俺っていう「1対1」が複数あるっていう感覚でやってたけど、もうちょっと開いていきたいなと。「1対1」を最も大事にしていることは変わらないんですけど、そこに閉じこもっていくような感覚じゃなくて、このアルバムをきっかけに開いていく部分ももっと作れたらいいなと強く思っています。今年、俺は30歳になるので、30代としての次のステップを作っていきたいなと。アルバムを出して終わりじゃないし、次のこととかも色々考えているので、広げていきたいですね。

 

   なるほど。『CELEBRATION』というのはよしむらひらくが新モードに入ったというお祝い(セレブレーション)なのかなと聞いていて思いました。

 

よしむら もしかしたら、それくらい自分のことしか考えてないのかもしれないですね。例えば葬式に行ったとして、そこで死者を悼むのだけど、そのとき追悼の気持ちは亡くなってしまった人には伝わっていないと俺は思っていて。追悼の気持ちを持つとか、死者を悼む気持ちって、自分の為にあるって思っていて、それと繋がる話なのかなと。

今回のアルバムの「お祝いする」「人のために歌う」っていうことが、今までやってきたことと全く別のことじゃないなと思っていて、人のことをお祝いする時の自分の気持ちの温かさみたいな。フィードバックがあって返ってくるものに自分がすごく助けれられているので、それはまさに今言ってもらったように、その人のことをお祝いしている”だけ”のアルバムじゃないのかもしれませんね。自分に向けてハッパかけてるというか。

 

   自分自身に対してのモードも変わったのかなと。

 

よしむら 自分に甘くなったところはありますね。「いいじゃん、いいじゃん」っていうところが出てきた気がしますね。

 

   それが人に対する優しさにもつながっているのかなと感じました。

 

よしむら ありえますね。自分に対して厳しい思いを持っていると…もしかしたらそういうことなのかもしれませんね。

 

   よく考えたら、名前が「ひらく」ですもんね。

 

よしむら そうなんですよね。そこが厄介なところで、30年かかってようやく名が体をなした。

 

   ありがとうございました。最後に読者へのメッセージを!

 

よしむら この記事が掲載される時期はまだアルバムは出てないと思うんですけど、発売されたらぜひ買ってください。これは発売当日にお知らせしようと思っていたんですが、CDを手に取ってくれた人だけに見てもらえるように、ジャケットの中に詩としての作品を1編入れているので、それもぜひ読んでほしいなと思います。

 
 

 
 
 

よしむらひらく 2ndフルアルバム『CELEBRATION』

 

 
よしむらひらく『CELEBRATION』

発売:2017年3月15日(水)
価格:2,000円(税抜)
レーベル:スタジオローサ
販売:株式会社ブリッジ
品番:SRR-020
JAN:4582237836837
仕様:CD

Amazonで見る

1. March on the farewell
2. 四月の海
3. 水色の
4. はづきたち
5. 淋しいともだち
6. スイートチョコレートラバーズハイ
7. Shinobaz light step
8. マリッジソング
9. うまれてくる人たちへ

 


よしむらひらく『CELEBRATION』全曲試聴トレイラー

 

“はづきたち” よしむらひらく MV

 

よしむらひらく 『CELEBRATION』 release tour

 
東京
よしむらひらく×吉田ヨウヘイgroup ツーマン

日程:2017年5月3日(水・祝)
会場:渋谷TSUTAYA O-nest
時間:open18:30 / start19:00
料金:前売2,500円 / 当日2,800円(共に+1ドリンク)
出演:よしむらひらく(スペシャルバンド編成) / 吉田ヨウヘイgroup

[チケット]
3月1日チケット発売
チケットぴあ(P:326-328) / ローソンチケット(Lコード:77486) / e+ / nest店頭
※学割有(当日学生証提示で¥1000キャッシュバック)

 
大阪
日程:2017年5月19日(金)
会場:梅田ハードレイン
出演:よしむらひらく(バンド編成) / 吉田ヨウヘイ4 / and more

 
京都
日程:2017年5月20日(土)
会場:京都二条nano
出演:よしむらひらく(バンド編成) / 吉田ヨウヘイ4 /ベランダ / and more

 
名古屋
日程:2017年5月21日(日)
会場:金山ブラジルコーヒー
出演:よしむらひらく(バンド編成) / 吉田ヨウヘイ4 / カワムラユウスケ&フレンチソニックス(ac)

 

ほか随時追加更新予定。詳細は『CELEBRATION』特設サイトをご確認ください。

 



 
よしむらひらく

シンガーソングライター。
1987年石川県金沢市生まれ、12歳から東京在住。

2005年、高校生のときに作ったデモテープがくるり・佐藤社長の耳に止まり、Bounce.com内ノイズマッカート ニーレコード連載にて紹介される。
2006年、大学入学と同時にサポートバンド編成でライブ活動を開始。以降バンド編成、弾き語り、ユニット等さまざまな形態でライブ活動を行う。また自主レーベル“スタジオローサ”を主宰、ザ・なつやすみバンド、吉田ヨウヘイgroupらの自主制作盤リリースに携わる。
2011年、メレンゲ、フジファブリックなどを輩出したレーベル“SONG CRUX”よりファーストミニアルバム『はじめ なかおわり』をリリース。その後2012年、2013年に同レーベルからリリースした2枚のEPがスピッツ・草野マサム ネ、GOING UNDER GROUND・松本素生らより絶賛を受ける。
2014年、“スタジオローサ”より1st full album『67年のラブソング』をリリース。自身の活動の傍ら、映像作品への楽曲提供、他アーティストのレコーディング、ミックス等も行う。




この記事の画像


関連記事: